第4話 伊予大三島を出立
船は来島海峡を渡り、今治のすぐ沖の伊予大島、下見の港に着いた。その名が表すように、下見吉十郎の先祖が支配した土地である。今は本家の血筋も絶え、ここ伊予大島で下見を名乗る者は誰もいない。
船頭は荷役を差配しながら大量の荷駄を降ろしている。荷駄のほとんどが米、芋、豆、味噌などの食料である。去年の夏の日照りで
日照りが長く続くとそれは凶作をもたらす。この芸予諸島では凶作はすなわち
吉十郎は荷駄が降ろされる様子を見ながら、
「やはり、甘藷とやらを盗んでこんといかんかのう」
一人つぶやくと立ち上がり、気合を入れるかのように背を伸ばすと、潮風を思い切り吸い込み、そして吐いた。
昨夜、家老の服部伊織に聞いたのだが、甘藷は20年ほど前に家老の
服部伊織は、定基から甘藷の事を知り、その当時に甘藷栽培をやったことのある百姓から訊いたのだが、20年前となるとほとんど覚えていない。色もあやふやで、形も丸い云う者も細いと云う者もいる。それに、何度やっても芋が腐ってしまい、ほとほと困ったと云う。
正徳元年六月、吉十郎は
翌日、尾道の代官所に向かった。そこには、かねて家臣として同じく服部屋敷に仕えた
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