第7話
俺は傍らに立つエリックに言った。
この2年で見違えるほど逞しくなった弟からは、既に少年の気配は消え、戦士としての気配を放ち始めていた。
俺もエリックもレベル90を超え、魔の森の魔物でも軽く打ち倒す事が出来るようになった。
今日は北部の平定を記念してささやかながらパーティーを行っている。
「エリック、この2年間の戦いの果てに、ついに俺達は北部の暴れ者たちを征伐した。領内の巣窟は一つ残らず打ち破られ、我々の剣と魔法がその恐ろしい存在を打ち砕いたんだ」
エリックは誇らしげな顔で俺の話を聴いている。
「また遠く領外から暴れ者の降伏の使者が現れたよね。この次は領の外へと暴れ者達の討伐に向かうつもりだったよね。奴らは兄さんの勇気と力に感服し、自らの生命を賭けぬく降伏を申し出たのさ。僕達は彼らを温かく迎え入れ、かつての敵を友として受け容れた。新たな絆の始まりが彼らを待っていることを願ってやまないよ」
俺は、戦いの日々、そして人間だけでなく、エルフやドワーフの暴れ者達が俺達に降伏してきた日々を思い出す。
俺は彼らを受け入れ、芋の栽培をさせ、食事を与え、教育を与えた。
「兄さん。最近は、征服された集落には再び生命と活気が戻ってきたよ。降伏した者たちは自らの新たな故郷を手に入れ、家族と共に再出発することができたんだ。僕達は彼らに教育や技術の支援を提供し、彼らの生活を豊かにする手助けをしたんだよね」
教育は、隣人から学べ。エルフもドワーフも人間も無い。それぞれに得意な事がある。その得意を教え合い。お互いを尊敬し、切磋琢磨し、友人とせよ。
それだけだ。
あとはお互いがお互いに剣や魔法、鍛冶や農業、様々な事を教えあった。
そういう場と時間を必ず集落の中に設けさせた。
「そうだな。さらに、俺達は北部の魔の森で見つけた大きな芋の栽培にも取り組んだのさ。これは魔力草と同じく、魔力を含んだ芋だった。我々は北部の肥沃な土地を使って、精力的に芋の栽培を推し進めた。広大な畑が広がり、芋畑は陽光の下で栄えたんだ。」
北部の海岸線沿いの暴れ者どもを一掃することによって、小さな漁村での生活が安定してきた。
また、暴れ者だけでなく、北部では俺達が各地へ移動する中で目につく魔物達も全て討伐していった。魔物も滅多に見なくなり、農民も命の危険も少なく安心して農作業が出来る地へと変わった。
また、海岸線が開放されて、海路で食糧難が続くドラコニア王朝との交易をレイラ姫との文通を通して始めることが出来た。
北部の荒廃した小さな漁村の人々に水竜の守る船を購入する事ができた。
「あの芋にはミラージュ芋と名づけた。その美しい外観と驚くべき魔力を持っていたからな。芋を食べると疲労が癒され、体力が回復し、魔力が満たされる。人々はその恩恵を知り、ミラージュ芋が北部の名産品として広まっていったのさ。北部の市場には、ミラージュ芋を求める人々で溢れかえった。王国内外からの注文が殺到し、我々の努力が実を結んだ瞬間さ。ミラージュ芋の売り上げは北部の経済を潤し、人々の生活水準を向上させた。かつて貧しく荒れ果てた地域は、今では繁栄と平和の象徴となりつつある」
「カイン、エリック、私たちは北部を救ったと言われているが、実際には君達2人に救われたと感じるよ」
シムカ伯爵がそう言って、感慨深げに言った。
「どういう意味だ、シムカ伯爵」
俺はそう言って、尋ねた。
「君達が北部に来る前は、王国の中でも孤立していた。王国は帝国の傀儡政権になってしまい、王族や貴族も帝国の圧力に屈していた。私たちは帝国に反対する者として、迫害されていたのだ」
シムカ伯爵がそう言って、悲しげに言った。
「そうだな。私たちも同じだった。私たちは王族としての誇りを持っていたが、王国は私たちを見捨てていた。私たちは北部に追放されたんだ思っていた。しかし、北部に来てからは、すべてが変わった。北部の人々は私たちを温かく迎えてくれた。彼らは私たちを家族や友人や恋人として扱ってくれた。彼らは私たちに希望や夢や幸せを与えてくれた」
エリックがシムカ伯爵に同意して言った。
「本当だな。北部は私たちに本当の故郷を与えてくれた。私は北部で初めて愛する人と文通や交易を行い親交を深めることが出来た。レイラ姫だ。彼女はドラコニア王朝の王女でありながら、私を交易で支援し文通では心の支えになってくれた素晴らしい人だ」
俺はそう言って、恋心を吐露した。
「俺もだよ兄さん。俺は北部で初めて親友に出会った。アルフレッドだ。彼は元は暴れ者だったかもしれない、でも今はエルフの戦士でありながら、私と剣と魔法を教え合う仲間だ親友だ」
エリックもそう言って、友情を語った。
「王族の方々、私たちはあなた達に感謝しています。あなた達は私達の領主でありながら、私達の兄弟です。あなた達は私達に尊厳と自由を与えてくれました」
ゼロス子爵がそう言って、敬意を表した。
「ゼロス子爵、ありがとう。でも、感謝するのはこちらの方だ。あなたは私達の臣下でありながら、私達の友人です。あなたは私達に忠誠と協力を与えてくれました」
俺はそう言って、礼を言った。
「カイン、エリック、シムカ伯爵、ゼロス子爵、皆さん」
その時、マリエッタ妃が会場へ入ってきて、我々に声をかけてきた。
「母上、どうしたんですか?」
俺はそう言って、尋ねた。
「皆さんにお知らせがあります。皆さん。私たちは危機に瀕しています。父エレン公爵からの使者が来ました。彼は私に恐ろしい話をしました」
マリエッタ妃がそう言って、緊張した様子で声をかけた。
「母上、どうしたんですか」
俺はそう言って、尋ねた。
「それは王国の内乱に関する話です。王国は帝国の傀儡政権になってしまいましたが、その中でも帝国に忠実な貴族たちがいます。彼らはルシウス派と呼ばれています」
マリエッタ妃がそう言って、説明した。
「ルシウス派か。聞いたことがあるぞ。彼らは帝国の圧力に屈せずに抵抗する者たちを迫害しているんだろう」
エリックがそう言って、不快に言った。
「そうです。ルシウス派は帝国の意のままに動いています。そして、彼らは今、北部討伐軍の準備をしているというのです」
マリエッタ妃がそう言って、衝撃的な事実を告げた。
「北部討伐軍?何だよそれ」
俺はそう言って、驚いた。
「北部討伐軍とは、ルシウス派が率いる王国の軍隊です。彼らは北部を反逆者の巣窟と見なしています。彼らは北部を征服しようと企んでいます」
マリエッタ妃がそう言って、続けた。
「それは信じられないですね。私たちは北部を救ったと言われています。私たちは北部と王国との和解を望んでいます。私たちは北部と王国との絆を築きたかったのです」
エリックはそう言って、悲しげに言った。
「しかし、ルシウス派は私たちのことを敵視しています。彼らは私たちを裏切り者や反逆者と呼んでいます。彼らは私たちを殺すつもりです」
マリエッタ妃がそう言って、警告した。
「それは許せないですね。ルシウス派は我々の敵です。我々はルシウス派に対抗しなければなりません」
シムカ伯爵がそう言って、決意した。
「そうだな。我々はルシウス派に立ち向かわなければならない」
ゼロス子爵もそう言って、同意した。
「母上、ルシウス派の規模や装備はどれくらいなんですか」
俺はそう言って、質問した。
「使者によると、ルシウス派は数万人の兵士を集めています。そして、彼らは帝国から最新の兵器を受け取っています。空中艇や自動人形などです」
マリエッタ妃がそう言って、答えた。
「空中艇や自動人形?それは強力な兵器だな。我々はそれに対抗できるのか」
エリックがそう言って、不安げに言った。
「カイン、エリック。私たちは北部を守るために戦わなければなりません。私たちはミラージュ王族です。私たちは北部の王族です」
マリエッタ妃がそう言って、宣言した。
「ミラージュ王族万歳!」
俺たちは皆でそう叫んだ。
ルシウスの支配を打ち破り、ミラージュ王国を取り戻すために、我々は北部討伐軍に立ち向かう覚悟を持っていた。
「兄さん。これが最後の戦いだ。私たちは一緒に戦おう」
エリックがそう言って、俺に握手を求めた。
「ああ、弟よ。私たちは一緒に戦おう」
俺はそう言って、エリックと握手した。
「王族の方々、私たちもお手伝いします。私たちは王族の方々の力になります」
シムカ伯爵やゼロス子爵もそう言って、俺たちに協力した。
「母上、どうか安心してください。私たちは必ず勝ちます」
俺はそう言って、マリエッタ妃に約束した。
「息子達、どうか気をつけてください。私はあなた達を勝利を信じています」
マリエッタ妃はそう言った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます