計画的なアイドル

「あ、お前らこんなところいたのか!」

「大川さん達いたー!そろそろ出ないと間に合わないよー!」

そう言って小松と村川の2人は走り寄ってきたが、僕たちがリスに囲まれているのを見て状況を理解したようだ。

「おぉ……確かにこれは時間になって来られなくても納得だな……。」

そう言って村川達は僕と大川に引っ付いて離れようとしないリス達を引き離そうとするが、リス達はビッタリとくっついて離れようとしない。

「おいおい……これどうするんだよ……。このままじゃ間に合わないぞ?」

そう言って村川が途方に暮れていると奥から係の人がタッパーを持ってやってきた。

「あぁ、すみません!中々その子達離れないんですよ……!でもこれで大丈夫です!」

係の人がタッパーから出したのは大量のナッツ。それを見たリス達は僕たちの体から離れて真っ先にタッパーの方へと向かう。

「リスさん達はこのナッツに目がないので!ご飯の間は離れますから用事があるなら今のうちにどうぞ!」

係の人はそう言いながらリスがたどり着くまでに時間がかかるようにわざと高い位置でタッパーを手に持っている。

「これは……ありがとうございますなのか?まぁいいや、ありがとうございます!」

村川が困惑しながらもお礼をしたので、僕も続いてありがとうございますと声をあげて伝える。


「須井くん、リス可愛かったですね。」

移動しながら大川は僕にそう言ってくる。

「そうだな。可愛かった。でも……。」

大川の方が可愛いと言おうとしたが、僕にはその勇気が中々出て来なかった。

すると大川はこちらを見て少しクスッと笑ってきた。

「な、なんだよ。」

「いいえ、なんでも。須井くんはまだまだ勇気が足りてないな……と思っただけです。」

「な、なんのことだ?」

僕は念の為というべきか何なのかはわからないが、僕は大川に対してすっとぼける。

「いやいや須井くん、そのとぼけ方は無理がありますよ……。あの流れで逆説の言葉なんて使ったら言おうとしてることは一個しかないじゃないですか……。」

そう言って大川は僕の方を向いてこう言ってくる。

「須井くんが言えないなら私が言ってあげましょうか?リスも可愛かったですけど、須井くんの方が私は可愛いしかっこいいと思いますよ……?」

「うっ……。」

わざと小声で言う辺りに大川の狙ってやっている感じが出ている。こんなことを女の子に、しかも推しのアイドルなんかにされたら普通に一発KOの退場案件だ。

僕は見事に言葉のストレートパンチを喰らい、半ばいい気分になりながら一発KOを喰らった。

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