第2話 旦那と出会う

 旦那と出会ったのはチャットです。出会い系のようなものではなく、大人から子どもまで自由に出入りしている無料のチャットサイトでした。私は毎日のように通っていて、私の部屋(チャットルーム)によく来てくれていた常連さんの一人が彼だったんです。 


 でも旦那とは別に、そのチャットで私に告白してきた男性がいまして。その人は私の病気のことを知って、「俺と付き合ってほしい。そして、俺に依存してほしい。依存って悪いことじゃないと思う」と言ってきました。流されるままに付き合うことになり(顔も知りませんでした)、LINEを交換したのですが、その2週間後に「俺の思う依存とイチカさんの思う依存は違うみたい」と言われて振られました。

 恐らく、私がしょっちゅう連絡を入れるのが重かったのかな、と思います。でもまぁ不満だったので、自分の部屋の常連さんたちに愚痴っていたんです。そこで常連さんの一人が、「この部屋の女子余ってるぞ! 誰かもらってやってくれ」と冗談で発言し、「じゃあ俺がイチカもらうわ」と言い出したのが旦那でした。

 旦那のことは恋愛的な観点で見ていなかったので相当びっくりしました。そのあとLINEを聞かれて、教えたらすぐにかかってきました。

「イチカはMだろう? 俺はSだから俺たち絶対合うはず。だから付き合おう。それに俺はメンヘラの子が好きだし」と説得されたのは今でも強烈に覚えています。その時私は自分がMだという自覚すらなかったんですよね。この人はいったい何を言っているのだろうと思いつつ、これまた流されるまま付き合うことになりました。


 ちょうどその頃、私は家族との関係が悪化していました。私が小さな頃から家族みんなクリスチャンだったのに、私がそれをやめたいと言い出したため、家族からいじめられるようになっていたのです。

 私がなぜ急にやめたいと言い出したかというと、うつ病になってできないことが増えたのに、集会への出席や布教活動への参加を強いられるのがすごくつらくて。この宗教は本当に私のためになっているのだろうか??と考えだしたからでした。この辺りの話は本当につらくて、細かい説明は省きますが、「横浜に引っ越すから一緒に暮らさないか」と旦那が心配して誘ってくれました。

 その時旦那は北陸、私は九州に住んでいて、旦那は雪の日に15時間もかけて車で迎えに来てくれたんです。しかもその時、まだ一度しか会ったことなかったし、付き合って3カ月しかたっていませんでした。(!)

 旦那は私のところへ来るなり、私の父に挨拶してくれて(母は会うのを拒否したので)、市役所へ一緒に行って住民票の手続きなどを手伝ってくれました。私は急いで自分の荷物を要るものと要らないものに分け、要るものは引越し業者に、要らないものは廃品回収業者に頼みました。そしてひとまず旦那の住む北陸へ向かい、二週間ほど過ごして旦那の荷物もまとめ、二人で横浜へ。旦那があらかじめ家を探してくれていたので、スムーズな引っ越しでした。


 私の何が良くて旦那にそこまでさせたのか、今振り返ってもさっぱり分かりません。ただただ“いい人”だったということなのか、同情してくれたのか……。

 私は旦那に出会うまで暗い気持ちで実家で暮らしていて、この先どこにも行けないような、将来に全く希望がないような、絶望感と閉塞感を味わいながら暮らしていました。旦那は私にとって、家族と、先のない人生から救い出してくれた救世主です。


 旦那と出会ってから、私は怖いものが少しなくなりました。外で働けるようになり、一人焼肉にだって行けるくらいになりました。大分大きな変化だったと思います。心療内科の主治医の先生に「認めてくれる人がいると大きく変わってくるからね」と言われました。旦那がとてもよく褒めてくれる人だったので、自分でも自尊心がのびのびしているのを感じていました。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る