第5話
僻地と言われる北部に向かう途中、俺たちは何度も魔物の襲撃に遭った。
魔物といってもレベルの低いゴブリンなどが多かった。
魔物は魔の森から出てきたものや、海から上がってきたものなど様々だったが、俺たちはゴルディアとモーフィアの力でなんとか撃退した。
俺もエリックも、少しづつ魔物を遠距離から魔法で倒してレベルを上げた。
主に水の刃を飛ばすウォーターカッターの魔法が役立った。
ゴブリンといえども首を切り離せば一撃で倒せた。
母親のマリエッタ妃は、元々は王都の貴族の娘だったが、その美しさを王に見初められて第二妃になったという経歴を持つ。
彼女は魔力はないが、本当に美しくて優しい人だった。
そんな彼女の顔にも披露の色がかなり出ていた。
俺は母親に似て、金髪碧眼で、エリックは父親に似て、黒髪紫眼だった。
俺たちは北部に着くまでに約一ヶ月かかった。
北部への左遷は俺達にとって悪い事ばかりではなかった。
魔物の跋扈するこの地では、最前線で戦ったわけでもない
俺とエリックも充分にレベル上げが出来た。
カイン・ミラージュ
レベル 10
剣術 B/S
水魔法 C/A
幻影魔法 C/A
経験値補正 特大
体力回復 特大 気力回復 特大 魔力回復 特大
エリック・ミラージュ
レベル 10
剣術 C/A
水魔法 D/S
幻影魔法 D/A
経験値補正 特大
体力回復 大 気力回復 大 魔力回復 大
北部の領地は、王都から遠く離れている上に、道も悪くて思うように馬車で行けなかったからだ。なんども泥濘にはまったりした。モーフィアの土魔法が無ければ到底たどり着かなかっただろう。
北部に着いた時、俺たちはシムカ伯爵の屋敷に迎えられた。
ロイス辺境伯は初代ミラージュ1世の戦友であり、北部の最大の領主だった。
彼は白髪白眉で、長身痩躯の老人だったが、目は鋭くて若々しかった。
「ようこそ、ミラージュ王国第二王子殿下。私はロイス・バルトと申します。この北部を統治することになりましたか。大変な任務ですね」
ロイス辺境伯は俺に笑顔で言った。
「ありがとうございます。私はカイン・ミラージュと申します。この度はお世話になります」
俺は礼儀正しく答えた。
「こちらこそよろしくお願いします。これがお連れの方々ですか」
ロイス辺境伯はエリックとマリエッタ妃を見やった。
「はい。これが私の弟であり第三王子のエリック・ミラージュです。そしてこれが私の母であり第二妃のマリエッタ・ミラージュ妃です」
俺は紹介した。
「初めまして。私はエリック・ミラージュと申します。兄と一緒に北部を学びます」
エリックは元気よく言った。
「初めまして。私はマリエッタ・ミラージュ妃と申します。息子達をよろしくお願いします」
マリエッタ妃は微笑んで言った。
「おお、素晴らしい方々ですね。私も初代ミラージュ1世と共に戦った者として、王族の方々を歓迎します」
ロイス辺境伯は感激した様子で言った。
「では、さっそく屋敷にご案内しましょう。こちらにおいでください」
シムカ伯爵は俺たちを屋敷に案内した。
屋敷は北部の中でも豪華なものだったが、王都のものと比べるとやはり劣っていた。
しかし、俺たちはそれを気にせずに、シムカ伯爵のもてなしを受けた。
俺は北部での生活に不安を感じながらも、何とか頑張ろうと思ったのだった。
我々の北部での歓迎パーティーは、ロイス辺境伯の屋敷の庭で行われた。
庭は草花で飾られており、色とりどりの花が咲いていた。
パーティーには、北部の有力な領主たちが招かれていた。
その中には、ゴルディアの子のシムカ伯爵やモーフィアの孫のゼロス子爵など、初代ミラージュ1世の戦友の子孫もいた。
二人共レベルは70を超えていて王都では見たことが無いレベルだ。
他のパーティの参加者達もレベル50前後と、王都の貴族たちのレベル15前後とは大きくレベルが違っていた。
それだけ魔物が跋扈する地で生きる事の厳しさを感じる。
彼らは俺たち王族に敬意を表し、北部での生活について色々と教えてくれた。
シムカ伯爵は、北部は人も少なくて産業もないが、その分自然が豊かで魔力草がたくさん育っていると言った。
魔力草は魔力を持つ植物で、魔法や薬に使われる貴重なものだった。
シムカ伯爵は、魔力草を使って様々な剣技を編み出したと自慢した。
ゼロス子爵は、北部は魔物が多くて危険だが、その分冒険には事欠かないと言った。
ゼロス子爵は、魔力草を使って様々な魔法を研究したと語った。
他にも、海から上がる魚や貝の料理や、山から採る果物や野菜の料理など、北部ならではの食べ物が振る舞われた。
俺たちは北部の風土や文化に触れながら、楽しく食事をした。
パーティーの最後には、シムカ伯爵とゼロス子爵が俺たちに一つずつプレゼントを渡した。
シムカ伯爵からは、俺にグリム公国で魔力草を何度も蒸留した液を用いて鍛えられた青い剣をもらった。
ゼロス子爵からは、エリックに魔の森の奥地の赤いトレントから作り出された赤い杖をもらった。
「これらは私たちの先祖が初代ミラージュ1世と共に戦った時に使った武器です。王族の方々にお譲りします」
シムカ伯爵とゼロス子爵はそう言って、俺たちに敬礼した。
「ありがとうございます。これは大変な名誉です。大切に使わせていただきます」
俺は感謝して言った。
「私もありがとうございます。これは素晴らしいプレゼントです。大切にします」
エリックも喜んで言った。
「私もありがとうございます。息子達が喜んでいます。これからもよろしくお願いします」
マリエッタ妃も微笑んで言った。
「こちらこそよろしくお願いします。王族の方々が北部で幸せに暮らせますように」
南部では冷遇されていた俺達に、シムカ伯爵とゼロス子爵はそう言って、笑顔で見送った。
俺は北部での生活に少し期待を感じながらも、まだ不安を抱えていたのだった。
俺たちはロイス辺境伯の屋敷にしばらく滞在した。
その間に、北部の領地を見て回ったり、魔力での青い剣と赤い杖の使い方を教わったりした。
青い剣と赤い杖は、魔力を流すことで強力な効果を発揮する武器だった。
青い剣は魔力を流すと切れ味が増し、赤い杖は魔力を流すと魔法が強化される。
俺は剣を、エリックは杖を使って、シムカ伯爵やゼロス子爵と共に魔物と戦った。
魔物は北部では日常的に現れるもので、領民たちの生活を脅かしていた。
俺たちは王族として、領民たちを守るために戦った。
しかし、魔物だけが北部の敵ではなかった。
北部には、王国の法や秩序に従わない者たちがいた。
彼らは暴れ者と呼ばれており、略奪や殺戮を繰り返していた。
彼らは魔物が多く住む地にいるぶん、総じて精強らしく、討伐が困難との事だ。
レベルも総じて高い事が予想される。
暴れ者は、グリム公国やフローラ共和国から逃げてきた犯罪者や、王国に不満を持つ反乱分子などで構成されていた。
彼らは山や森に隠れており、時々村や町に襲撃をかけていた。
俺たちは暴れ者の存在を知って、シムカ伯爵に尋ねた。
「暴れ者は昔から北部にはいます。王国の法や秩序が及ばない場所だからです。私たちは自分たちで守るしかありません」
シムカ伯爵はそう言って、深く溜息をついた。
「王国の法や秩序が及ばない場所だからですか。それはどういうことですか」
俺は不思議に思って聞いた。
「北部は王都から遠く離れています。道も悪くて交通も不便です。王国の軍隊や役人もほとんど来ません。王国から見放されているようなものです」
シムカ伯爵はそう言って、悲しそうに笑った。
「そんなことはありません。王国は北部を見放していません。私たちは王族として、北部を統治することになりました。王国と北部の絆を強めることが私たちの使命です」
俺はそう言って、シムカ伯爵に励ました。
「そうですか。それは嬉しいことです。王族の方々が北部に来てくださったことは、私たちにとって大きな希望です」
シムカ伯爵はそう言って、感謝した様子で言った。
「では、私たちは暴れ者に対してどうすればいいですか」
エリックが聞いた。
「暴れ者に対しては、私たちも手を焼いています。彼らは数も多くて組織もしっかりしています。彼らのアジトも分かりません。私たちは彼らが襲撃してきた時に迎撃するしかありません」
シムカ伯爵はそう言って、苦笑した。
「それでは、いつまでも彼らに苦しめられることになります。私たちは何かできることはありませんか」
俺は聞いた。
「できることはあります。暴れ者の中には、王国に恩義がある者や良心がある者もいるでしょう。彼らを説得して、暴れ者から離脱させることです」
シムカ伯爵はそう言って、目を輝かせた。
「説得ですか。それはどうやってするのですか」
エリックが聞いた。
「それは、王族の方々にお願いしたいのです。王族の方々なら、暴れ者にも影響力があるでしょう。王族の方々が暴れ者に話しかけて、王国への忠誠や平和への希望を説くことです」
シムカ伯爵はそう言って、俺たちに頼んだ。
「王族の方々が暴れ者に話しかけることですか。それは危険ではありませんか」
マリエッタ妃が心配そうに言った。
「危険はあります。しかし、それが北部を救う唯一の方法だと思います。王族の方々なら、暴れ者の心を動かすことができるでしょう」
シムカ伯爵はそう言って、マリエッタ妃に訴えた。
俺はシムカ伯爵の言葉に感動した。
俺は王族として、北部の人々を守るために何かしなければならないと思った。
俺はエリックと目を合わせた。
エリックも同じ気持ちだったようだった。
俺たちはシムカ伯爵に答えた。
「わかりました。私たちは暴れ者に話しかけてみます。それが北部を救うなら、私たちは喜んで危険を冒します」
俺はそう言って、決意した。
「私も同じです。私たちは兄弟です。一緒に北部を救います」
エリックもそう言って、同意した。
「ありがとう、王族の方々。私たちは王族の方々の勇気に感謝します。私たちも王族の方々を全力でサポートします」
シムカ伯爵はそう言って、涙ぐんだ。
「息子達、私もあなた達を応援します。どうか気をつけてください」
マリエッタ妃はそう言って、俺たちを抱きしめた。
俺たちはシムカ伯爵やゼロス子爵と共に、暴れ者に会うために出発した。
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