お出かけ

 また夢をみた。

 男が大勢の人に対して能力を使用している。

 そこには、私もいてその男に負けそうになっていた。

 そこに誰かが駆けつけてくれる……というところで私は目を覚ました。


「い、今のは?」

『また予知したんだよ。実際にああなっちゃうかもしれないから外には出て欲しくないんだけど……』

 —行かなければ、他の誰かが犠牲になってしまうだろう。それならば、私はそれを防ぎたい。

『凛ちゃんはそういう子だよね。でも、気をつけてね?』

 —うむ、最大限気をつける。


 今日は怜と遊ぶ予定だから準備をせねばな。

 私は急ぎ準備を済ませ、迎えに行くと連絡を入れた。

 家を出て怜の家へと向かう。

 動きやすいように、ズボンに、フードのついたパーカーという服装にしておいた。

 少々地味かもしれないが、何かが起こるなら動きやすい方が良いだろう。


 怜の家に着き、インターホンを押す。

 すると、怜が出てきた。

 彼女は青色で長袖の服に黒のスカートという服装である。


「おはよう、迎えに来てくれてありがとう」

「おはよう。今日はどこへ行くのだ?」

「原宿よ。あっ、言い忘れてたのだけど駅でもう一人と待ち合わせする予定だから早く行きましょ」


 怜がそう言った。


「もう一人とは誰のことだ?」

「着いてからのお楽しみよ」


 お楽しみと言って笑った。

 誰と待ち合わせしているのだろうな。

 しばらく歩いて駅に着いた。

 そして、怜は誰かを見つけて呼んだ。


「忍ちゃーん、こっちよ〜」


 その人は近づいてきた。


「あっ、怜さんおはようございます〜笠野さんも!」


 私に向かって元気に挨拶をしてくる。


「もう一人とは西野のことだったのだな。それにしても二人はそんなに仲が良かったか?」

「話してたら意気投合したのよ」

「ですです〜」


 二人がそう言った。

 納得はしたが、一つ気になった。


「私も名前で呼んでくれないだろうか?」


 怜だけ名前で呼んでいるのが気になったのだ。

 私も名前で呼ばれたい。そう思って西野に頼んでみた。


「もちろんいいですよ〜凛さん!私も名前で呼んでほしいです〜」

「うむ、ありがとう忍」


 やはり、友達という感じがしていいものだな。


「凛はそういうところが可愛いのよねえ」

「ふふっ、そうですね〜」


 あまり言われ慣れていない言葉なので、少し困惑した。


「さて、そろそろ行きましょう」

「そうだな。行こう」


 私達は電車に乗り、移動をする。

 電車に揺られて降りる駅に着いた。

 混んでいて景色があまり見られなかったのが残念だった。


「着きましたね〜まずなにします?」

「もう昼になるからご飯にしないか?」

「そうね。じゃあ、あのお店にしない?」


 怜はオシャレな外観のところを指さしている。


「わ〜良さそうですね。行きましょ〜ほらほら、凛さんも」


 忍が私の手を引っ張る。


「ちょっと待ってくれ。自分で歩くから」


 そうして私達は店内に入った。

 座ってそれぞれ注文をしてから待つ。

 その間にこのあと何をするかを話していると、料理が運ばれてきた。


「美味しそうね」

「そうだな」

「早く食べましょ〜」


 全員で、いただきますと言ってから食べ始める。

 やはり、誰かが作ってくれたものというのは美味しいな。

 目の前で忍がニコニコしているので、よりそう感じる。


「凛さん、私の顔になにかついてます?」

「いや、美味しそうに食べているなと思って」

「確かにそうね。可愛いわ」

「そんなこと言われたら照れるじゃないですか〜」


 こんなに、賑やかに食事をするのも楽しい。

 最近は一人……いや、千緒と二人だったからな。

 そうして食べ終わり、ごちそうさまと言ってレジに行くために席を立った。

 払ったあとにまだ食べていた彼女達の元へ戻ると、もう食べ終わっていた。


「ごちそうさまでした」

「よしっ、移動しますか〜あっ、その前にお金……」

「それなら先程払っておいた」

「えっ?じゃあ、凛さんに渡しますよ〜」

「他のところへも行くのだろう?なら、ここはいい」


 彼女が胸を押さえていたので慌てたが、大丈夫そうなのでほっとした。

 だが「これが彼氏力……」とはなんのことだろうな?


「凛はそういうところがあるのよね。忍ちゃん、慣れるのよ」

「うぅ、はい……」


 そういうところとはなんだ?

 何か私には分からない話をしているのか?

 その時、怜が手を叩いた。


「次の場所に行きましょうか」

「そうですね〜」


 それから私達は雑貨屋や、服屋に行って楽しく過ごした。

 今はクレープを買って近くのベンチで休んでいる。


「沢山回ったわね〜」

「皆さんに似合う服も買えましたね〜」

「お揃いのストラップもな」


 クローバーの形をしていて、葉の色がそれぞれ違うものを選んだ。

 怜が青、忍が赤、私が黄となっている。


「お揃い嬉しいです〜」

「私もよ」


 この二人を見ているとなごむな。

 そう思って見ていると


「ん?クレープ食べる?」


 と言って、怜がくれた。


「いいのか?では、私のもどうぞ」


 私は怜に自分の持っていたクレープを渡した。


「ありがとう。ん、美味しいわ」

「こちらこそありがとう」


 一口もらったあとに返しあった。

 忍が見ていたので


「忍もいるか?」


 と聞く。


「ほしいです〜」


 と言ったので、忍とも交換して食べた。


「ふふっ、お友達といるとこんなに楽しいんですね〜知らなかったです」

「そうなのね。これからもいっぱい仲良くしましょうね」

「うむ、そうしよう」


 こんな日が続いてほしい。

 できることなら、夢でみたことなんて起きないでほしい。

 そう思っていたのだ。

 話をしている時まではな……

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