第23話
「余裕勝ちっス! 勇者パーティなど、この俺の相手にならないっス。ウェーッヒヒヒヒ……!」
大城のパーティが、1人をのこして全滅したのを見て、ムカツークが、高らかな笑い声をあげた。
☆☆☆
ムカツークが笑い声を上げていた時……、
村から50メートルほど離れた木々の陰に、3人の人影があった。
そこにいたのは、ムカツークをのぞく、魔王軍四天王の残り、
アクダーヨ、
ワル、
ジャー、
の3人である。
3人は、ムカツークが、勇者パーティにボコボコにされて、倒されてしまうところを見ようと、ウキウキしながらやってきたのだった。
「ムカツークがやられたようだな…」
「フフフ…奴は四天王の中でも最弱…」
「人間ごときに負けるとは魔王軍の面汚しよ…」
などという、おきまりのパターンのセリフの練習も、ちゃんとしてきていた。
しかし、3人の目に飛び込んできたのは、ムカツークが勇者パーティを圧倒している光景だった。
「な、なぜだ? なぜ、ムカツークのほうが強いんだ?」
「ありえない……。ムカツークに、勇者パーティを圧倒できる戦闘力があるとは思えん」
アクダーヨとワルが
「わかったぞ、あれは勇者パーティではない。ただの人間の冒険者パーティだ」
ジャーが答えた。
「なるほど、それなら納得がいく」
「たしかに……」
アクダーヨとワルがうなずいた。
その時だった。
3人が、隠れながら
「キャーハハハ! 見つけたっス。アリタニア国王が発行した、勇者パーティの身分証明プレートっス!」
「「なんだと?!」」
アクダーヨとワル、ジャーが、驚きに目を見開く。
そのとき、空から1人の影が、ムカツークのそばに舞い降りた。
「なっ……、あれは?!!」
思わず、アクダーヨが声を上げた。
「よくやったぞ、ムカツーク」
ムカツークのそばに舞い降りたのは、魔王軍宰相のエラインダだった。
宰相エラインダは、魔王軍ナンバー2。魔王の次に偉い人物だった。
そして、魔王軍四天王の直接の上司でもある。
四天王の人事評価だって、エラインダがするのである。ボーナスの額も,
実質上、エラインダの評価で決まってしまっていた。
「ムカツークよ、それは間違いなく、勇者パーティの身分証明プレートだ。1人で勇者パーティを圧倒するとは素晴らしい」
「ありがとうございますっス! エラインダ様に、そういってもらえると嬉しいっス」
「しかし、魔王様より、若くて経験の少ないムカツークのことはよろしく頼むと言われているのだが……。そのことを、アクダーヨたちにも伝えていた。なのに、たった1人で勇者パーティに、突っ込ませるとは……」
「エラインダ様、大丈夫っス。勇者パーティ討伐なんて余裕っス!」
「ムカツーク、私のお前への評価がさらに上がったぞ。今回のことは、詳しく魔王様にも伝えておく。……それに比べて。四天王残りの3人は不甲斐ないのう……」
「フフフ…俺は四天王の中でも最強っス。奴らは魔王軍の面汚しっス」
エラインダの言葉を受けて、ムカツークが、ワハハハ! と高らかな笑いをあげた。
「「「ぐぬぬぬ……」」」
それを見ていたアクダーヨ、ワル、ジャーの額が、青筋をたてて、ピクピクと震える。
「ところで、勇者パーティは全員で5人だったはずだが……」
エラインダがあたりを見回す。
黒焦げになった勇者パーティ・メンバーの死体が4体確認できた。
「あと1人、取り逃がしたか?」
「大丈夫っス」
ムカツークが懐のなかから、懐中時計に似た装置をとりだした。
「おお、それは……」
「勇者レーダーっス」
それは、約半径3km以内に勇者がいれば、その位置が表示されるレーダーだった。
ムカツークが装置のスイッチを入れるが……
「あれ? 勇者の反応がないっス」
「なるほど、取り逃がした、あの銀縁メガネは勇者ではなかったか……。この4体の黒焦げ死体の誰かが、勇者だったのだろう」
「それとも、銀縁メガネも死んでしまったために、レーダーが反応しない可能性もあるっス」
「なるほど。そうかもしれん」
ムカツークとエラインダが、見つめあった。
そして、数秒後……、
2人は、ガハハハハ! と満足そうに高笑いした。
☆☆☆
そのとき……、村の建物の陰から、ムカツークとエラインダをのぞいている、別の2人の人物がいた。
「あんた、勇者でないと言われておりますぞ。出て行って、否定しなくていいんですかのう?」
「しっ! 静かにしろ! ここは、敵の暴言をあえて我慢して、スルーするところだ!」
ジト目で
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