雨の短歌

雨垂れに硝子のような一疋の 虫 透かしたはねに光る雨粒


今日はそう 聴いて欲しいの パン屋とか犬が居たとか 雨のこととか


薄墨の雨雲 朝にほの光る 眠りをさそう やさしい天蓋


café au lait《カフェ・オ・レ》に茶色い粗目ザラメと文庫本 静かな喫茶の外はどしゃ降り


雨甘く匂う休暇の午後のこと 呼吸している それだけの午後


黴雨曇つゆぐもり 過去ふいにした約束が低く虚しくたれこめている


何もかも白紙に戻してしまいそうな雨を聴いてる午前二時半


雨の路 銀杏の落ち葉を踏みあるく 蝶々ひとつ 潰してくよに


雨の日の重く湿ったけだるさも 許さず背筋を伸ばす彼女は


雨粒は 一滴ごとにじり降る くもの全ての淋しさの音

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