癒し

「今日の須井くんはなんだか元気がないですね……?」

僕の部屋に入ってくるとすぐに大川はそう言って僕の異変に気づく。

「やっぱり分かっちゃうものなのか……?ちょっと僕としても相談したいことがあって……。」

僕はさっきまで見ていた妹の写真のことと、それで少し心が沈んでしまった話をする。

「なるほど、難しい問題ですね。私はそういう経験がないのでどう対応したら良いのか……。」

少し考えた後で大川はあ、とだけ言ってソファーの方へと歩いていく。

そしてぽすんと音を立てて座ると、大川は自分の膝をポンポンと叩いてくる。

「須井くん、どうぞこちらへ。」

そう言って大川はこちらを見てくる。

「え、いや……ちょ、ちょっと待ってくれ心の準備が……。」

この感じは間違いなく膝枕をされる展開だ。それも向こうは乗り気なのがまた僕にとっては驚きでしかない。

「大丈夫ですよ。そんな変なことはしませんから。」

そう言って大川はじっと僕の方を見てくる。

もうこれは一線を超えてしまうのではないかと思いながら僕は大川の膝枕の上に横になる。

すると、大川は僕の頭を優しくポンポンと叩いた後で、撫でてくる。

「私のお手伝いさんは私が辛そうにしているとよくこうしてくれたんです……。それで、いつの間にか嫌な気持ちが吹き飛んでいたんですよ。」

確かに疲れが吹き飛んでいく。

そして僕はそのまま段々と眠気が襲ってくるのを感じる。

「あれ、眠くなってきてしまいましたか?では、30分程ならなても大丈夫ですよ?」

その言葉に甘えるように僕の瞼は段々と落ちていく。


「須井くん〜?起きてください?」

目を開けるとぶつかりそうなほど近くに大川の顔があり、びっくりしてしまった。

「すごく深く眠っていましたよ?それほど心身共に疲れていたんでしょうね。」

そう言って大川は寝ぼけた僕の頭をそっとソファーの上に乗せるとキッチンの方へと何かを言いながら向かっていった。

最初は躊躇してしまった大川による膝枕だったが、確かにさっきまで悩んでいたことが少し楽になっていった気がした。

「須井くん?いつまでぼーっとしているんですか?早く夕飯食べないと明日の朝に響きますよ?」

そう言って大川がテーブルの上にお皿を並べながら僕を呼んでいる。

僕が物思いに耽っていた間に大川はもう夕飯の用意を完全に終えてしまっていたようだ。

「分かった……。すぐに行くよ……。」

僕は眠い目を擦りながらゆっくりと歩き、テーブルの方へと向かった。

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