助けたあの子は天使系アイドル
「すいません、会話中に電話なんてしてしまって……。」
そう僕に言ってきた彼女はあくまでも普通の女学生を演じようとしているように見えた。
今ここで彼女にアイドルかと確認を取ったらただの変な人だと思われてしまうのでどうするべきかと僕は考える。
「その顔は薄々何かをわかっている顔ですね?」
そう言って彼女は僕の目をじっと見てくる。
「かと言ってここで話すのは……うーん。さっきの公園で少し話しますか……。あそなら普段は人がいませんしね。」
無理はしない方がいいと言ったのだが女学生は言うことを聞こうとせずに僕の自転車に乗ったので、しょうがなく公園で話す事にした。
「まぁ、色々話す前に自己紹介くらいはお互いに済ませておきましょうか。私は
「僕は
お互いに挨拶を終えると明里は1回大きく息を吸う。
「さて、本題に入りますが……須井君はどこまで気づいていますか?正直に答えてもらっていいですよ。」
急にこんな質問をされてもと思いながらも僕は明里の言う通りに先ほどの電話から気づいたことをそのまま話した。
「なるほど……では須井君には偽名で挨拶をする必要はありませんでしたね。」
そう言って彼女は
「と言うことはその黒い髪ってまさか……。」
そう言うと大川は黒い髪を少しだけずらし、モカブラウンの髪をちらつかせる。
「そうですよ、ウィッグです。こうでもしないと名前を偽装しても髪でバレちゃいますからね……。」
そう言ってまた大川はウィッグを被り直す。
「そう言う訳なので……このことは誰にも言わないでくださいよ?」
大川は僕に向かってそう言って来たので僕はもちろんと返す。
「あと、1つだけ質問してもいいですか?」
「いいけど……何か聞くことあるか?」
そう言うと大川は少し頬を膨らませながらこう聞いてくる。
「須井君の通っている学校は、なんという学校なんですか?」
「僕は大森高校ってところに通ってるけどさっき見た所が大川のマンションで合っているなら、ギリギリ通学区域外じゃないか?」
そう言うと大川は首を振る。
「実はギリギリ範囲内なんですよ。最初は須井君の通っている大森高校に行こうと思ってたんですけど、アイドルもしながら学業もなんて大変だと思って少し偏差値の低い青島高校の方を選んだんです。」
そう言った後で大川はそれは全くの間違いでしたけどと、一言付け足す。
「アイドルって基本は高校とか行かないで仕事に専念するって聞いたことがあるけど、なんで高校に通ってるんだ?」
「私も普通の高校生活がしたいからです。他の人みたいに青春をして、カフェに友達と行ってとかそういうのをやりたかったんですよ。でも、あの学校はそんな私の夢が叶うような環境じゃほとんどなかったんですよね……。」
そう言って、大川は下を向いたまま話さなくなってしまった。
「大変だったんだな……。これからどうするつもりなんだ?通信制にして空き時間を増やすとか、そういうのにするのか?」
大川にそう伝えると、首を振って断ってきた。
「いいえ、それでは私が普通の高校に行った意味がないじゃないですか。私はリアルなお友達と、色々遊びたいんです。」
大川はそう言って僕の方をじっと見てくる。
僕はどう返答するのが正解か分からずに、頷くことしかできずただ頷いていた。
「あ、私いいことを思いつきました……。」
そう言って大川は僕の方を見てニヤニヤと笑っている。
「な、なんだよ……?」
僕には大川の小悪魔的な笑顔に謎の恐怖を感じつつも、推しがこちらを見てくれているという喜びもあるという複雑な感情が渦巻いていた。
「私はギリギリ登校範囲内の須井君の通っている大森高校に転校をします。そこで須井君は私のお友達作りを見守っていて下さい!何かあったらその時は手を貸して欲しいです。」
お友達作り、それは簡単そうで1番難しい事だ。
まず第1に大川が、あの有名学生アイドルであるmegumiだということを悟られないようにしなくてはならない。
第2に転校生の大川に僕なんかが最初に近づいて行って大丈夫かということだ。
普段から教室の隅の席で本を読んでいるような僕が急に、大川のような美少女ど会話などして、ましてや一緒に友達探しなんてし始めたなら、もうクラスの人に怪しい人認定をされることは確定している。
「そんな急に言われても、こんな僕が大川みたいな奴と急に関わり合いなんかしてたら絶対怪しまれるんだが……。」
そう言うと大川は秘策があると言って僕にその内容を伝えてきた。
「なるほどな……、それならまぁ怪しまれないけど大川の方は大丈夫なのか?」
「それならご心配なく。私には私なりの解決方法があるので。」
そんな話をしてから僕はもう一度大川を家まで自転車で送り届ける。
「今日はありがとうございました。1週間後とかになると思いますが、大森高校でもよろしくお願いしますね。」
そう言って家の中に入っていく大川は眩しかった。
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