最悪
『なんだかすごく、すごく嫌な予感がする…』
—なっ⁈
私は母が言っていた言葉を思い出した。
家の中に凶悪犯が入ったりするみたいで物騒だ、と言っていた。
何故今これを思い出してしまうんだ…
(母さん、父さん!)
私は家に着き戸を開けた。
その瞬間、血の匂いがした。
嫌な予感を抱えたままリビングに行き灯りをつける。
そこには信じたくない光景が広がっていた。
頭から出血している母さんと父さんがいたのだ。
どちらも、もう助からない…
「ゔああああああああああああああ!」
私はその事実に耐えきれずしゃがみこんだ。
泣いた、泣きじゃくった。
この消失感を埋めるために。
ふと、机に目がいった。
一枚の紙が置いてあるようだったので、立ち上がって書いてある内容を読んだ。
[やっほー!晴間千緒ちゃん!今は笠野凛ちゃんだっけ?まっ、どっちでもいっか〜これを読んでるってことは君の両親はもういないってことかな?君と、君の親に恨みはないんだけどさ、慶喜くんへの宣戦布告ってことで彼の好きだった君を利用させてもらったよ‼︎ごめんね〜]
「なん、だと?そんなことで、そんな自分勝手な理由で私の大切な人たちを…」
『凛ちゃん、悲しいのも苦しいのもあると思う。でも、でもね、自分を傷つけちゃだめだよ。手を開けて?握りすぎて傷ついちゃってるから』
—私がもう少し早く帰っていたらこんなことにならなかったかもしれないんだ!
『自分を責めたって起こってしまったことは変わらない。その事実をどう受け止めるか、だよ』
—大事な人を失った気持ちは分からないだろう!
『分かるよ。私だって守りたくても、守らせてくれないまま、失ってしまった人がいたんだもの』
そうだった。彼女も大事な想い人を…
それなのに、酷い言葉をぶつけてしまった。
—すまない。千緒の気持ちも考えず言いすぎた…
『ううん、気が動転しちゃったんだよね?大丈夫だよ!それにしても、手紙を書いた人はヨシくんを狙ってるってことかな?』
—だろうな。そして、そのために千緒を利用した。
『私のせいで凛ちゃんの両親が…』
彼女は俯いて泣きそうになった。
—千緒のせいではない。君も言っていたではないか、起こったことは変わらない。それなら誰かを責めるものでもないだろう。だが、両親を殺した奴は許さないがな。
『そうだね。それに、ヨシくんを傷つけようとしてるみたいだし気をつけなくっちゃ!』
—うむ、とりあえず母さん達のことを警察に連絡しなければな。
『もう助からない、からね…』
私は連絡をしようとした。
その時、突然暗闇になり声がした。
[ごめんねー!警察に渡されちゃうとボクの手がかりが出ちゃうかもしれないから引き取らせてもらうよ。まったねー!]
その声がしなくなって明るくなる。
両親がいた場所にはなにもなくなっていた。
『さっきのって…』
—おそらく、先程の手紙の男であろうな。姑息な真似をしおって!
『まるで、自分に関わることをなくしてるみたいだね。手紙もなくなってるし』
—うむ。不気味だ…
『うーん、気をつけようにも誰だか分からなくなっちゃったね』
—そうだな。だが、倉田を先に見つけて守れば良い。
『そうだね!もしまた彼が、巻き込みたくないって逃げたとしても、今度は積極的に巻き込まれていくんだから‼︎』
彼女は、ふんすっ、と意気込んでいる。
—その意気だな。さて、私は風呂に入って寝る。明日も学校があるのでな。
『精神的にも疲れちゃったと思うからぐっすり休んでね』
—あぁ、千緒もおやすみ。
私は風呂場に行き、シャワーだけ浴びた。
浴槽に入ると寝てしまいそうな気がしたからな。
いつもなら寝る前に両親に、おやすみを言うのに今日はない。
こういうところでいないことを実感してしまう。
自室に行き布団の中に入った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます