第33話 俺TUEEE! MPの燃費は最悪だが、無限供給でチート無双!


「そうだ、戦闘はどうなっている?」

俺は、はねるように立ちあがった。


戦闘は続いている。


ボス部屋の入り口へと戻って、もと来た大きく開けた空間に出た。


沙織と高田は、思った以上に、すぐ近くにいた。あまりもの敵の数の多さに、押されまくっているようだ。


パーティのステータスを見る。


スキルを使いまくったのだろう。沙織も高田もMPが尽きていた。HPもじわじわ減りはじめている。


俺の後ろをついてきていたエリサが、沙織と高田に治癒魔法をかけた。


ついに、エリサのMPも尽きそうだ。


ヒーラーのMPが尽きれば、後はパーティ全体がジリ貧になるだけだ。


敵の数はほとんど減ってない。


敵は、高レベルの魔物がざっと千匹以上。さらに、魔王軍四天王が2人もいる。


「くそっ!」


俺は、装備の杖を敵にむけた。


爆熱放射ファイアー・エミッター!」


俺がもつ、もっとも強力な呪文を唱えた。


杖から、今まで見たこともない、とんでもない強力な炎が吹きあがった。それが、ビームのように一直線に敵へと飛んでいく。


「うあああああっ。なんだこれっ!」

俺自身がおどろく。


これまでとは、威力が段違いだ。攻撃のビームが命中した地面で大爆発がおこり、周囲の魔物たちが、燃え尽きた。たばで、ざっと20匹ほど、一斉に空中に吹き上がる。


しかし、驚くのはまだこれからだった。


「なんだこれ? なんだこれ? なんだこれええええっ!」


炎がとまらない。杖からまだまだ火炎のビームが吹き出つづける。


ぎ払うのじゃ! それでこそ、世界最高最愛の、わしの旦那さまなのじゃ!」」

いつのまにか、ハヤハヤが俺の隣に立っていた。


杖を、少し横に払った。


火炎ビームが杖から吹き出続け、魔物たちを次々に焼き焦がしていく。

猛烈な爆炎が、周囲一体を大業火につつんでいく。


「すごいのじゃ! すごいのじゃ! さすがなのじゃ!」

ハヤハヤが、喜びのあまりに両手をあげた。


が……


強力すぎる攻撃には、マイナス面もあった。


「吸われる! 全身の魔力が吸われていく……」


体に残っていた魔力が、杖からどんどんれ出ていく感覚があった。

6割ちかくのこっていた、俺のMPゲージが、あっという間に減っていく。


ようやく杖から炎が吹き出すのが止まると、俺のMPは、ほぼゼロになっていた……。


一撃で倒した魔物は、100匹近くはだろうか。それはそれで、とんでもなくすごい火力にはちがいなかった。


しかし、まだ千匹近くは余裕で残っていた……。


結局、覚醒したところで、なんにもならなかったようだ。


「終わった……」

俺は肩を落とすしかなかった。


俺、沙織、高田、エリサ。全員のMPが尽きていた。

いきなり、俺がとんでもない火力をもたらしたのに驚いたのだろう。敵は一瞬ひるんで進撃を止めていた。しかし、再開するのは時間の問題だ。


ぎ払え! どうした旦那さま、さっさと撃たんか!」

「だめだ……」

絶望に、俺の声は低かった。


「いったい、なにごとじゃ?」

空気を読まず、ハヤハヤが目をパチクリする。


「MPが尽きた」

「なんじゃ、そんなことか……」


「そんなことか……って。MPがなくなったら、魔法使いは役立たずだ」

「そうじゃないのじゃ! とにかく、わしと合体するのじゃ!」

「え、合体?」

「そうじゃ、合体なのじゃ!」

「フュージョン的な……?」


「ちがうのじゃ。とにかく急いで、わしを肩に乗せるのじゃ!」

「なんだ、肩車か……」

MPが尽きた魔法使いに、他にやることはない。最後の最後にハヤハヤの願いを聞くのもいいだろう。


肩車して、上半身を持ちあげる。

「美少女大要塞ハヤハヤ、超魔導合体なのじゃーっ!」

肩車されたハヤハヤが叫んだ


「いくぞ。旦那さま!」


「え、どういうこと?!」

思わず、俺は声をもらした。


ハヤハヤを乗せた首のあたりから、大量の魔力が流入してくるのがわかった。

2秒とかからず、MPが満タンになって、俺は呆然ぼうぜんとなる。


「どうしたのじゃ。旦那さま。焼き払うのじゃ! MPなんていくらでも、わしが供給してやるのじゃ!」

「お、おう……」


爆熱放射ファイアー・エミッター!」


再び、大火炎のビームが俺の杖から、放射された。


この攻撃魔法の詠唱時間キャストタイムは、約10秒ほどだ。

一旦、呪文が完成すると、杖からでる炎が、火炎放射器のようにずっと続けてとんでいく。一回の攻撃で、大火炎ビームが9秒くらいつづくのだ。

しかも、その間も次の攻撃のために詠唱をはじめることが可能だ。


つまり、杖が攻撃を停止しているのは約1秒ほど。

そして、再び発射できる。

MPは、肩車したハヤハヤから、どんどん供給されてくる。


なんだよ、このチート。


「敵すべてをぎ払うのじゃああ! 旦那さまは、さすがなのじゃ! すごいのじゃ! これこそ、ワシと旦那さまの初めての共同作業。ラブラブ・パワーなのじゃあーっ!」


「……ハヤハヤ」

俺は攻撃を続けながら、肩の上のハヤハヤにたずねた。

「なんじゃ?」


「ダンジョン・コアを一度食べたら、次、食べるまでどれくらいかかるんだ?」

「うーん……、20年以上は保つじゃろうな」

「原子力空母の燃料棒かよ……」


アメリカ海軍のニミッツ級原子力空母は、いちど燃料棒を交換したら、燃料補給なしに、約20年以上エンジンを動かせ続けることができる。エンジンには発電機能も、そなえられており、実用上は無限ともいえるほどの間、電力が提供されつづけるのだ。


まさにチートそのものだ。



「……なんだ、あれは? あれではまるで要塞砲ではないか!」

言ったのは、丸田の攻撃を反対側から見ていた。四天王筆頭のアークダヨである。


「ば……、馬鹿な。いくら魔法使いといえど、人間ごときが、あんな火力を発揮できるはずがない……」

四天王のひとり、ジャーも驚きで身をこわばらせていた。


次の瞬間、丸田のあまりにも強烈すぎる火炎攻撃に、2人の姿が包まれ、燃え尽きた。そして、1000匹以上の魔物が丸焦げになった死体。それらがごろごろと、地面にころがっていた。

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