思いがけない来客

「いらっしゃいませー!ただいま少しお待ちいただく形となっております!」

そんな声が入り口から聞こえてくる。

他の教室も喫茶店らしきものをしているのだが、僕たちのクオリティに優るものはなく、結局ここに人が集まってきてしまうという感じだった。

そんな中で、僕も今日はヘルプとして調理室から料理を運んだりと配膳の人たちの負担を減らす努力をしていた。

そんな中で大川が案内をしようとした時に驚いた顔をして話をしながら席へと進んでいった。

見た目は大体、大川と同じような背丈でメガネをかけている。どうやら大川とは面識があるらしい。


「え、そんな偶然あるんですね!私今すごい嬉しいです……!」

大川はどうやら話し相手に出会えたことをとても喜んでいるようだ。

「本当に!あたしも会えて良かったよ……。こっちに転校してたのはチャットで聞いてたけど、まさかちょうど文化祭の時だったなんて……。」

先に厨房の方へ戻り、作業をしているとしばらくして大川はニコニコとしながら厨房へと戻ってくる。

「大川、何かあったのか?」

僕は何も知らないフリをしてそう大川に尋ねる。

「昨日コーラを飲んだ時にポロっと言っていたかもしれませんが、私には昔すごく仲のいい友人がいました。でも、小学校の頃に遠くに引っ越したのでしばらく会えてなかったんです。」

「その言い方的にまさか……。」

「そのまさかです!たまたまこちらに来ていて、わざわざ寄ってくれたんです!」

そう言って大川は興奮気味に話してくる。いつもの何倍も早口だ。


「そうか、良かったな……。どうせだったら少しシフト外れて一緒に回ってきたらどうだ?その分は僕とかが埋め合わせするから。」

「え、そ、そんな……。いいんですか?」

「だって次はいつ会えるか分からないんだろ?だったら今楽しんできたほうがいいぞ。大川の分のシフトのところは僕が補っておくから。」

そういうと大川は頭を下げてありがとうございますと言いながら友人のところへと向かっていった。

「大川にも僕達以外の友人がちゃんといて良かった……。」

勝手に大川が一匹狼のように生活していたと思い込んでいた僕は、昨日大川から友人の存在を聞いた時安心した。

そして今日、昨日の大川の言葉を神様が聞きつけたかのように友人がここを訪問してくれた。

息子や娘に友人ができて喜ぶ母親の気持ちがなんとなくわかった気がした。


「おーい、須井!ぼーっとしてないでやるぞ!」

クラスメイトに声をかけられて僕は作業に戻った。

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