第16話
「我らがミラージュ王国は、エリオン王国との決戦に臨む。我らは人間とその他の種族が平和に共存することを目指す。我らはカイン王のもとに集い、カイン王の指揮に従う」
シムカ将軍は、自軍の兵士たちに向かって声を張り上げた。
彼は自軍の士気を高めるために、自軍の目的や統率を説いた。
「エリオン王国は、我らを魔王軍と呼び、人間とその他の種族の共存を阻止しようとしている。エリオン王国は、我らの国を異端者の国として糾弾している。エリオン王国は、我らの敵だ」
シムカ将軍は、自軍の兵士たちに向かって声を張り上げた。
自軍の敵意を煽るために、敵軍の悪行や非難を述べた。
「だが、恐れることはない。我らはカイン王のもとに集った者たちだ」
シムカは自軍の絆や信頼を強調するために、自軍の多様性や団結を称えた。
「我らはカイン王に従い、エリオン王国に勝利する。平和な世界を実現して歴史を変える」
シムカ将軍は自軍の目標や意義を示すために、自軍の勝利や理想や影響力を語った。
「万歳!カイン王万歳!ミラージュ王国万歳!」
ミラージュ王国の兵士たちは、将軍の言葉に応えて声を上げた。
ミラージュ王国軍は自分たちの王や国や仲間に誇りを持っていた。
しかし、ゴーラ大平原での戦争は、エリオン王国が優位だった。
長年ゴーラ大平原で戦い続けたエリオン王国軍には地の利があり、数的にもミラージュ王国よりも有利だった。
エリオン王国はミラージュ王国内に押し込み、ゴーラ平原とミラージュ王国の境にあるエレド砦まで押し込んだ。
「これで終わりだ。あと一息で魔王カインを倒せる。あと一息でミラージュ王国を滅ぼせる」
エリオン王国軍からは、自軍の兵士たちに向かって声を張り上げる声が聴こえる。
彼らは自軍が勝利目前だと思っているようだ。
「万歳!イリス教万歳!エリオン王国万歳!」
エリオン王国軍は空気を震わせる大音響で、大将の言葉に応えて声を上げた。
しかし、その時、両脇の急勾配の山岳地帯から突然、獣人部隊が現れた。
獣人部隊は、エリオン王国の軍の側面をついた。
獣人部隊は、俺の命令で、山岳地帯に伏せていた。
作戦どおり急勾配の崖を駆け下り、両脇からエリオン王国の軍を挟撃した。
「な、何だ?獣人どもがどこから来た?これは罠か?」
「くそっ!魔王カインの策略だ!我らは騙された!我らは包囲された!」
「我らはまだ負けていない!イリス教の信者よ、神に祈れ!神に力を乞え!神に勝利を願え!」
「万歳!イリス教万歳!エリオン王国万歳!」
その時を待っていた。
エレド砦からミラージュ王国の軍が出撃した。
ミラージュ王国軍は、エリオン王国の軍の正面を突いた。
人間とその他の種族が協力し、それぞれの得意を活かして戦った。
「これで決まりだ。あと一息でエリオン王国を倒せる。あと一息でミラージュ王国を守れる」
シムカ将軍は、自軍の兵士たちに向かって声を張り上げた。
「万歳!カイン王万歳!ミラージュ王国万歳!」
ミラージュ王国の兵士たちは、将軍の言葉に応えて声を上げた。
彼らは自分たちが歴史的な快挙を成し遂げると思っていた。
三方から攻撃されたエリオン王国軍は、抵抗することもできずに崩壊した。
エリオン王国の兵士たちは、敵軍に殺されるか捕虜になるかした。
エリオン王国の大将は、敵軍に捕らえられた。
「な、なぜだ?我らは神の意志に従っていたはずだ。我らは神の加護を受けていたはずだ。我らは神の勝利を願っていたはずだ」
「お前たちは、神の意志に背いていた。お前たちは、神の加護を失っていた。お前たちは、神の怒りを買っていた」
「どういうことだ?お前は何を知っている?お前は何を言っている?」
エリオン王国の大将は、シムカ将軍に対して疑問を投げかけた。
「それはあの世でよく考えろ」
首が飛ぶと、ミラージュ王国軍からは、勝どきの声が響いた。
エリオン王国の王都まで、俺達の軍は規律正しく進軍した。
急激な進軍は兵站の難しさと略奪などの危険を伴う。
砦を落とし、街を落とし、各地の貴族を従属させていった。
俺達はエリオン王国でも、従属する者は許し、教会を寺子屋として教育を中心のミラージュ的な国家をじわじわと広げていった。
王都に向けての進軍が2年も経とうという時に、我軍の陣幕にドラコニア王朝からの使者が訪れた。
「カイン王、私はドラコニア王朝からの使者ロイスです。我々は降伏する用意があります。先王の時代に、カイン王と我が国の関係は決裂してしまいましたが、現在のドラス1世王は、あなたと大陸の覇者となられたあなたと争うつもりはありません。また、亜人との協和を目指すミラージュ王国の理念は我々竜人にとっても、素晴らしい理念です。これは関係改善に向けたお詫びの品、我が国では長年禁書として秘蔵されてきた『ドラコニア王朝回顧録』です。これは我が国の禁書であり、エリオン王国とドラコニア王朝の結びつきについての伝説が記されています。エリオン王国とドラコニア王朝はかつて一つの国だったのです。人間と竜人が袂を分かつとき、人間はエリオン王国側がドラゴンオーブを持ち去り、王国内にはドラゴンオーブが存在するようになりました。このオーブを我が国の龍神の祭壇に捧げると、願いを叶える力を秘めていると言われているのです。ですが、この事実を公に知られていた当初はエリオン王国と我が国との抗争が絶えず、我が国では、この事実を隠蔽し禁書とし強大なエリオン王国との国交を平和に保ってきました」
俺は使者が語る伝承に耳を傾け、興味津々で回顧録を受け取る。
禁書のページをめくりながら、伝説の詳細を知ることになる。
「なるほど、エリオン王国とドラコニア王朝がかつて一つの国だったのか...。そして、その絆を象徴する秘宝が『ドラゴンオーブ』というのか。伝説によれば、このオーブをドラコニア王朝の龍神の大洞窟の奥地にある祭壇に捧げることで、何でも一つだけ願いが叶うというのだな。これはまさに驚くべき力だ。一国の運命を繋ぐ物語だな...。エリオン王国のドラゴンオーブという力を持つ存在が、王国の内に眠っているというのか。それが龍神の祭壇に捧げられれば、願いが叶うというのか...。この力を手に入れることができれば、ミラージュ王国に大きな希望をもたらすことができるかもしれない。しかし、その道のりは容易ではないだろう。私がエリオン王都に進軍する目的も変わったと言えるな。これから先、この伝承が私の旅にどのような影響を与えるのか、興味深い。使者よ、我々は降伏の条件を受け入れる。しかし、その代わりに私はエリオン王国の平定後は、龍神の祭壇があるという龍神の大洞窟に入れる権利を要求する。そして、この伝承に関する情報を広めることを許してほしい。エリオン王国とドラコニア王朝の絆を再結ぶためにも、この物語を世に知らしめる必要があるのだ。」
「かしこまりました。我々ドラコニア王朝は、かつてエリオン王国と共に栄光を分かち合っていました。しかし、何らかの理由により人間と竜人は袂を分かち、二つの王国に分かれることとなりました。その際、エリオンドラゴンオーブを持ち去ったのはエリオン王国であり、私たちは密かにその力を求め続けてきたのです。伝承の中には、龍神の力と人間の手によって創り出されたこの世の調和と繁栄の時代が描かれています。しかし、竜人と人間の関係が崩れ、二つの王国が生まれた後は、この力を取り戻そうとする者たちが多く現れました。」
「私もその一人となるつもりだ。エリオン王国とドラコニア王朝の絆を再結び、この世に調和と繁栄をもたらすのだ。使者よ、我々はドラコニア王朝の降伏を受け入れる。その代わりに、私たちは二つの王国の再統一と平和な共存を目指すつもりだ」
「私たちドラコニア王朝も、再び一つの国として共に生きることを願っています」
「共に歩み、願いを叶える力を取り戻すために、私たちは努力し続けましょう。そして、この伝説の真実を広め、二つの王国の結びつきを再確認しましょう。」
そして、6年の月日をかけて、俺達の軍はついにエリオン王都の王城を囲む最終決戦の時を迎えていた。
俺は、王都の防壁を囲むミラージュ軍から一人王城に向かって声高らかに叫んだ。
そして王城の城壁の上で立つ、エリオン3世に語りかけた。
「エリオン3世よ、この戦いはもはや続ける意味はない。私たちの戦いは、エリオン王国とドラコニア王朝の結びつきを取り戻すためのものだった。秘宝ドラゴンオーブを渡せばそなたらの命は保証しよう。しかし断るならば、私たちはその目的を果たすために、最後の手段を選ばざるを得ない」
「カイン王よ、お前は何を求めるのか?我が国の最高の秘宝、ドラゴンオーブを持ち出すというのか?」
「そう、エリオン王国の秘宝であるドラゴンオーブを我が手に渡すことを求める。しかし、それと引き換えに、エリオン王国の平和を保証する」
「ドラゴンオーブは我が国の至宝だ。なぜそれを手放す必要があると言うのか?」
「このドラゴンオーブは、かつてエリオン王国とドラコニア王朝が一つの国だった時代に、互いの絆を象徴するものだった。私たちはその絆を再結び、二つの王国が共に生きる道を模索するのだ。そのためには、ドラゴンオーブを手に入れなければならない。私たちの願いはただひとつ、二つの王国の再統一と平和な共存なのだ。」
「...私も戦いに疲れた。一つの国として共に生きる道を選ぶのならば、ドラゴンオーブを譲ろう。しかし、その代わりに、エリオン王国の安全と私たちの民の命を保証してくれ。」
「もちろんだ。和睦の使者を送り、エリオン王国の安全を保証しよう。私たちがドラゴンオーブを手に入れると同時に、エリオン王国とドラコニア王朝のそれぞれ時代は終わり、二つの王国の結びつきが再び始まるのだ。」
「約束だな、カイン。使者が私のもとに来るまで、私たちは戦いを中断しよう。そして、約束の履行を待つこととしよう。」
「私もその約束を守る。二つの王国の再統一と平和な共存のために、私たちは共に歩む道を選ぶのだ。」
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