9話 トランプ編終了
ジョーカーとの戦いで少しボロボロになった千石だ。
「おーい!笠野ー無事か?」
「あぁ、千石も怪我とかないか?」
「ないぜ!もしかしてその子が矢桐織だった子か?」
愛川を覗き込むように見ている。
「あっ、はい!ご迷惑おかけしてすみませんでした‼︎あと、その、顔が近いです…」
「おっ、わりぃな〜あと、気にしてないからいいって!強い奴とも戦えたしな!」
愛川の表情が和らいできた。
少し思い詰めているみたいだったからな。
やはり彼の笑顔は、もやもやを流してくれるみたいだな。
「愛川、けじめはついたか?」
「少し、他にも傷つけられた人がいるんですよね?」
「うむ、私の友である怜もだ」
「そうなんですか⁈どこにおられますか?」
私がこの子を救うことができたのは怜のおかげでもある。
自身のエネルギーまで使い果たしてくれた彼女の…
今すぐ行かねば!
私は小走りをして探した。
そして見つけた。
そこには、ぐったりと倒れている彼女がいて慌てて近づいた。
「怜、怜!どうした⁈」
「ん、凛?終わったの?私はただの力の使いすぎなだけだから。何か食べたら治るわ」
「それなら良いのだが。そうだ、紹介しよう。この子が矢桐織の【今】だ」
愛川の方を向いて、手で指し示して言った。
すると、怜は少し驚いた顔をしてから微笑んだ。
「こんなに可愛い子だったのね。貴方も大変だったでしょう?お疲れ様」
彼女は手を伸ばして愛川の頭を優しく撫でた。
「う、うわあああん!そんな優しくしないでくださいー!ご迷惑おかけしたのにー‼︎」
「貴方のせいではないでしょう?気にしないでいいわ」
「うっ、ひっく…あ、ありがとうございます…」
言葉ではああ言っていたが、やはり思い詰めていたのだな。
泣いて気持ちをすっきりすることができれば良い。
そんな時、騒ぎがあったからと様子を見に体育教師の
「お前らー!なにがあった⁈全員無事か⁈」
勢いよく大声を出しながら。
私はこれまでのことを説明する。
「と、色々ありましたが全員無事です」
「そうか!良かった‼︎あとのことは先生がなんとかしておく!」
「なんとかって、できるんですか?」
「あぁ!俺の能力はものを元に戻すことができるからな」
そんなことが可能なのだな。
この場には向いている能力だ。
「では、お願いします」
「任せろ!
みるみるうちに荒れていた景色が戻っていった。
今まで見ていたものが嘘みたいに思える。
凄いな、これは…
『あっ、思い出したよ。この人、
—そうか、確認してみる。
「先生ありがとうございました。一つお聞きしたいのですが、倉田慶喜って知ってますか?」
「もちろんだ!勇気の後輩だったからな!それより何故知っている?まさか、敵対していた組の者か⁈」
先生はいつでも攻撃できるような構えをとっている。
「違います。私は晴間千緒だったので」
先生は構えをとるのをやめた。
「なんだ晴間だったか!疑ってすまんな!」
「いえ、問題ないです。あの、先生に頼みがあるのですが…」
「なんだ?」
「倉田を探すのを協力していただきたいんです」
「うむ引き受けた!が、【今】の姿だけ見て分かるものなのか?」
そうだった。千緒の力があれば私は分かるけれど、先生にはそれがないからな…
『戦闘があったら助けてもらうとかどうかな?』
—そうだな、そうするか。
「ではもし戦いがあった時に力を貸していただけますか?」
「あぁ、いつでも呼んでくれ!それと、今日は大事をとって学校は休みになったからもう帰るんだぞ!」
「ありがとうございます。では、また」
先生はその場を離れようとした。
けれど、後ろで静かに話を聞いていた千石が声をかけ話し始めた。
「先生!このあと時間あるっすか⁈せっかくだし前世で繋がりがあった奴らで話さないっすかね?」
「かまわないが…千石も関わりがあったのか?」
「うす!オレ、新井刀真だったんで‼︎そだ、場所はオレの家の道場でいいっすか?」
「新井だったのか!勇気も話したそうにしておるし行かせてもらおう!だが、少し仕事があるから待ってもらうことになるぞ」
「分かったっす!あっ、住所はここっす!」
彼はメモ帳に書いてからちぎって渡した。
「うむ、またあとでな!」
先生は去っていった。
千石がこちらを向いた。
「笠野も勝手に数に入れたけど良かったか?」
「あぁ、私も行く。そうだ、怜と愛川は疲れているだろうからもう帰るのだぞ。怜は歩けそうにないのなら連れて帰るからな」
私は二人の方を見て言った。
「はい、本当にありがとうございました!力にはなれないかもですが、困ったことがあれば助けにいくので!」
と、愛川が帰った。
「私も、もう帰るわね。でも、立つのが難しいから手を貸してくれる?」
怜がそう言ったので、私は手を差し出した。
彼女は私の手を掴んで、よろけながら立ち上がった。
「ありがとう。ねぇ、このまま歩いてもらってもいい?私の鞄の中に食べ物が入ってるから、そこまでお願いしたいのだけれど…」
「もちろん良い」
そうして私達は怜に案内されながら歩いた。
一歩ずつ彼女に合わせるようにゆっくりと。
「あっ、あったわ」
彼女は鞄の中をごそごそして、パンを取り出し食べた。
「よしっ、これで大丈夫よ。本当にありがとう。それじゃあ、またね」
「あぁ、また明日。気をつけて」
私は控えめに手を振った。
「じゃ、みんな帰ったしオレらも行くか!」
「そうだな」
「じゃあ道場な〜」
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