代替案

「あっという間に駅に着いちまったな……。」

村川の持ってきたトランプで遊ぶこと数十分。電車は目的地の駅に到着していた。

都会から少し離れたこの地域は、駅を降りた時から既に緑に囲まれている。

「で?これからどうするんだ?」

村川が疑問に思うように、予約されているブドウ狩りの時間まではまだ4時間ほどある。

「観光ですよ。とある場所に行きたいのです……!ね、小松さん?」

小松と大川はそう言って僕たちを連れていく。

訪れたのは駅から丘を登ったところにある小さな小屋のような場所。

「ここは……?」

丘の下からは小屋しかみえないのでここがどんな場所かがわからない。

「ここ?ここはねぇ……。足湯だよ!うちが行こうって提案したんだ〜!」

そう言って小松は真っ先に小屋の方へと走っていく。

「あ、おい!ちょっと待てよ!」

村川も小松を追って走っていく。

「あの2人は元気ですね……。私たちも行きましょうか。」

村川と小松を追って小屋に行くと、入り口にはチェーンがかけられており、点検中という張り紙が下げられている。


「うそーん……。」

チェーンの前で小松はがっかりと座り込む。

「ま、まぁしょうがないですよ小松さん。ね?」

そう大川は小松を慰めていた。

その間に僕は他に行ける場所がないかと辺りを見渡す。

見つけたのは自然パークと書かれた矢印。どうやら野鳥観察やここら辺で有名な植物などを見ることができるらしい。

「ここはどうだ?代わりと言っちゃなんだけど面白そうだぞ。」

そう提案すると、3人もそれぞれ興味のあるところがあったようでそのままそれぞれ集合時間まで自由に中を見て回ることにした。

「おぉ……。こんな感じの植物なのか……。」

僕はまずは植物園へと向かい、そこから動物保護センターの方も見に行くことにした。

「あー、可愛いですね。どうですか?ここも空いてますよ?」

動物保護センターの中に入ると聞き覚えのある声がしたのでそっと覗いてみると、大川が係の人の連れてきた大量のリスに取り囲まれていた。

それを見ていると奥から1匹のリスがこちらに向けて走ってくる。

「っと!そっちはドア空いてるぞ!?」

急いで捕まえると奥から係の人が走ってきた。

「あ、お客様すみません……!この子やんちゃでよく逃げるんですよ……。ありがとうございます。」

そう言って飼育員の人は僕の捕まえたリスを連れて行こうとするが、一向に離れそうにない。

「あ、須井くんすごい好かれてますね……。しばらく離れませんよ、それ。」

奥から大川がそう声をかけてきたので僕は諦めて大川の横に座り、そのリスと戯れることにした。 

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