公園で助けた女子高生が実は人気の学生アイドルでお友達作りを見守ることになりました〜学校では見せない側面を見せてくるお隣の家のアイドルの不意打ちに僕はどうすることもできない〜

ぽてぃ カクヨム金のたまご選出

事の発端

世の中には僕達の心を癒してくれる存在というものが何かしらあるはずだ。

 それは物かもしれないし、人かもしれない。

 そんな中で僕は一人の若手アイドルを癒しの存在としていた。


 そのアイドルは僕と同じ高校生で事務所デビューをし、今ではネットでも話題によく上がるほどだ。

 そんな彼女を僕はまだ人気のないデビュー当初から推しており、今でもずっとファンだ。

 ただ、他の物凄く推しているような人達に比べれば、僕は彼女のライブに行くことも無く基本的にはSNSの情報や動画を見ているだけに過ぎない。

 ただ、同い年なんて言い方をしていいのか分からないが、僕は彼女と同年代の一人のファンとしてずっと応援をし続けている。


 テレビなどで放送されている彼女の活躍は釘つけにさせられる何かがあるのだ。

 ハーフなのかは分からないがモカブラウンのロングヘアーもまた彼女のチャームポイントの1つである。

 そして、彼女は『天使系アイドル』として今日までずっと活動してきているのである。


もし、彼女に会えたとしたら僕はどんな反応をするだろうか。本気のファンなら大興奮だろうが、僕は意外にも普通に話すのかもしれない。

 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 いつも通りの下校路を僕は自転車に乗って進んでいた。

 今日は夜にテレビで夜の8時から『天使系アイドル』の2つ名で有名なmegumiの特集番組があるので早く帰って宿題を終わらせたかったのだ。

だが、家に帰る前に買い物を済ませねばならない。自分たちの地区のスーパーには中々並ばない品物なので、隣町のスーパーまで行かなくてはならないのだ。

 いつもよりも自転車のギアも上げて猛スピードで自転車を漕いで、高校の横にある少し細い路地へと入る。


 そこには公園があるのだが、いつもはほとんど人がいないはずなのに今日はやけに人がいた。

 しかも、いるのはガラの悪そうな制服を着崩した高校生らしき学生数名と一人の女学生だった。

 僕は、早く帰らなくてはという気持ちで無視をして帰ることもできたのだが、それは僕の良心が許さなかった。


 僕は自転車を公園の入り口に停め、とある場所に連絡を入れた後で、スマホのビデオ機能を開始させてから男子学生達に近づいていく。

 「ねぇ、君達隣の区域の青島高校の人達だよね?今、念の為録画とか回してるんだけどさ、何やってるの?」

 そう聞くと男子学生達は僕に対して全員で睨みつけてきた後で、一人リーダーらしき人が僕の方へと歩いてきた。


 「おい、そのスマホの録画を今すぐやめな。」

 リーダーらしき学生は僕に向かってものすごい顔で僕に威嚇いかくをしてくる。

 「いいや、それはできないなぁ。だって、君たちあの子をいじめてるんでしょ?」


 そう言うとリーダーらしき人は更に怖い顔で僕を睨みつけてくる。

 「んだよ、オメェには関係ないだろ?こいつはな、学校でやけに人気があるやつでな。僕たちがでしゃばんなって分からせてやろうとしてるんだよ!」

 そう言ってリーダーらしき学生は僕に向けて鉄パイプを向けてくる。


 「はぁ……因みに、一応言っておきますけど学校の方には連絡済みですからね。」

 そう言うと急に男子学生達は威勢を失い、慌て始める。

 「もうすぐ近くまであなた達の学校の先生は来ているでしょうね。」

 そう言った直後に一人のジャージを着た容体がたいのいい体育教師らしき人がやって来て、男子学生達を捕まえ始める。


 「どうもありがとうございました。こいつら学校では反省してるフリしておとなしかったくせに、学校外でこんな事をするなんて……。お前ら、退学処理が出る覚悟もしとけよ?」

 そう言って容体のいい先生は僕の録画データを受け取った後で、男子学生達を連れて行ってしまった。


 「おい、大丈夫か?」

 僕は男子学生に囲まれていた女学生に近づく。

 黒髪ロングでタイツを履いているその女学生を見た時に僕は何かの既視感を少しだけ感じた。


 「大丈夫です、あ、ありがとうございました……。」

 そう言って彼女は立ち上がり、どこかへ向かおうとするが立った直後に右足を押さえ始めた。

 「おい、無理すんなって。ちょっと待ってろ、家から湿布とか色々持ってくるから!」

 そう言うと女学生は首を振った後でまた歩き出そうとするが、歩くのが辛いようですぐに跪いてしまった。


 「絶対ここから動くなよ?すぐに戻るからな。」

 僕は女学生にそう言い聞かせてすぐ近くの家まで全速力で自転車を漕ぎ、家から湿布や氷、大きめのタオルなどを用意して手提げ袋に詰めて、また公園へと戻る。

 

 女学生はちゃんとそのままの場所で動かずに待ってくれていた。

 「ほれ、湿布とか持って来たからとりあえず貼って欲しい。大丈夫だ、見ないようにしておくから。」

 僕は大きめのタオルと湿布を渡した後で、女学生とベンチの方まで肩を貸して移動させ、僕はそのまま見ないように公園の外へと一旦出ることにした。

 

 しばらくすると少し足を引きずるような感じで女学生が公園から出てくる。

 「湿布は貼れたみたいだな。良かった良かった。」

 だが、明らかにこのままにしておいては症状が悪化してしまうので、僕は自転車に跨った後で女学生に後ろに乗るように合図をする。


 「一旦病院に行った方がいいだろうから連れていくぞ。」

 「いや、自分で行け……うっ――」

 断って自分で向かおうとした女学生は自分の足で向かおうとしたようだがすぐにまた足を押さえている。

 「ほら、言わんこっちゃない……。乗って行ったほうが絶対に楽だと思うぞ。」

 そう言うと女学生は僕の後ろにしがみつくように自転車に乗る。

 僕はゆっくりと病院に向けて自転車を漕ぎ始め、そのまま女学生の病院の診察を済ませる。

 

 病院での診断結果を待っている間に僕は隣に座っている女学生と少し会話を交わした。

 「あの男子学生達はいつもあんな感じでいじめてきてたのか?」

 「いや、少し前まではそんなことは無かったんですけど最近エスカレートしてきてあんな事になってしまって……。」

 どうやら少し前までは直接手を出してくる事はなく、暴言などだけで済んでいたようなのだが段々とエスカレートしていき、今日のようになってしまったらしい。


 「私、結構他の男子から告白されることとかも多いんですよ……。でも、私は色々あってそういうのを了承したくないんです。」

 そう言って女学生は制服のスカートをギュッと握りしめたまま下を向いてしまった。


 「別にいいんじゃないか?」

 そういうと女学生はえ?と言ってこちらを見てくる。

 「でも、私は勝手な理由でお誘いを断ってしまっているのですし……」

 「何か事情があるならそれでいいと思うぞ?無理に関係を作るとかいうのもおかしいと僕は思うしね……。」

 そういうと女学生はどこか納得したような表情でなるほどと言ってこっちを見てきた。


 しばらくし、診察の結果が伝えられ、打撲だということが分かった。

 「約1週間位で治るみたいです。」

 帰りに家まで送っている途中で後ろに乗っている女学生は少し心配そうにそう言った。

 「あ、ここですので。」

 女学生がそう言って止まった家は僕の家から歩いても数秒ほどの位置にあるマンションのとある部屋の前だった。


 近所だと伝えようとした時に女学生のスカートのポケットに入っているスマホから着信音が流れてくる。

 「あ、ごめんなさい。少し電話に出させてもらいますね。」

 そう言って女学生は電話にでる。


 「はい。あ、マネージャーさんですか?あの、本当に申し訳ないのですが、また変な人たちに絡まれまして……。」

 マネージャーと言っていたが何か配信者のようなことをしているのだろうか。

 「はい、なので今夜の8時半からのライブインタビューは1週間後までパスで――」

 

 夜の8時半。その言葉に僕は何か引っかかりを感じた。

 マネージャー、夜の8時半、その2つの言葉を繋げて僕は1つの答えに辿り着いてしまった。

 「はい、確かに気をつけなくてはいけないことですが……どうすることもできなくて。いつも下校中で、特に助けてくれる方もいないので……。今回は通りすがりの」

 やっぱりだ。僕は彼女が『天使系アイドル』のmegumiだと確信した。


 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 


 


 

 


 


 

 


 

 

 


 

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