変化

「では下におりましょうか。」

休むこと30分、僕は3人を起こした。

というのも、向かい町へ下るためのケーブルカーがこの時間を逃すと2時間間隔になり始めるからだ。

「あ!来たよ!これだよね?」

小松が指差した方向からは2つの小さな光が見えてきている。おそらくケーブルカーのヘッドライトだろう。

5分後、僕たちは到着したケーブルカーに乗り込み向かい町へと下っていく。

「おい、須井見ろよ。あれさっきのでかい鳥じゃないか?」

村川が指差した先にはつがいの真っ白な鳥が太い木の枝にとまっている。

「そうかもな。あの鳥綺麗だよなぁ……。」

僕は真っ白な鳥を眺めながらそう呟く。

すると、村川は僕をからかうようにこんな質問を耳打ちしてくる。

「大川とあの白い鳥、どっちが綺麗だ?」

「そりゃあもちろん前者だろ。」

そういうと村川は少し残念そうな顔をして回答のし方を期待してたのに、と言ってきた。

「そんなまんまと引っかかってたまるかよ……。」


そう言った後でふと後ろにいる小松と大川の方を見ると、向こうは向こうで何やら話をしているようで楽しそうだ。

そう思いみていると大川と目があう。

僕はあの会話が聴かれていたのかと焦り、サッとそっぽをむく。

それをみた村川が僕の方をニヤニヤしながら見てくる。

「なんだよ……。」

「いやぁ、須井もだいぶ男子らしくなったなって思ってよ。」

「どういう意味でだ?」

「いや、別に悪い意味じゃないぞ?前までの須井だったらこんなこともせずにほぼずっと家に篭って本を読んでただろ?」

そう言われてみればそうかもしれない。今まで村川や小松に遊びに行こうと誘われたとしても、断って1人静かに部屋で読めていない本を読み漁っていただろう。

しかし、今はこうやって大川も含めた4人で出かけている。

「確かに、変わったのかもな……。まぁ、変われた1番の要因はもうわかってるけども。」

「俺としてもびっくりだったな。あんなに出かけたがらなかった人が1人の人間の力によってこうやって出かけるようになっている。人間の影響力ってすごいよな。」

「本当だよ。大川には感謝しかない。」

そう呟くと反対側の大川がこちらへ反応する。

「どうしたんですか?須井くん。」

僕は一気に恥ずかしさが限界値を超えていった。

「いや、なんでもなくはないけどなんでもないってことにしてくれないか?」

そういうと大川はニコりと笑ってまた小松と話し始めた。

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