第27話 スキル【なんでも美少女化】が発動した



どうするんだ、これ?

新しいスキル、『なんでも美少女化』の獲得に戸惑いながらも、俺はあたりを見渡した。


新しく入った部屋は、まるでSF映画にでてくる宇宙戦艦か要塞の司令室のようだった。数多くのモニターが並べられ、素人には理解不能な記号や文字が表示されている。


「ここって、なに?」

沙織が、驚き顔でキョロキョロしている。


「なにかの制御室みたいだねぇー」

高田も驚き顔だ。


「ひょっとして、この城のコントロール・ルームでしょうか?」

と、エリサ。


部屋の一番おおきなモニターには、城の外の様子が映っていた。

映っていたのは、大混乱して散り散りに逃げまどう王国軍の兵士たち。そして、王国軍に容赦なく襲いかかる魔王軍だった。

もちろん魔王軍のほうは、この城から出撃していったハヤハヤ城駐留部隊と、傭兵たちだ。


戦いは魔王軍の圧勝で終わりそうだった。


「まずいぞ。しばらくしたら、魔王軍が帰ってきてしまう。さすがにあの大軍と戦うリスクは避けたい」

「この部屋にある機械のどこかをいじくったら、脱出口までの通路とか表示されないかなぁー?」

俺の言葉に、沙織が声を出す。


「そう言えば、こいつが気になる」

俺が視線を向けたのは、部屋の中央にある巨大な半透明の水晶である。それは高さ1mほどの白い台の上にのせられていた。八面体の水晶は黒みがかっていた。高さが80cmくらい。


俺が近づくと、水晶が言った。

《ご命令をどうぞ》


「こいつ、喋るのか?!」

俺は、思わず声をもらす。


《はい。わたしは会話することができます。……ご命令をどうぞ》


「おまえは、なんなんだ?」

《わたしは、この城の管理システムです。……ご命令をどうぞ》

「じゃあ、城の各出口までの通路を、モニターに表示できるか?」


《…………》

「ん? どうした?」


《現在、あなたは権限をもっていません。……識別IDとパスワードをどうぞ》


そんなもの持ってない。あたりまえだが。


「どうしますか、一輝さん? このままでは国王軍を追い散らした魔王軍の大軍が、城に戻ってきてしまいます」


うーん、いい考えが思いつかない。


ここが城の中央コントロール・ルームだとすると、おそらく城の一番中心部にあると考えるのが普通だろう。

出口を探していた俺たちは、迷ってしまい、逆に城の一番深い場所に来てしまったようだ。

今さら、適当に歩き回ったところで、ここに来たのと同様に迷ってしまうだけだろう。


俺たちが城の出口に到達するより、魔王軍が帰ってくるほうが絶対に早そうだ。


なにか、いい方法がないだろうか。



スキル『なんでも美少女化』



このスキルをつかって、コントロール・ルームの使用権限を持っている奴をなんとかできないだろうか?

俺の固有スキル『ニコポ』『ナデポ』は、対象が美少女に限り効果が発動する。だったら美少女化してしまえば、なんとかなるかもしれない……。

オッサンや、いかつい外見をした魔族を美少女化するのは、どうかとも思うが、今の俺たちは追い詰められていた。他に良さそうな手段が思いつかない。



ためしにスキルを使ってみる。


《スキル『なんでも美少女化』が発動しました》

なにもない空中から、説明の声がした。


「ん? どうしたんですか、一輝さん、そんなに私を見つめて……。ついに私の魅力に気づいちゃいました?」

エリサが、ポッと顔をあからめ微笑んだ。


ためしにエリサを見つめながらスキルを発動してみたが、なんの変化もなかった。


美少女に、美少女化のスキルをつかっても、なにも起こらないのはあたりまえか……。


うーん、どうするかなあ……。


俺は、特に意識することなく、コントロール・ルームの中心にある水晶に目を向けた。


《スキル『なんでも美少女化』が発動しました》


え? まだスキルの発動が有効だったの? アクティブスキルの効果時間がよくわからない……


次の瞬間、巨大な水晶が消えていた。



……そして、


気づくと、小さな少女が、部屋の床の上にぺたんと座っていた。少女は、元いた世界の現代日本で言えば小学校高学年くらいだろうか。

赤毛の長い髪をした、とびきりかわいらしい美少女だった。しかも、素っ裸だ。


「だれだ? おまえは?」

俺が声をかける。


「わしは、ハヤハヤ城じゃ」

「え?」

美少女は床に座ったまま、おどろく俺を見あげていた。特に声質がかわいらしかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る