第10話

俺はエリックの笑顔に安心した。

彼はまだ幼いが、強い心を持っている。

は私の大切な弟だ。


俺は大広間の扉に向かって歩いた。

扉の向こうには、王城の兵士たちや護衛たちが待ち構えているだろう。

彼らはルシウスに忠誠を誓っているか、あるいは彼に恐れて従っているかのどちらかだ。

俺は彼らに対しても容赦しないつもりだ。


俺は王城を制圧し、ミラージュ王国を統一する。

そして、アルベルト帝国との戦争に備える。

それが俺の目的だ。


俺は扉を開けた。

兵士たちや護衛たちが驚いた顔でこちらを見た。


「カイン王子、エリック王子、お二人とも無事で何よりです。」


一人の護衛が声をかけてきた。

彼は私に親しげに微笑んだ。

彼は私の父であるミラージュ三世王に仕えていた古参の者だった。

彼は俺やエリックに対しても忠実で優しかった。


「えっと……」


「ハインリヒです、カイン王子」


「ハインリヒ……そうだ、覚えているよ」


「私はミラージュ三世王に敬愛と忠誠を誓っております」


「それなら、今ここで立っている理由を教えてくれ」


俺は彼に問いただした。


「カイン王子、私はあなたとエリック王子を助けるためにここに来ました」


彼は真剣な表情で言った。


「助ける?」


私は疑問に思った。


「はい、カイン王子。あなたとエリック王子はルシウス王子に降伏するつもりではありませんでしたか?」


彼は尋ねた。


「降伏?何を言ってるんだ?」


私は怒った。


「カイン王子、ルシウス王子は今やミラージュ四世王です。あなたとエリック王子は反乱軍のリーダーとして国を乱した罪人です。ルシウス王子はあなたとエリック王子に対して慈悲深くも許しを与えようとしておりましたが、あなたとエリック王子はその恩恵を拒否し、ルシウス派閥の貴族たちを殺害しました。これではもう許される余地がありません。カイン王子、エリック王子、あなた方は死刑です。」


彼は厳しい口調で言った。


「死刑?」


エリックが驚いた声で言った。


「ハインリヒ……お前は何を言ってるんだ?」


私も呆れた声で言った。


「カイン王子、これが真実です。ルシウス王子は父上を殺したのではありません。父上は病気で亡くなりました。ルシウス王子は父上の遺言に従って王位を継ぎました。ルシウス王子はアルベルト帝国との同盟を結び、国の安全と繁栄を守ろうとしています。ルシウス王子はイリス教の教皇からも支持を受けています。ルシウス王子は正義の王です。」


彼は熱心に説明した。


「お前は嘘つきだ!」


私は怒鳴った。


「父上はルシウスに殺されたんだ!私はそれを目撃した者から聞いたんだ!ルシウスは帝国の傀儡だ!国を売り渡したんだ!教皇はルシウスを操っていたんだ!ルシウスも教皇も悪党だ!」


私は真実を叫んだ。


「カイン王子、あなたは錯乱しています。目撃したのは幻影魔法で作られた偽物です。あなたが信じているのは反乱軍の嘘です。あなたが主張するのは異端です。カイン王子、あなたは幻影魔法などの禁断の魔法を使っています。あなたは魔王です。」


彼は冷静に言った。


「魔王?」


エリックが恐怖に震えた声で言った。


「ハインリヒ……お前は本当に私たちを助けるつもりでここに来たのか?」


俺は彼に問いかけた。


「はい、カイン王子。私はあなたとエリック王子を助けるつもりでここに来ました。」


彼は真摯に答えた。


「それなら、どうやって助けるつもりなんだ?」


私は彼に尋ねた。


「カイン王子、エリック王子、私はあなた方に死んでいただくことで助けるつもりです。」


彼は淡々と言った。


「死ぬ?」


エリックが呆然とした声で言った。


「カイン王子、エリック王子、私はあなた方に死んでいただくことで、あなた方の罪を清算し、あなた方の魂を救うつもりです。私はあなた方に対して慈悲を施すつもりです。私はあなた方に対して愛を示すつもりです。」


彼は優しく微笑んだ。


そして、彼は剣を抜いて俺たちに向かって突進してきた。


俺はハインリヒの剣をかわした。

彼は俺達に対して慈悲や愛を持っていると言っていたが、その目は冷たく殺意に満ちていた。

彼は俺を魔王と呼んだ。

異端者と罪人と言った。


彼は俺達に対して助けるつもりでここに来たと言った。


しかし、彼は敵だった。

彼はルシウスの嘘に騙されていた。

アルベルト帝国の傀儡になってイリス教の教皇の操り人形になっていた。

彼は俺達を殺すつもりで襲ってきた。


俺は水魔法でハインリヒの剣を凍らせ、それを砕いた。

ハインリヒは驚いて後ずさった。

俺は幻影魔法で自分の分身を作りその隙にハインリヒの背後に回った。

そして剣でハインリヒの首を切り落とした。


ハインリヒの首が地面に転がった。

彼の目には驚きと恐怖と悲しみが浮かんでいた。


「ごめ……」


彼の口から最後の言葉が漏れた。


「ハインリヒ……さようなら……」


俺も最後の言葉を告げた。


そして、俺は涙を流した。


周囲の兵たちはその様子をただ呆然と見ていた。


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