とんびは稀にくる

「いやぁ、ちょっときついって……。」

山を登りながら僕はそう呟く。

「まぁ……確かに辛いのは分かりますけども……。」

大川もそう言って段々と歩みがゆっくりになってくる。

実はこの山、見た目は小さいものの、勾配がキツく上がるのが中々に大変なのだ。

「あそこにベンチがあるよ……!ちょっと座ろうよ、うちも流石に疲れたよ……。」

木材の屋根で作られた少し年季の入った休憩所はまさにここが小さいとはいえ山であり、勾配のせいで整備が困難であることを示している。

座るとミシッと音を立てる椅子は少し不安感はあるものの、休めるという安堵感が上回っていきいつの間にかまったりとした時間になっていく。

「なんかでもこうやって登ってたら俺、腹減ってきたなぁ。」

確かに言われてみればそうかもしれない。

急勾配な山をここまで休憩なしで登ってきたこともあり、僕達は意外にもお腹が空いていたのだ。

「頂上まで行くとそこから隣町に降りられるロープウェイがあるらしいですよ。そこでどこか探しましょうか。」

大川は休憩しながらスマホで今後の予定についてをしっかり考えて伝えてくれていてありがたいのだが、しっかり休んでほしいという思いもある。

「大川、少しは休んでくれ。調べてくれるのは嬉しいけどさ……。」

「大丈夫ですよ。もう調べ終わったので。」

そう言って大川はスマホをしまうと休憩所の窓から見える景色をぼーっと眺め始める。

そんな大川の髪を優しく吹く風がサラサラと撫でて通り過ぎていく。

風は自由に大川の髪を撫でられていいな、などという変な考えが一瞬頭をよぎる。

僕も1人の男子なんだななどと自分に言い訳をしながら大川と同じようにぼーっと外を眺める。


「あ!鳥さんですよ!しかも大きいです!」

大川が指差した方向には1匹の猛禽類のような鳥がちょうど飛んでいくところだった。

「おぉ、でっかいな……。」

「トンビかな?それともタカかな?」

鳥は僕達の休憩している小屋の方へと飛んでくると小屋の真上を通ってそのまま通過していった。

「大きかったですね……。こっちに飛んで来た時はつつかれるかと思いましたよ……。」

そう言って大川はほっと胸を撫で下ろしている。

「お、上手く撮れてんじゃん!ほら!」

村川が見せてくれたのは丁度鳥がこちらへと飛んできた時の写真。

躍動感が出ていて鳥のかっこよさもしっかりと伝わる一枚になっている。

「さて、ではいきますか。」

山頂まではあと少し。暗くなる前に登り終えなくては。

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