バカと救世主

「おう、カズト。どうだ歯の痛みは?」

「痛ぇよ。何しに来たんだよ」

「お前が大変そうだからな。見舞いだ。ほい」

「ケン。ナニコレ?」

「知らん。開けて見ればわかるぞ」


(お前な。お見舞い用に買ってきたやつじゃないのか? イタッ!)


「どうした? 顔を歪めて」

「痛いんだよ。マジで」


 僕はズキズキする痛みを堪え、ケンに聞いた。


「これ開けるぞ」

「おう」


 箱を開けると、何やら黒いものやら茶色のものなど、様々な色をしたチョコレートみたいなものがあった。


「チョコレート?」

「ん? そうじゃないか」

「お前さ、歯が痛いって言うのに」

「仕方ないだろ。奪ってきたもんだからな」

「奪ってきた?」

「おう。いつの間にか囲まれていてな、言われたんだよ」


 どうやらケンはチンピラに絡まれたみたいだ。


「ほう」

「それでな『地球人め! 今日でお前ら地球人はこの世界から消えるのだ』って言われたから言い返したんだよ」


 ケンはチンピラではなく、とんでもない連中に囲まれたみたいだ。


「ふーん。何て言ったの?」

「『お前らバカなんか? 俺は地球人じゃなくて日本人だ。見分けもつかないのか』ってな」


(日本人もアメリカ人も地球人なんだよ。ケン)


「それって宇宙人に囲まれたんじゃないの?」

「宇宙人?」

「そう。テレビの陰謀論とかで出てくる、小さい人型グレイって見たこと無い?」

「カズト。今のテレビは白黒じゃないぞ。カラーテレビだ」


(グレイって白黒って意味じゃないんだけれど)


「ごめんカラーだったね。でもケン、囲まれて大変だったでしょ」

「まあな。いつも間にか29.5人に囲まれていたときには驚いたよ」


(29.5の .5 って何? それによくその人数倒してチョコレート奪ってきたな)


「10人とかキリのいい人数じゃないと俺覚えられなかったから良かったよ。ホント」


(キリのいい? あー、四捨五入したら30か)


「ケン。今チョコレート食べられないから食べていいよ?」

「いいのか?」

「うん」

「ちっ。毒味してもらおうと思っていたのに……」


(お前親友に毒見させるってどうなのよ)


「毒は入っていないと思う。だから僕の代わりに食べてよ」

「わかった。じゃあ、青いの貰うぞ」


(初っ端それ行く? この中で1番ヤバい色じゃん)


「こ、これは!」

「ん?」

「グラブジャムンよりも甘く、マリアナ海溝よりも深い味わいだ。隠し味は死海の塩だな」


(イメージがわかない)


「ん? カズト、なんかわからなそうな顔しているな」

「うん、わからない」

「長い文がわからないんだな。頭がいい俺が短くいってやる。チョコレートだ」


(うん。見たまんまだ)


「チョコレートね。わかったありがとう」

「カズト。歯は放っておいといても治らないから、俺がペンチで抜いてやる」


(それはいやだな)


「大丈夫。歯医者を予約した」

「ん? 敗者? 俺その宇宙人とやらに勝ってきたぞ。話聞いてなかったんか?」


(うん。今までの話、記憶を消去するよ)


「そうかもね。ありがとう、時間を作ってお見舞いに来てくれて」

「おう。これから宇宙人とやらの子供と遊ぶ約束しているんだ。カズトまたな」


 こうして僕の親友であるケンは子供達のお守りをするため、部屋を出ていった。


(つづく?)

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