やはりこの日常が

「昨日は作り置きですみませんでした。今日はちゃんとお作りしますので。昨日のご飯は美味しくできてましたか?」

この大川のいる安心感に僕は感動していた。

「あぁ、美味しかったよ。でもやっぱりこうやって大川が作ってくれた出来立てを食べるのが僕にとっては一番美味しい食べ方だ。」

そういうと大川は嬉しそうな顔をする。

「そう言ってもらえて嬉しいです。」

そう言って大川はキッチンの方へと戻り、卵を冷蔵庫から取り出していた。

ごま油で炒め物をしているいい匂いがこちらにも漂ってくる。今日は中華料理かと思いながらいつものようにお皿などを並べようとしていると大川が今日は取り皿一枚でいいという。

「今日はチャーハンと豚の角煮ですので。チャーハンはそのまま器に盛っちゃいますから。」

そう言って大川はフライパンをせっせとあおる。

「じゃあスプーンとお箸とかだけ出しておくぞ?」

スプーン、お箸、そして1枚の小皿を出して、冷蔵庫から冷やしてあるペットボトルの烏龍茶を取り出す。

たまたまなのだが、昨日の夜烏龍茶が謎に飲みたくなって買って冷やしておいたのだ。


「あ、そっちの角煮の盛り付けやっとくからチャーハンの盛り付け頼んでいいか?」

大川がどちらから盛り付けていいのか困っているのを見て僕はサッと手助けを入れる。

「ありがとうございます。そこの深皿に盛り付けてくだい。そのままお玉は食べる時の取り分けにも使いましょう。」

こうしてテーブルの上には2人分のチャーハンと角煮がドンと置かれた。

僕は1日しか空いていないのにこの光景を懐かしく感じてしまった。


「これだよこれ……。この感じだよ。おいしい……。」

僕はついついそんな言葉が口から出てしまう。

「ふふふ……。須井くん、昨日は結構寂しい思いをしていたみたいですね……。」

そう言って大川は急に椅子から背伸びをして、僕の頭を撫でてくる。

突然のことに僕は少しむせてしまう。危うく飲み込んだ烏龍茶が出てくるところだった。

「え、あ、お、大川……?今のは?」

「昨日頑張った須井くんへのご褒美ですよ。それ以上でもそれ以下でもありません。」

そう言って大川はニコッと笑ってくる。

その笑顔にまた僕はクリティカルダメージを喰らいそうになる。

何とか正気を保って僕は大川にお礼を言う。

「あ、ありがとう……。たまには僕が料理作るから休んでくれてもいいんだぞ……?」

そう言うと大川は少しキョトンとした顔をしてからこう答えてきた。

「私がやりたいからやっているので。須井くん以外の人に振る舞う気などありませんよ?」

やっぱり大川は僕に毎回ダメージを与えていることに気づいていないのではないだろうか。

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