9割
「はぁ……まさかテストが無くなるとはな……。」
大川もいない部屋で僕はそう呟く。
遡ること数時間前、僕はテストの事前学習のために早めに学校へ向かった。
しかし、いつもなら僕よりも前に着いて勉強をしているグループの人たちが数人いない。
そこに関してはまだ僕はおかしいなと思うような時間ではなかった。
しかし、その後も少しクラスメイトが登校してくるがいつもよりも人数がまばらだ。
いつもなら村川と来るはずの小松も1人で来て机の上で教科書と大川の徹底対策メモをじっとみている。
小松に村川がどうしたのか聞こうと立った瞬間、ホームルームの時間を知らせるチャイムが鳴る。
教室の中の生徒は8割といったところだろうか。明らかに少ない。おかしい。
そう思っていると廊下から少し駆け足のように担任の大森先生が早歩きをしてこちらへと向かってくる音がする。
「皆さん、今すぐに帰宅してください。」
大森先生からの第一声はその言葉だった。
もちろん、教室はざわついた。
「簡単に言うとインフルエンザがこの学年で流行り始めています。これ以上の感染拡大はこちらとしても困りますので一時的な学級閉鎖になります。」
そう大森先生が言うと、こんな質問が飛んでくる。
「期末はどうなりますか……?」
「残念ながら……。」
大森先生はそう言って少しためた後で付け足す。
「実施できません。」
その言葉に生徒たちは喜ぶがここで大騒ぎしては良くないと雰囲気的に判断したのか、誰もが少し悔しそうな動きをしている。
「そうだよなぁ、みんな悔しいよなぁ。せっかく勉強してたのによぉ!」
冗談なのか本気なのかわからないことを大森先生は言った後で全員にすぐに帰るように言って職員室へと戻ってしまった。
「なんか大川さんと歩がいないと帰り道悲しいね。うちはそうなんだけど……。」
帰り道、途中まで方向が一緒の小松がそう言ってきた。
「確かにな……。僕は大川が心配だからお見舞いのものとか買ってよって帰る予定だけど小松はどうするんだ?」
「うち?もちろん歩のために色々買って帰るよ。どうせだし一緒に買い物しちゃわない?」
「見落としがあっても困るしそうするのが一番いいか。」
そんなわけで僕と小松は近くのドラッグストアで色々な看病のものを買い、解散した。
『大川、大丈夫か?今から色々持っていくからな。』
そう送って僕は大川の家へと向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます