第6話
私は高校2年生になった。
母に似て痩せていたはずの私は、急に太り始めた。
脚が太くなってしまった。
そして、胸も大きくなった。
下着のサイズが合わなくなり、すべて買い直すことになった。
制服も胸がパンパンになり、新しいサイズのものを買った。
急に私の体は女らしくなってしまった。
私は、母のようなスリムな体型のままでいたかった。
しかし、病弱だった母とは違い、私は健康だった。
体が大人っぽくなるのは成長の証。
本来であれば喜ぶべきことなのだろう。
しかし、私は体の変化に戸惑っていた。
男性から声をかけられることが増えていった。
学校では、面識があまりない男子生徒からも告白されることが多くなった。
そんな男子たちを見ていると、父のことが思い出されて嫌になった。
父もこうやって、胸の大きい綾香さんに惹かれていったに違いない。
登下校でも、男性からの視線を浴びた。
電車で痴漢に遭うことも増えてきた。
電車を降りても私は怖かった。
知らない男の人がずっと、家の近くまでつけてきたことがあった。
男の人が怖かった。
姿見に映る自分の姿をまじまじと見てみた。
鏡の中の自分は、まるで綾香さんのように見えた。
私の父を誘惑した綾香さん。
いや、父の方から手を出したのかも知れない。
どちらにせよ、父も綾香さんも、私の母を裏切っていた。
綾香さんのようにはなりたくない。
それなのに、鏡に映る私は……
変わってしまった私の体つきに嫌気がさした。
* * * * *
ある日、とんでもないことが起きた。
おばあちゃんが倒れたのだ。
一命は取り留めたけど、介護が必要になった。
自力で歩いたり食事をしたり排泄をしたりすることができなくなってしまった。
おばあちゃんは施設に入ることになった。
私はおばあちゃんの家で独り暮らしをすることになった。
さすがに、父は心配した。
「美緒、うちで一緒に暮らさないか」
綾香さんも言った。
「美緒ちゃんの気持ち、分からないわけじゃないけど……一緒に暮らさない? 綾斗も待っているのよ」
高2での独り暮らしは、私も自信がなかった。
下校の時、痴漢に遭ったり、変な人に声をかけられたりして、怖い思いをすることも増えてきた。
それに加え、おばあちゃんの介護の問題は大きかった。
やっぱり、父を頼るしかなかった。
悔しかった。
父の力は借りたくない。
そう思っていたのに。
けれど、介護にもお金がかかるし、大学進学も控えている。
やはり、父のもとに帰るしかないのだろうか。
私はすっかり困ってしまった。
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