小屋
『宿が空いてるかは分からないけど久しぶりに裏の小屋を使ってもいいかもしれないね。お父さんと掃除しておきます。』
そんな返事が返ってきたのはメッセージを送った次の日の夜だった。
そういえば昔は物置として使っていた小さい小屋が実家にはあるのだった。小さい頃はよくそこで雫や近所の子供達の遊び場になっていた。
雫がいなくなってからだんだんと小屋は使われなくなっていき、気づけばどんどんとものも消えていき埃を被った小屋になっていた。
いつしかその小屋の存在すらも口にされることがなくなり、家族も僕も昨日の宿泊相談まで忘れていたのだった。
『ものすごい埃です。お父さんと2人で頑張って掃除をしていますが、どこまでできるかはわかりません。』
一緒に送られてきた写真にはゲームの廃墟のステージかというような感じで蜘蛛の巣が張っていたりともう見ていられないほどだった。
「これを片付けるとなると相当な労力だぞ……?大丈夫か?」
そんな独り言を呟くが、向こうには聞こえないので関係ないのが少し悔しい。
「でも、両親がやってくれてるからまぁ大丈夫か……。」
そう呟きながらキッチンへと向かう。今日は大川がいないので自分で作らなくてはならない。
「適当にパスタでも作るか……。」
キッチンの下の棚からパスタを取り出し、ニンニクをみじん切りにする。
今回作る予定なのはペペロンチーノなので難しい材料は全くいらない。
オリーブオイルでしっかりニンニクをきつね色にした後で、鷹の爪と瓶詰めのパセリを入れてそこにパスタの茹で汁を入れる。
あとはもう茹で上がった麺を入れてソースを絡めていくだけだ。
簡単なのにこんなに美味しいパスタを作ったであろう人には頭が上がらない。
お皿に盛り付けて麺を口へ入れる。
しっかりと香りを移した後のニンニクがこれまた美味しいのだ。
本当にどうやったらこんなシンプルなのに美味しいパスタを開発できたのだろうか……。
あっという間に食べ終わってしまい、僕はお皿を洗う。
いくら休みの期間とはいえ、大川が家に来ないのはやはり寂しいものだ。
気を紛らわせるために親からメッセージが返ってきていないかを確認する。
特に何も来ていなかったのでそのまま閉じよとしたその時、メッセージと共に一枚の写真が送られてきた。
『これ、覚えてる?』
僕はその写真を見る。
即座に思い出した。この形はあの時のものに間違いない。
僕はその写真に懐かしさとどこか感動を覚えてしまった。
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