思い出
「お、この店なんかどうだ?」
村川が検索で見つけた店は郷土料理である『ほうとう』を専門としたお店だった。
「いいんじゃないですか?せっかくきたのですし、郷土料理とかは食べておかないと損ですよね。」
その店にはバス一本でいくことができるので、面倒な移動をする必要もなくとても便利だ。
「このバスで行けるらしいぞ。」
村川の検索で出てきたバス乗り場に行き、コミュニティバスに乗り込む。
夜も遅くなってきているからか、コミュニティバスの中はほとんど人がおらず静かだ。
乗ってきたとしても、駅から乗ってくる疲れ果てたサラリーマンなどで僕はお疲れ様と思いながら、そのサラリーマンを眺めた後で外の景色に目をやる。
周りが山に囲われているため、日の入りになっていなくても太陽の光が入ってこないので早めの時間にも関わらず薄暗くなってきている街にポツポツと灯りがつき始めている。
「こっちだとこの時間でもう暗くなるんだな……。この地域の小学生たちは暗くなったら帰るの時間が早くて大変だろうなぁ。」
村川はそう言って道中にある小学校の方を眺めている。
「確かに……!うちらの地域はこの時間でも明るいけどこっちだともう暗いもんね……。かわいそう……。」
小松も村川に同情して少し悲しい目をしながら小学校の方を眺めている。
僕はそれに対して早く寝られるから成長が良さそうと思ったが、2人の思いを邪魔したくないので何も言わないことにした。
「みんなで遊べるのはいいですね……。」
そう大川は僕の隣で小声で呟いている。
「どうしたんだ?大川。」
僕は念の為後ろの2人には聞こえないように小声で聞き返す。
すると、大川はスマホを取り出して何やら打ち込んでいた。
そして、数秒後僕のところにメッセージが飛んでくる。
『こっちで話しましょうか。聴かれるのは少し嫌なので……。』
僕はOKという文字を返すと、また大川は文字を打ち込み始める。
『小学校の頃の私は、親のことがあって自由に外で遊べなかったんです。何かしらのお稽古とかそういうのばかりを入れられてました。』
『どんな稽古やってたんだ?』
そう打ち込むと大川はこう返信してくる。
『そうですね……。たとえば縫い物、料理、あと茶道も少しだけやってました。茶道をさせられたあたりから私は段々親に反感を持ち始めたので、先生に頼んで出席したことにしてもらったりしてましたけど……。』
僕がメッセージを読み終わったあたりで大川はここら辺にしておきましょうか、と僕に言ってバスの電光掲示板を指す。
いつの間にかバスは次のバス停で降りなくてはならないところまで進んでいた。
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