お返しには
「どうだ?だいぶ良くなったか?」
次の日、大川からメッセージが送られてきたので僕が向かうと、大川は元気になっているようだった。
「はい。どうやらインフルエンザではなくてただの風邪だったみたいです。不幸中の幸いですね。須井くんは私の看病中に移りませんでしたか?それが心配で……。」
そう言って大川は少し申し訳なさそうに話す。
「僕なら大丈夫だから。まずは大川の体調が良くなったことだけで僕は嬉しいよ。」
そう言うと大川は少し赤い顔で、ありがとうございますと言ってきた。
この赤い顔がいつものように大川の恥ずかしい気持ちからなのか、それとも微熱によるものなのか。
僕はそんな少しくだらないことを考えてしまった。
「須井くん?何を考えてるんですか?」
大川の質問の無垢なトーンの声で僕はそんな考え事の世界から引き戻される。
「いや、大川がインフルエンザじゃないならクラスの何人かもそうなのかな、と思ってな。」
咄嗟にそう嘘をつくと、大川は納得したようで一緒に考え始めた。
「確かにそうですね……。須井くんは学校でインフルエンザが増えたからと言われて返されたんですよね、でも私みたいな人ばっかりだったら実質ラッキー休みですね。」
そう言って大川はクスクスと笑う。
「そうだな。」
そうだとしたらテストが休みになってくれたのはラッキーでしかない。少しだけ羽を伸ばして休めるのだから。
「まぁ、体が良くなってくれたならよかった。念の為、あと数日は絶対安静だからな?いつもみたいに無理するなよ?」
そう大川に釘をさすと、バレたかという顔をして大川は分かりましたと答える。
恐らくまた明日にはお礼を言いに来ようとしていたのだろう。
そのような事態を避けるためにも僕はこうやって釘をさしたのだ。
「じゃあ、安静にしてしっかり体をよくしてくれ。何か必要なものがあったら連絡してくれれば買っていくからさ。」
そう大川に言って僕は思い出したように、今日買ってきたお見舞いの品を机の上に出していく。
「こんなに買って貰っちゃって……。須井くんのポケットマネーから出してもらっちゃってるのが申し訳ないです……。」
「そんなこと気にしなくていいんだよ。だって、大川にはいつも食事とか作ってもらってるんだ。これでその分のお礼を払ったと思ってくれ。」
そう言うと大川は少しだけ納得した顔をした後で、こう言ってきた。
「今度からは半分は払います。その分のお礼はもう払ったのですよね?」
本人がそういうのならいいのだが、僕は少し納得がいかなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます