トラウマ

「はっ、こっちにだって能力があんだよ!悪夢映像トラウマ・ムービー。お前を悪夢で動けなくしてやるぜ‼︎」


 西野の頭上にモニターのようなものが出てきて、映像が映された。

 それは、子供達を守ろうとした大人達が襲撃されていくというものだった。


「なんで、なんで今更こんなの思い出さなきゃなんです?もう二度と思い出したくないですよ。村が壊された日のことなんて……」


 彼女は涙を流し、座り込んでしまった。


「やっぱトラウマを見せられた奴は弱いなあ!どっこもガラ空きだぜ?」


 奴は反撃しようとした。

 けれどそれは


「おいおい隙を狙うなんて卑怯なんじゃねーの?」


 千石によって防がれた。


「ちっ、仲間がいたのかよ!厄介だし、お前も同じ目にあわせてやる!」

「っ、千石!」


 私は彼を庇った。

 戦力が潰されたら困るからだ。


(それに、私のトラウマはきっと…)


 頭上にモニターが出て映像が流れた。

 それは、私が思っていた通り昨日の出来事だった。

 私を心配する声がする。


「そんな…話ってもしかして、このことだったの?」

「お袋さん達を…苦しくないか?」

「話そうとしていたのは、このことだ。それと今はもう苦しくない」


 二人は安心したみたいだ。

 私達のそんな様子を見て、虎鉄全が口を挟んだ。


「なんでお前は、他の奴みてえに倒れねえんだよ!嫌じゃねえのかよ‼︎」

「私は、私のトラウマを抱えて生きると決めたのだ。後悔したってどうにもならないのでな」


 小さな声で「後悔したってどうにもならない…」と西野が呟いているのが聞こえてきた。

 泣いていた彼女が立ち上がる。


「すみません、ここからは私達がどうにかしますね。類さん、お願いです」


 眼鏡をかけてそう言った。


「ったく、人使いが荒いんだっつの!赤光銃弾レッドライトバレット‼︎」


 そして、彼女は赤く染まった銃弾を周りに何発も撃った。


「殺しはしねえから安心しろよ」


 と言いながら。


「あの技、赤司の⁈」

「赤司とは作戦を考えていたという、あの?」

「おう!銃もあいつのだ!」


 西野の前世が赤司ということなのかもしれない。

 私は勝手にそう納得する。


 その時、戦っているところから声がした。


「くそっ、俺様はもう負けたくねえんだよ!あいつに、倉田慶喜に初めて敗北の味を味わされた時からな‼︎」

「お前、あの方と戦った奴かよ!じゃあ七代目がどこにおられるか分かるか⁈」

「分かるわけねーだろうがよ!」

「ちっ、そうかよ。じゃあもう終わりだ」


 銃弾を虎鉄全の周りに放ち、逃げられないようにし、クナイで固定した。


『凛ちゃん、今だよ』


 私は虎鉄全に近づき肩に触って詠唱した。

 唱え終わると姿が戻っていた。

(やはり、飲み込まれていたのだな)


「そんなん出来んだな」

「君は西野の前世なのか?」

「あぁ。あいつとは眼鏡かけたら意識交代するってなってる」

「そうなのだな」


 二人で話していると、千石が来た。


「なぁ、お前って赤司だろ⁈」

「急になんだよ。確かに俺は赤司類あかしるいだけど。って、その喋り方で俺を呼ぶの一人しかいねえし、お前新井だろ!」

「おう!久しぶりだな〜赤司!」


 千石と赤司は互いに懐かしがっていた。


「私は晴間千緒だった。よろしく」


 すると急に西野の姿のまま、赤司が頭を下げた。


「七代目を守りきれなくてすまなかった。あの方が亡くなったのは、俺を庇ったせいだ…本当にすまない」


(そうだったのか…)


 ー千緒、これは君が応えてくれ。


「『私は誰のせいでもないと思ってるし、彼が大切な人を守る性格なのは知ってたから謝らないでほしいな』」

「わかった。が、今世で七代目を見つけだしたら、必ず守り抜くと誓う」

「では作戦を考える時など頼むぞ」

「あぁ、任せてくれ」


 近くで千石が嬉しそうに

「また一緒に戦えんだな!」と言った。


「暴走しやがったらタダじゃおかねえからな?覚えとけよ?」


 彼は千石に圧をかけた。


「わりいな!もうしねえからよ〜ヨシを絶対守ろうな」

「当たり前だろうが。じゃ、俺はあいつと代わるから。またな」


 そう言って眼鏡を外した。

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