第7話 芋酒
「なんと、日照りに強く、痩せた土地でもよく出来るだと。そのような芋があるのか。甘藷とか申したな」
伝三は身を乗り出してきた。
「
吉十郎は、身を乗り出してきた伝三に、いささか
「では、偽りという事もあるのか?」
伝三は真剣だ。
「全くの偽りという事はないと思いまする。その剣術仲間、少々かぶき者の御様子なれど
定基の昔の剣術仲間、
「おぬしが公方様でも天子様でも同じ事、おいらにとっちゃ岩松だぜ」
と言い放った。それ以来、ますますその友情は深まった。
近藤一馬の話では、旗本のごろつき子息たちに囲まれて
「薩摩では甘藷、唐芋、あるいは琉球芋と称して、広く栽培されている芋から造るそうだが、これが、日照りに強く、
近藤一馬は、定基に酒を勧めながら語った。あまりに旨い酒だったので誰にも告げず独り占めしようとしていたのだが、残り少なくなって急に、
「お主の顔が浮かんでしまったのよ。このまま飲み干してしまうとなんとも後味が悪い。という事で最後はお主と飲もうかとこの大徳利に入れて持参したのよ、さあさあ遠慮せずどんどんやってくれ」
近藤一馬はそう言うと、定基の盃にまた芋酒を注いだ。
「それは良い心がけだ」
そう言って、定基は注がれた芋酒を飲み干した。なるほど確かに旨い酒だ。ほのかに芋の香りがして、口に入れるとかすかな甘みがする。そして、滑るように胃の腑に入って行くその
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