第17話
20年の月日が流れた。
シムカが老齢になり、俺の目の前で、病床に横たわっている。
「シムカ将軍、長い月日が経ちましたね。この国がミラージュ平和国となり、平和と平等が実現するまで、20年の歳月も必要だったとは思いもしませんでした。」
「カイン大統領、私たちの苦労が報われた瞬間です。この国が一つのまとまりとなり、亜人も人間も平等に尊重される世界が実現するのです。私は幸せです。」
「将軍、あなたの指導と勇気ある行動がこの変革の礎となりました。あなたの努力と犠牲を決して忘れません。」
「苦難の道のりでしたが、私たちは互いに助け合い、困難を乗り越えてきたのです。カイン大統領、あなたが大統領としてこの国を導くと聞いて、私は心から安心しました。」
「将軍、私もまた感謝の念に満たされています。大陸を統一後、この国を平和で民主的な大統領制の国家へと変革することを誓いました。亜人も人間も、全ての国民が平等に扱われ、互いに尊重し合う社会を築くのです。」
「私は心から信じています。カイン、あなたの指導の下で、ミラージュ平和国は真の希望と平和を迎えるでしょう。私の寿命も尽きようとしていますが、この国の未来には期待と希望が溢れています。」
「将軍、私はあなたの功績を後世に伝え続けます。ミラージュ平和国には、あなたの勇気と決断力が刻まれるでしょう。」
「カイン大統領、私の最後の願いは、この国が永遠に平和であり続けることです。あなたが率いるミラージュ平和国が、助け合いと尊重の精神を持ち、世界に良き模範となることを願っています。」
「将軍、約束します。私はこの国の平和と繁栄のために全力を尽くします。あなたの遺産を胸に、ミラージュ王国をより良い未来へと導くでしょう。」
俺達は互いに手を握り、感謝と希望に満ちた空気が広がる。
そして、シムカの手から段々と力が無くなっていった。
シムカは安らかな顔で逝った。
各国の王たちには民主化したミラージュ平和国の議員になってもらった。
各種族の文化を尊重しながら平和な国を作る為の法律をみんなで作り修正していった。
俺はそれからもゼロスやエリック、議員達に助けられとにかく自分ができる限りの事はしてきたつもりだ。
まだまだ先は遠い。
各地で反発する勢力は完全に無くなることは無いのかもしれない。
心とは裏腹に、あっという間に、身体は衰え、考え方も時代についていけなくなる自分自身を感じる。
「ドラス1世、私は老いた身であり、大統領の座を退くことを決めました。私の後継者として、あなたを次の大統領に任命します。」
「カイン大統領、光栄です。私はこの国の未来のために全力を尽くします。」
「私は信じています。あなたは若くして議会で優れたリーダーシップを発揮してきました。この国をより良い未来へと導いてくれることを期待しています。」
「お言葉に感謝いたします。カイン大統領、私はあなたの足跡をたどり、ミラージュ王国を発展させるため、全力を尽くします。」
「そして、私はドラス1世にお願いがあります。私の退任後、龍神の洞窟を訪れてさせていただきたいのです。」
「龍神の洞窟ですか?それは伝説の場所ですね。どのような目的で訪れるのですか?」
「龍神の洞窟には、一つだけ願いが叶う伝承があるといいます。かつて私はその祭壇でこの世界の平和を願うつもりでいました。ですが今は、年老いた今は、ただ一つある人との再会を願いたいのです。あなたの親族でもあるレイラ姫との再会を」
「私は喜んでその願いを引き受けましょう。あなたはこの大陸の平和の為に存分に貢献しました。きっとレイラ姫もあなたと再開しあなたのこの偉業を聞きたい事でしょう」
「ありがとう、ドラス1世。私は心から感謝しています。レイラ姫との再会が果たされることを願っています。彼女はこの国の未来において重要な存在です。」
「カイン大統領、私は約束します。龍神の洞窟での祈りを通じて、レイラ姫との再会を願い、この国の未来のために力を尽くします。」
カインの顔には、深い感慨と希望が宿っていた。彼は長い間、レイラ姫との再会を心の奥底で願い続けてきた。彼女は彼にとって特別な存在であり、彼女とともに未来を築くことが彼の夢だった。
ドラス1世はカインの意志と希望を胸に、大統領の道を歩み始める覚悟を決めた。彼はレイラ姫との再会を果たすために、龍神の洞窟へと旅立つ準備を進めることになるだろう。
数週間後、ドラス1世は龍神の洞窟の入り口に立っていた。彼は心を静め、カインの願いを胸に、祈りと希望を込めて足を踏み入れた。
洞窟の奥深くに進むにつれて、神秘的な雰囲気が漂っていた。光の射し込む場所や、壁に刻まれた古代の文字が彼を導いていく。
やがて、彼は洞窟の最奥にたどり着いた。そこには高い天井と広大な空間が広がっていた。そして、祭壇がそびえ立っていた。
ドラス1世は祭壇に近づき、膝をついて祈りを捧げた。「龍神よ、私はミラージュ王国の未来のために祈ります。カイン大統領の願いを叶え、彼とレイラ姫の再会を実現してください。私はこの国の平和と繁栄のために力を尽くします。」
その瞬間、洞窟内に不思議な光が輝き始めた。神秘的な力がドラス1世を包み込んでいくようだった。
そして、突然、レイラ姫の姿が現れた。彼女は美しく輝き、優雅な笑顔でドラス1世を迎えた。
レイラ姫:「ドラス1世、私はカインの願いを聞きました。そして、あなたの献身と努力を知っています。私もまた、この国の未来のために力を尽くします。一緒にミラージュ王国を築き上げましょう。」
ドラス1世は感動の涙を流しながら、レイラ姫に深く頭を下げた。「レイラ姫、私は光栄です。カインの夢を叶えるため、そしてこの国の未来のために全力を尽くします。」
人々の絆とドラスのリーダーシップによって、ミラージュ王国は新たな時代の幕開けを迎えることになるのだろう。
ドラスは、人々の声に耳を傾けながら、公正で包括的な政策を実行し、教育、経済、環境、社会の各分野での改革を推進していくだろう。そして、人々の幸福と福祉を最優先に考え、国内外の課題に果敢に取り組むことで、ミラージュ平和国をより強く、持続可能な国家へと導くことになるだろう。
「ありがとう、ドラス1世。私は心から感謝しています」
「カイン大統領、私は約束します。この国の未来のために力を尽くします。」
俺の心には、深い感慨と希望が宿っていた。
長い間、レイラ姫との再会を心の奥底で願い続けてきた。
結局ずっと働き続けて戦い続けて独身のまま過ごしてきた。
彼女は俺にとって特別な存在であり、彼女とともに未来を築くことが、かつての俺の夢だった。
煌めくような彼女の気高さが忘れられない。
俺はレイラ姫との再会を果たすために、龍神の洞窟へと旅立つ準備を進めるた。
数週間後、俺は龍神の洞窟の入り口に立っていた。
心を静め、願いを胸に、祈りと希望を込めて足を踏み入れた。
洞窟の奥深くに進むにつれて、神秘的な雰囲気が漂っていた。
光の射し込む場所や、壁に刻まれた古代の文字が俺を導いていく。
やがて、俺は洞窟の最奥にたどり着いた。
そこには高い天井と広大な空間が広がっていた。
そして、祭壇がそびえ立っていた。
秘宝ドラゴンオーブを祭壇に捧げ、祭壇に近づき、膝をついて祈りを捧げた。
「龍神よ、私は祈ります。願いを叶え、レイラ姫との再会を実現してください」
しかし、祭壇は何の反応も示さなかった。
俺は絶望した。
レイラに二度と会えない。
何十年も俺は戦い、もがき、進んできた。
世界を平和にするという目的と、レイラに会いたい想いとの葛藤は常にあった。
しかし、あの煌めきを忘れられなかった。
夢で出会って、感動に打ち震え、涙を流し喜び。
目覚めて夢だと知って、絶望し泣いた。
何度もそんな朝を過ごしてきた。
「俺はレイラに会いたい。レイラにもう一度愛を告げたい。レイラともう一度幸せになりたい」
私はカイン大統領の願いに感動しました。彼は自分の今生の生命を捨ててでも、レイラ姫との再会を望んでいました。彼は龍神の祭壇でその願いを伝えました。
「私はレイラ姫に会いたい。私はレイラ姫にもう一度愛を告げたい。私はレイラ姫ともう一度幸せになりたい」
俺は祭壇に泣き崩れ慟哭した。
なんども龍神の祭壇で涙ながらに言った。
レイラへの愛を語り想いを語った。
そして、次の瞬間、洞窟内に不思議な光が輝き始めた。
神秘的な力が俺を包み込んでいくようだった。
「我はそなたの願いを聞きました。そなたの心に問いかけます。そなたは自らの今生の生命を捨ててでも、レイラとやらの再会を望むのか?」
龍神の声が、心に響いた。
レイラのいない今生にもはや未練はなかった。
「はい、望みます。私はレイラとの再会がこの世で一番欲しいものです。私はレイラとの再会が一番大切なのです」
「では、そなたの願いを叶えよう」
「ありがとうございます。感謝します」
龍神の声に礼を言った。
俺の身体から力が抜けていく。
視界が真っ暗になっていく。
命が尽きるのを感じる。
老いて細くなった身体を支えることも出来ず、俺は祭壇の前で横になった。
静かに目を閉じると、今生の戦いや出会い、そして支えてくれた兄弟や部下に思いを馳せた。
ありがとうみんな。
ありがとう…
暴走トラックが道路を猛スピードで突っ切ってくる。
周囲の人々は恐怖に顔を歪め、逃げ惑う中、俺は身動きが取れずに立ち尽くしてしまった。
俺はこの場面を知っていた。
1度目の人生。
そして令和の時代。
日本の高校生カズヤとして過ごした人生の最後の一瞬だ。
この後、俺はあのトラックに突っ込まれて戦国の時代に転生した。
相変わらず俺の身体は身動きができない。
ところがその時、突如として横から飛び込んできた誰かによって俺の身体は抱えられ、危機から救われる。
その誰かは黒髪と黒目を持つ大柄な女子高生だった。
彼女の力強い腕に包まれ、俺は身を守られる。
風の音が響く中、彼女は俺を身体の前に抱え込み、俊敏な足取りでトラックを避けた。
彼女の黒髪は風になびき、汗ばんだ顔には決意と勇気が宿っているように見えた。
彼女の強靭な筋肉が感じられる腕は、まるで守護者のように安心感を与えてくれる。
俺は彼女の腕の中で、荒い息づかいと共に心臓の鼓動を感じた。
時間がゆっくりと流れる中、彼女は巧みな身のこなしでトラックの進路を避け、安全な場所へと俺を連れて行ってくれた。
私たちは安堵のため息をつきながら、道路脇の安全地帯に立ち止まった。
彼女は俺を優しく地面に降ろし、黒い目で深く見つめた。
「大丈夫?怪我はない?」
彼女の声は少し荒れていたが、その優しさと心配りが伝わってきた。
俺は頷きながら、溢れる感謝の言葉を見つけることができなかった。
「ありがとう…助かったよ。君のおかげで…」
彼女は微笑みながら頷き、言葉を返さなかった。
彼女の行動が全てを物語っていた。
彼女はただ、助けるために飛び込んできてくれたのだ。
その瞬間、彼女はまるで勇者のように見えた。
黒髪黒目の大柄な女子高生が、俺の命を守り、救ってくれた。
その姿は忘れることのできない一瞬となり、俺の心に深く刻まれた。
彼女の視線と俺の視線が交錯する。
「おやおや、どうしたんだ?私はすぐに分かったぞ?久しぶりだな」
彼女が、心配そうに声をかけた。
落雷に打たれ、身体中に電気が走ったようだった。
容姿は変わっても、彼女の気高さ煌めき尊さは一切変わってはいなかった。
「レ、レイラ?本当にレイラ?」
彼女の顔を見て驚きと喜びと感動に満ちた声で呼びかけた。
俺はレイラが本当に目の前にいることに信じられなかった。
こんなにすぐに彼女に会えるとも思っていなかった。
彼女が本当に目の前にいることに感謝した。
「ええ、私よ。私はあなたの妻になるのよ。私の愛する人」
レイラは、俺の顔を見て微笑みと愛情と幸せに満ちた声で答えた。
彼女は自分を忘れていないことに安心したようだった。
「ありがとう。ありがとう。ありがとう」
レイラ姫の顔を見て涙ながらに言葉を繰り返した。
「どうして?どうしてそんなにありがとうと言うの?」
「それはね、レイラと再会するために、とてもとても永い時を過ごしてきたんだ。再会するために、龍神の祭壇で願ったんだ」
「本当?本当なの?信じられないってことは禁書を?」
「本当だよ。本当だから信じてくれ。俺はあなたを愛してるから、あなたと一緒にいるから、幸せだから好きだから戦ったんだ泣いたんだ苦しんで、でも好きで愛してて」
訳の分からない言葉しか俺の口からは出てこない。
「わかったわ。わかったから安心して。私もあなたを愛してるから、あなたと一緒にいるわ。ずっとよ。あなたを待っていたの。だってずっと一緒にって約束したじゃない」
彼女の美しい瞳からも涙が溢れいた。
俺達は熱く抱擁し合った。
ずっとずっと…
完
侍転生、第二王子になったけど王も兄も隣国の傀儡になっていた モロモロ @mondaru
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