お疲れアイドル

「見えてきました……!あと少しですよ!」

この先山頂の文字を見た僕達は疲れた体に鞭を打って頂上までの道を進んでいく。

「ようこそ山頂へ!」

ポップな字体で書かれたその文字に少しイライラしたのは僕の心だけの秘密にしておこう。


「はぁ、やっと着いたよ〜……うちはもうしばらくは動けないよ……。」

そう言って小松はベンチに座ると溶けたアイスのようにぐてーんとし始める。

「おいおい、他の客もいるんだから休むなら邪魔にならないように俺に寄っ掛かるとかにしてくれ……。」

そう言って村川は小松を起こして横に座る。僕が言えることかどうかはもう怪しくなってきたのだが、仲睦まじいなと思ってしまった自分がいた。

「あそこの2人、やっぱり側から見ても仲がいいなって分かりますよね……。」

「そうだな……。あの2人は幼馴染でもあるからな……。」

そう言って僕がしみじみと眺めていると大川が横からツンツンと僕を突いてくる。

「どうしたんだ、大川。」

そう聞くと大川は何故かムッとして何も言ってくれない。

「何か気に障ることしちゃったか?もしそうならごめん。どこが嫌だった?」

そう聞くと大川は別にと答えてまた不貞腐れたようになってしまうのだ。

「私も……です。」

大川はしばらくしてから何やらボソボソと僕に言ってきた。

「ん?なんだって?」

「私もあんな風にできるようになりたいです……。」

「あの2人みたいな感じでか?」

「女の子にそういうことを説明させるのは本当はあまり良くないことだって思われますからね……。気をつけてくださいね。」

そう言って大川は僕をつんつんと突いた後で空いてるベンチへと歩いていく。


「少し、休みましょうか。」

そう言って大川は僕の座るスペースを残してベンチに座る。

奥に座っている小松と村川は本当に疲れ果てているのかベンチに座ったまますやすやと寝てしまっている。

「あの2人、はしゃいでいたからかもう寝ちゃってますよ……。冷えちゃうでしょうししばらくしたら起こしてあげましょうか。」

そう言ったあと数分後、大川が無口になりやけに静かになる。

そっと横を見てみると、大川も疲れたのかすやすやと寝息をたてながら寝てしまっている。

「そうだよな。ここまでみんなをガイドしながら来たもんな……。お疲れ様。」

僕は周りを一瞬見回したあとで大川の頭をそっと撫でる。

サラサラとした髪を撫でる。

「ん……。」

大川が一瞬目を覚ましかけたようだったが、また寝てしまったようだ。

暫くは3人を休ませてあげよう。

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