第9話 小春
尾道に着いて伝三に訊いた女忍びの住まいを探した。大きな
「ただ今戻りました。暑い暑い、もう夏じゃわい」
明るい声だった。背丈は中くらいの痩せた女だ。切れ長の目に鼻筋の通った顔は美形と言って間違いないだろう。行商をしているせいか、若い女にしては色が浅黒い。が、肌はきめ細かく化粧をすれば映えるに違いない。夏物の薄い着物の中には、鍛え上げられた
「ここの
下駄屋の主人が女に声をかけた。
「小春殿か」
「はい、小春でございます」
小春ははっきりとした声で答えると、吉十郎の顔を見て頭を下げた。
「手紙を預かっておる」
伝三のしたためた書状を小春は受け取り、すぐその場で封を切り読み始めた。そして、読み終わるや何の
「明後日の
と伝えた。小春は声には出していない。
「承知」
吉十郎も声は出していない。
「では、
吉十郎が云うと、下駄屋の主人と小春に軽く頭を下げ、背を向け去って行った。
「近頃には珍しい律儀な御坊じゃのう。何かと言えば金、金の乞食坊主ばかり。
下駄屋の主人は、そう言うと吉十郎の後ろ姿に手を合わせた。
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