雑務と宿題

「これはこっちでいいですよね?」

「こいつら大森先生のところに持って行っとくぞ〜!」

「あ、危ない!うちがいなかったら本の下敷きだったよ……?」

倉庫室。生徒たちの返却前の課題や、回収した課題を管理するスペースである。

大森先生は僕たちにこの部屋で担当クラスの課題や書類をまとめておくように頼んできたのだった。

「日直だからなぁ……。こんな面倒くさいことやってるけども本当はやりたくないんだよなぁ……。」

そう呟くと大川がこちらをチラッと見てこう言ってくる。

「ちょっと須井くん?私達が手伝ってるんですよ?それは禁句ですよ。」

そう言って大川はまたせっせと書類を移動させてファイリングをしている。


その後も作業を続けていく。

作業をしていくうちに少しずつ楽しくなってくる。

これはどの作業でもそうだと思うのだが、たとえ嫌な作業でも続けていくとなぜか嫌だ、疲れたと言う気持ちが消えていき少しずつ作業にやりがいを感じてくる。

「よし、あとはここか……。」

残っているのは採点済みの大量の春休みの宿題の山。これをクラスごとに整頓すれば、今日の仕事は全て終了だ。

「にしてもこんなに沢山の宿題を片付けてたんだな……。よくこなしてたよ……。」

ただただ自分の今までの頑張りを感じて、僕はしみじみとする。

「確かにここの学校って他のところよりも長期休暇期間の課題が多いように感じますね……。」

大川のいた高校は僕たちのやっている課題の半分ほどだったという。

別に苦ではないのだが、計画的にやらないとどうしても最終日に追い込むことになってしまう。


毎年のように小松と村川は追い込みの恐ろしさをわかっているはずなのに、溜め込んで僕に泣きついてくるのだ。

「小松、今年は溜め込まずにコツコツやろうな?」

そういうと小松はピッ!と弱々しい声を出した後でうんと震え声で答えてきた。

「村川にも伝えておくんだぞ?今年こそは絶対に期限内に提出だからな。」

どうやって2人に期限内に終わらせさせるかという問題はあるが、少なくともいつものように期限内に終わらさせることをこの休みの目標にして動くことは確実だ。

まるで先生のようなことを言ってしまったが、昔の小松と村川はいつもこんな感じで先生に言われていたので、先生には言われなくなったのはある意味成長なのかもしれない。

あとは期限をしっかり守ることさえできればあの2人も完璧にみんなと同じように提出できるので今年は大川と共に勉強会を毎日開くことを予定している。


「よし、片付け終わり!帰ろう!」

面倒臭い日直の作業も終わり、いよいよ冬休みだ。

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