第12話 ハヤハヤ動力要塞、攻防戦 その1



俺たちパーティは、森の中をすすんでいた。


不意に横から、魔法使いの装備をした骸骨があらわれた。

「おお……、エルダー・リッチだ!」

「ちょっいっと……」

俺の声に高田が、剣を一閃すると、あっさりリッチが倒れた。


「あ、トロル……」

エリサが言う。

「ほいっ!」

高田が、なんか動いたと思ったら、トロルが倒れていた。


「ミノタウロス!」

「ほほほーい!」

牛頭の魔物が、高田の攻撃で、あっさり倒される。



レベリングの旅で、俺たちはかなり強くなっていた。もはやミノタウロスでさえ、高田1人の相手にもならない。



☆☆☆



さらに進んでいくと、新しい村に出くわした。

村に入ると、村人みんなが、暗い顔をしている。


「なにがあった?」

近くを歩いていた中年女を呼び止めて、俺はたずねた。

「この村に、人狼が一匹、潜んでいるようでして。毎晩のように村人が襲われ、怪我人が続出していまして……」


「あ、あの人から邪悪な気配がするー」

エリサが、通行人の男を指さした。

大聖女には、邪気を見抜くスキルがある。


「あんたが人狼ね!」

高田が言うと、男の表情が、急に性悪なものに変わる。

「くくく……、バレてしまっては、しかたない」

男の姿が、ワーウルフへと変わっていく。

「よくぞ見破った。わたしは魔王軍幹部のグー……」


ズザッ!


「ぐわあぁ」


沙織の剣の一閃で、魔王軍幹部、グーなにがしが、一瞬で倒された。


「口上くらい唱えさせてやれよ」

「やだー、面倒くさーい」

俺の言葉に、沙織が間の抜けた声で返す。



「ありがとうございます。これで大怪我を負った人たちも……」

「大怪我を負った人はどこだ?」

村人の言葉をさえぎって俺がたずねた。



案内された建物に寝かされていた怪我人に、エリサが治癒魔法をかける。

「痛いの、痛いの、とんでけー」

あっというまに怪我を負った村人全員が完治してしまう。


「さてと……、次の町にでもいくかー」

「「「はーい」」」

エリサ、高田、沙織が、同時に同意の声をあげる。


「ちょ……、ちょっと、待ってください。せめて、お礼だけでも……」

俺たちが立ち上がると、村人が引き留めようとする。

「そんなの、いいって」

俺たちは、あっさりと村を立ち去った。



……そんなことを何度か続けているうちに、



「俺たちも、強くなったよなあ……」

なにか、実感するものがあった。



☆☆☆



そのとき、アリタニア国王、レボデス12世は、執務室で、奏上そうじょうされてくる書面の裁可さいかの判断をしていた。



そこに1人の従者が入ってきた。

「陛下」

「なんじゃ?」


「丸田殿がひきいる勇者パーティに関連する報告です。陛下が優先して報告するようにと、ご命令されてたので……」

「そのとおりじゃ。で、なんと?」


「かなり多くの報告があがってきております。それによると、勇者パーティは、訪れる町や村で、次々に魔物たちを討伐し、人々の怪我や病気を治しまくっているようです」

「それは、民からも人気がでそうじゃの」


「もちろんです。各所からは大感謝され、民衆からは大絶賛の嵐です。そんな町や村からの報告が数え切れないほど、毎日のように届いております」

「ほほう、それは大変よろこばしいことじゃ。……そういえば、丸田殿たちには、何ヶ月も会ってないのう。きっと、かなりたくましくなったじゃろうて。そのすばらしい勇姿を見てみたいのう」


「それですが……」

「ん? なにかあるのか?」


「……外見は、その辺にいる一般冒険者となんら変わらないようです。むしろ、装備や服などが地味なので、実際に活躍するまでは、低級の駆け出し冒険者のように見られることも多いとか」

「ふむ……」


「自分たちで勇者パーティと明かすこともなく、ただ、れいている三人が、印象に残るような美少女ばかりなので、立ち去った後の報告で、それが丸田殿のパーティだとわかるという次第でございまして」

「うーん、それは問題じゃのう……。丸田殿たちは、冒険者ギルドが発行している身分証明プレートは持っていたかの?」

「いえ、おそらく、持っていないと思われます」


「ならば、わしが直々に身分を保証するものを発行してやらねばならぬな。それと褒美の金も用意するとしようか……」


「承知いたしました。すぐに手配いたします」

従者は、うやうやしく礼をして部屋を出ていった。


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