やっかいごと(?)

夕飯に何が出てきたかはあまり覚えていない。

でも、覚えていることがある。それは大川に膝枕をしてもらったということだ。

逆に言えばそれにほぼ全ての印象を持っていかれたのだ。

ただ、それはmegumiという人物からではなく大川からだということ。

僕は基本的に仕事中の大川と私生活の大川は別枠として見ている。というより、僕がそうしてあげたいからそうしている。

僕としては、大川はこの僕の家の空間では自然なままで普通の女の子として過ごせればいいなという思いでいる。

「どうしたのですか?まだ少し考えがまとまりませんか?」

そう言って大川は僕の方を覗いてくる。

「いや、違うんだ……。今少し大川のことについて考えてただけだ。」

そういうと大川は少し目を丸くさせた後でなるほど、とだけ言って少し笑うとまたキッチンの方へと戻っていった。

「あ、心配しないでください?須井くんが私に対して変な考えとかを持っていないのは知っていますので。」

大川は皿洗いをしながらキッチンからそう笑って言ってくる。


「まぁ、須井くんのことですから、さっきの気持ちいいお昼寝タイムの回想でもしていたのではないですか?あんなこと今までに一度も体験したことなさそうですものね……。」

「ま、まぁ考えていることは当たりだけど……それを知って何かなるのか……?」

そういうと大川は少し考え込む。

「確かに言われてみればそれを知ったからと言って何かなるわけじゃあないんですよね……。須井くんならこういう感じのことを知ったらどうしますか?」

急なこちらへの質問に僕は困惑する。

「いや、それは僕にも分からない……。あー……。でももしかしたら親とかにおもしろ話として話すかもな。」

そういうと大川は少し歪んだ笑顔を見せた後でありがとうございますとだけ言ってスマホに何かを打ち込み始める。

「え、大川?何してるんだ?」

「いや、今須井くんのお母さんにこんなことがありましたって送っただけですよ?」

「いやいやいや!待て待て!そんなの送ったら親がなんていうか……。」

「大丈夫ですよ。最後に『須井くんは私に対して変なことはしてこなかったので安心してください』と書いておきましたから。」

そういう問題ではないのだがと思いながら僕は頭を抱える。

これは今日の夜に、大川に膝枕をしてもらっている間にどんなことがあったのかと鼻息を出しながら聞いてくる母親の電話に対応しなくてはいけなくなりそうだ。

今日はもう携帯の電源は切っておこう。

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