友人と過去(大川視点)
「最近はめぐみん、忙しいんだって?」
私の横にいる旧友の
「そうなんだよね……。色々事件とかがあってから仕事がひっきりなしに来てさ……。」
もう大変と言いながら私は彩菜に笑いかける。
「あ、そういえばさ。めぐみん、彼氏できたんだって?」
その彩菜の言葉に私は一瞬ぴくんとなる。
「ま、まぁ一応……ね?」
そういうと彩菜はふーんと言ってこちらをニヤニヤとみてくる。
「な、なに?」
「いやぁ、めぐみんにも春が来たんだなぁって思ってさ……。お幸せにねっ!」
私は久しぶりのこの彩菜のノリに中々ついていけず、振り回される。
昔もずっと彩菜のペースに巻き込まれていたなぁと思いながら横を一緒に歩く。
「相変わらずめぐみんは変わってないね。」
そう言って彩菜はクスクスと笑う。
「そう言うあやなんだって、全然昔と変わってないじゃん。」
そう私もわざと少し皮肉気味に言ってクスクスと笑う。
「なんか昔もあたし達こんなこと言い合ってなかったっけ?結局昔と変わってないんだね……。」
「そうだね。でも、それが私達のいいところなんじゃないかな?」
人工林の近くの休憩スポットへといつの間にか進んでいた私たちは仮設ベンチに腰掛ける。
サワサワと葉と葉が風ですれあう音が響く。
騒がしい学校内の文化祭とは違ってここはとても静かだ。2人だけの世界。
目を閉じる。少しずつ昔の思い出がよぎってくる。
◆◇◆
「めぐみん、あのね、そのうち引っ越すことになったの。」
小学校の帰り道で私は彩菜からそう伝えられたのだった。
「え、そうなの!?あやなんどこに引っ越しちゃうの?遊びに行くよ。」
「ううん、多分無理だよ。遠いもん。鹿児島だから。」
鹿児島。最近先生が教えてくれた県だ。
「でも、ほら、近いよ。」
私は地図帳に定規を当てて彩菜に見せる。
「うん、あたしもお母さんにそう言ったの。そしたらその地図は『しゅくしゃく』っていうのをされてるんだって。だからもっともーっと遠いんだって。」
そう言われてもその頃の私にはぴんと来なかった。
「『しゅくしゃく』ってなんだろう。」
「あたしも分からない……。でも、なんか遠くなることなんじゃない?」
そんな話をしながら下校した。
◆◇◆
「覚えてる?昔の私達、縮尺のことを距離が長くなる現象だと思い込んでたんだよ。」
「あー!あたしが引っ越す前のやつね!引っ越し先で縮尺やった時にあたし絶望したもん。確かにこれは無理だなって。」
楽しい時間はあっという間に過ぎていく。
カフェから持ってきた飲み物ももうすぐで空になってしまう。
「戻ろっか。」
「そうだね。」
私たちはまた騒がしい校舎へと足を進めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます