宣伝
「2階の101教室で喫茶店やってまーす!いかがですかー!」
まさか僕がこんな宣伝をする側に回る日が来るなんて思ってもいなかった。
中学校の頃はずっと教室で裏方の作業をやっていたので、こういう宣伝として回るという行為自体が初めてなのだ。
「ってか……大川。この看板重くないか……?流石に持つの疲れてきたぞ……。」
いくら村川が隣で持ってくれているとはいえ、それでもこの看板を2人で持つのは体への負担がすごいことになっている。
「では、一旦中庭まで出たら休憩にしましょうか。」
休憩という言葉で僕は少しだけやる気が元に戻り、また看板を持って進み始める。
そして中庭に到着し、僕たちは看板の装飾面を壁に向けて立てかける。
文化祭のルールとして中庭の休憩エリアは宣伝が禁止だからだ。
「2人ともお疲れ様でした。お礼に何か出店の商品を1つ奢りますよ。」
疲れた僕たちの目に入ったのは氷水に入れられてキンキンに冷えたドリンク販売店。
「これにしようか……。」
「そうだな……。」
2人して疲弊した状態で飲み物を選ぶ。それを大川がお店の人から受け取り、僕たちに渡してくる。
「ぷふぁー!生き返ったー!」
「お、おいしい……。」
僕と村川2人して飲み屋にいるおじさんのような声を出しながら冷えたコーラを喉へ流し込む。
「やっぱこういう時のコーラは違うなぁ!」
村川はそう言ってコーラをぐびぐびと飲む。
「私も少し……。」
そう言って大川も買ったコーラを1口飲んだあとで、びっくりしたような顔をしながらもう一 1口、また1口と飲み進める。
「コーラって、こういう時だとこんなに美味しいのですね……。」
そう言って大川は目をキラキラとさせている。
「大川確かにそんなにコーラ飲むイメージないな……。」
「そうですね……。小さい頃にお友達の家に遊びに行った時に飲んだくらいですね。私の両親はあまりコーラをよく思っていなかったので……。なんだか新鮮です。あの友達は引っ越した先で今頃どうしているでしょうか……。」
大川は昔のことを思い出しながらコーラを堪能しているようだ。
「さて、そろそろ戻らないと俺らもシフトだな。」
「お、本当だ。大川、戻るぞー。」
そういうと大川はハッと我に帰ってこちらへと戻ってくる。
「あぁ、ごめんなさい……。つい考え事を……。」
「昔の友達、呼べば良かったのに。」
「いえ、遠くに引っ越してしまったので呼べないんですよ……。それに、たまに会うこともありますから。」
僕はそうかと返して大川達と教室へ戻った。
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