満足

「うわ、でかいの取ってきたな……!」

「すごい……!さすが大川さん達だね!うちらそんなの見つけられなかった!」

そう驚く2人に僕たちは巨峰を手に入れた経緯を説明する。

「なるほど……。たまたま取れる位置にあったんだな。すげーじゃん。」

僕たちは巨峰を1粒ずつ取り出して皮を剥く。

するすると皮を剥いて口に入れる。さすがは出荷用だ。甘味が段違いだ。

自分たちが採るために用意されていたぶどうも確かに甘味があって美味しいのだが、それを超えるおいしさがある。

「これ、あそこの売店だといくらなんだろうな……。調べてみるか。」

スマホをポチポチといじった後で村川は画面を見せてくる。

そこには2500円と書かれていた。

「え、これ1房でか?」

「そう、1房でだ……。恐ろしいよな……。これが一定額払って食べられてるんだから万々歳だよな……。」

そんな話をしながら村川はぶどうの皮をむこうとしていたのだが、少しむけたところですぐに千切れてしまう。

「歩ぶどうの皮むくの下手すぎない!?うちがやるよ。」

そう言って小松はスルスルと皮をむいていく。


「おぉ、すげぇ!」

村川は感動した目で小松のむいた綺麗な皮を見ている。

「逆にぶどうの皮むけないのかが疑問だよ……。須井君でさえむけてるんだよ?」

そう言って小松は村川をコツンと軽く叩いていた。

「いい?こうやってむくと綺麗にできるよ。」

「こうか?」

「そう、それでいいの。そこからこうやってゆっくり……。あぁ違うよ!ほら千切れちゃった!」

小松は村川にぶどうのむきかたを教えているのを見て、僕と大川はクスッと笑う。

「いや、だから違うってぇ……。」

村川が苦戦すること数分、やっとのことで綺麗にぶどうをむけるようになったようで、そこからは村川も綺麗に素早く皮をむけるようになっていた。

「なんだかんだお腹いっぱいになってきたな……。」

巨峰を食べ勧めた後で思ったのはこの一言で全て示すことができる。

「確かにそうですね……。まぁ、食べすぎても良くないですしここら辺で切り上げましょうか。」

「そうだな……。俺ももう食えねぇよ……。」

「うちも……。十分食べたぁ〜。」

そんなわけで僕たちは会計をして農園を後にした。

「本日はありがとうございました。」

最後まで案内人をしてくれたおじさんは僕たちに丁寧に接してくれた。

「で?この後はどうするんだ?」

「少し遠くまで散歩した後で夕飯を食べて帰りましょう。」

そう言って大川がここに行こうと見せてきたのは小さな山のような場所だった。

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