4.早計すぎるだろ


 ――王城、謁見の間


 謁見の間には王にアイーシャ、ダース、ギルドマスターが避難していた。


「これはどういう事なのじゃ! ギルドマスターよ!」

「僕もこれは想定外でした。今勇者パーティを筆頭に冒険者や王国の騎士団、魔術師団が交戦しております。」

「外壁から侵入されるのも時間の問題かのう。皆の者頑張っておくれ……」


 アイーシャは想い人の安否を心配し願う。


「生きて帰って来てね。アキト……。」

「勇者様のことです大丈夫でしょう。」

「ええ、あの人ならケロッと帰って来ますよ。」

「ありがとう。騎士団長様にに魔術師長様。」


 茶髪で赤い鎧を纏い、大剣を携えた騎士団長と、白のローブを纏い、自分の身長と同じくらいの杖を携えた魔術師長がアイーシャに声を掛ける。


 この二人の男女は勇者パーティを除けば、この王国最強タッグであり戦士だ。


「しかし、この王国を囲むような襲撃。人為的なものとしか思えん。」

「私もそう思っていたのよ。誰が裏で糸を引いてる気しかしないわ。」


 王国最強タッグが人為的なものだと考察する。


「なら、誰なのでしょうか。」


 ギルドマスターが騎士団長に問いかける。


「魔族や魔獣を操ることができる者など、魔王しか心当たりがない。だが、勇者パーティによって殺されたはずだ。」


「危ない!!!!!」


 魔術師長が叫び、防御魔法でバリアを作り騎士団長を庇う。


「なんで貴方様が……?」


 魔術師長がバリアに刺さったナイフとそれを投げた人間へ向け目を向ける。


 目を向けた先は三つある玉座の右席に座る、ダース・キリエルだった。


「勇者が死ぬまで何もしないでおくつもりだったんだが、魔獣達が手こずってるみたいなんでな、私が直々に王城を落とす。」

「どう言うことなのじゃ、ダース。」

「簡単ですよ父上、私は力を得たんです。悪魔の力を」

「悪魔じゃと!?」

「兄さんなんで……!」

「悪魔の力を得て私は魔王となったのです。魔王ダース・キリエルにね!!!」


 魔術師長が王とアイーシャに防御魔法で遠隔操作のバリアを貼る。


「ダース様非礼をお詫びします。ですが! 黒幕が前にいる以上成敗しなくてはいけません。」

「ああ、お前は禁忌に手を染めた。もう人間じゃない以上我々が討伐する。」


 騎士団長と魔術師長が大剣と杖を構える。


 大剣には炎を纏わせ、


 杖からは霧を放つ。


 謁見の間はあっという間に霧に包まれた。


 部屋の隅で戦いの火蓋が切られたのを見たギルドマスター・グリムがひっそりと呟く


「早計すぎるだろ! 笑わせてくれるじゃないか……!」



 霧が水の槍へと変化し、ダースを襲う。


 その槍をダースは上手く、ナイフを使い捌いていく。


「グォォォォォォ!!!!」


 炎の纏った大剣が上空から迫り、団長の巨体と一緒に落下してくる。


 水の槍を捌きながら、団長の大剣を防ぎ切る事は力を得たダースでも難しく、徐々に劣勢になっていった。


「くっそお! 悪魔の力はこんなもんなのかァ"! まだまだ私はやれるはずだァ"! グハッ……!」


 ダースの左脇腹に水の槍が貫通し、血渋が舞う。


 そのままダースは倒れ、地面に伏せてしまった。


「トドメダァァァァァ!!!!」


 霧の中から団長が現れ、ダースの頭を割ろうと剣を振りかぶる。


「くそぉ……。もう一度ルシフェルに会いたかったなぁ……。」


 ダースが殺されそうになったその刹那。ギルドマスター・グリムが呟いた。


「奴を助けてやれ」


「承知。」


 その投げかけに直ぐ様、返答が帰ってくる。


 ダースは死への覚悟を決め、目を瞑った。


 しかし、死は訪れ無い。


 その事に驚き目を見開くと銀髪の美しい悪魔ルシフェルが、騎士団長の胸に血で作られた銀色の騎士剣を突き刺していた。

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