第13話 ハヤハヤ動力要塞、攻防戦 その2



玉座の間だった。


壇上で座る王に向いて、大城がひざまづき、頭をさげていた。少し下がったところで、大城のパーティメンバーである、ジーンとザックもひざまづいている。


「陛下、我がパーティで、見事にイースタン村のゴブリンを討伐いたしました」

大城は嘘は言っていない。しかし、ありのままの事実を全部も言ってない。


大城は、ゴブリンを討伐したが、その後に現れたホモゴブリンが倒せず、丸田のパーティに助けてもらうことになってしまった。

しかし、そんなことは決して口にはしない。


「かなりのゴブリンが発生していたと聞いたが」

「はい、陛下。その数は100匹以上おりました」

「ゴブリンといえど、その数では、なかなかの強敵だったじゃろう。たった、3人で倒すとは見事じゃ。いくばくかの褒美ほうびをとらせよう」

「ありがたき幸せ」

 国王の褒め言葉に、大城の頬がゆるむ。


「それと、丸田殿たちがどこにいるか、大城殿は把握しておるのか?」

「はい」


大城はストーカーのように、丸田たちの後を追っていた。おそらく、この世界で、丸田たちのパーティの居場所について、もっとも詳しいのは、大城だろう。


丸田を追放したときに、

『丸田さん、あなたとは、今後、もう関わりたくないので、しつこくついてきて、僕の前に現れたりしないでくださいね』

と言ったことなど、とっくに忘れている。


「では、この身分証明プレートを丸田殿に渡してくれんか?」

王のかたわらにいた従者が、受け取ったプレートを大城に手渡した。


クレジットカードくらいの大きさの、その身分証明プレートを見たとき、大城の頬が硬直した。

プレートには次のように書いてあった。



《勇者パーティ》

この者たちが、真の勇者パーティであることを保証する

アリタニア国王 レボデス12世



さらには、カードには、王の紋章である、黄金の四葉のクローバーが刻まれていた。

王の紋章は、国王と、その代理人のみが身につけることが許される非常に厳格げんかくなものだ。たとえ王子でさえも、普段はつけることが許されない。


つまり、このカードを持つものが言うことは、国王が命じているのと同じである、という意味をもっている。


「証明するものがあったほうが、丸田殿たちも、いろいろ動きやすいじゃろう。旅先で、それを見せれば、我が配下の諸侯たちからさえも、手厚い援助をえられるだろうからな」

「…………」

「どうした、大城殿?」


「……僕のパーティの身分証明プレートは、いただけないのですか?」

「そうじゃったな。忘れておったわ。作らせておくので、今度、報告に来たときに渡すとしよう」

「…………」



☆☆☆



王座の間を出たあと、王城の廊下を歩きながら、大城は、あまりものくやしさに唇を噛んでいた。

(僕たちは、丸田のおまけかよ……)

考えるだけで、腹の底が煮え返るような気持ちになる。


丸田たちにホモゴブリンから助けてもらったことなど、とっくに、大城の頭の中から消え失せていた。丸田に復讐して、ギャフンと言わせたい一心で、心がおちつかない。


邪悪な黒い気持ちで大城の胸が満たされた。


……しかし、どうやってギャフンと言わせてやろうか?


考える大城に、声をかける軍服の男がいた。


「大城殿……」

「これは、……ナイフ大佐でしたっけ?」

「そうです」

ナイフ大佐は、すらりとした神経質そうな男だった。


ナイフ大佐は、王立軍学校をいままでにないほど優秀な成績で卒業したという。アラサーで大佐にまでになった超エリート軍人だった。


ただし、ナイフ大佐の任務は、これまではデスクワークが中心で、実際に軍を率いての実績はない。

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