第5話 アマリアの一計
今日の授業は攻撃魔法に対する防御魔術についてだ。この授業は三人一組で行うことになる。
リフルはすぐにフランジーヌへ声をかけた。
「フランちゃん! こっちこっち! 私たちと組もう!」
「……」
フランジーヌはそのまま無視してやりたい気持ちになっていた。
だが、友人のアマリアは既にリフルと組んでいる。
ありとあらゆるメリットとデメリットを考慮した結果、フランジーヌは無言でリフル組への参加を了承した。
「フランちゃん、アマリアよろしくね」
「うん、よろしくねリフル」
「……せいぜい、
「もちろん! フランちゃんに恥はかかせないよ」
準備を終えた女教師サロンが皆を呼んだ。その手には棍棒が握られていた。
「はーい、それでは攻撃魔法に対する防御魔術について、授業を始めます」
棍棒をまるで指揮棒のように動かしながら、そもそも防御魔術とは何かを語りだす。
「――つまり、防御魔術とは大きく分けて二つになります。さて、復習も込めて、答えられる人は挙手を」
一斉に手が挙がった。
サロンはフランジーヌを指名する。
「はい。一つ目は、相手の攻撃魔術に合わせて真逆の魔術を放つことで中和させる方法。二つ目は、盾や障壁状の魔術で相手の魔術を防ぐ方法となります」
「素晴らしいです。そう、私たちは攻撃魔術に対し、この二つのどちらかで対抗することになります」
ですが、とサロンは付け加える。
「このどちらでもない方法で攻撃魔術に対抗する者たちもいます」
ざわつく生徒たち。リフルはそのどちらでもない方法について、見当がついていた。
その雰囲気に気づいたのか、サロンがリフルを指名した。
「リフル・パーネンスさんは想像がついていますか?」
「攻撃魔術を避ける、斬り裂く、あとは単純に耐えるがすぐに思いつきました」
「そ、そんなこと出来るのか?」
疑問の声をあげる生徒たち。避けるはともかく、切り裂くなどということが本当に出来るのか。
サロンはその問いに答えた。
「結論から言えば、出来ます。ですがそれには大きな危険が伴います。何故かわかりますか?」
誰も答えることが出来ず、沈黙が訪れる。
「リフル・パーネンスさん、答えることが出来ますか?」
「はい。そうなる状況というのは、きっと魔力の枯渇を気にしなければならない実戦だからです」
「続けてください」
「当たり前ですが、実戦は魔力が枯渇した者から倒れていきます。それは攻撃魔術も防御魔術も、回復魔術も使うことが出来ないからです」
一呼吸起き、リフルは続ける。
「ならば、なるべくその魔力の消費量を抑えるのは至極当然の流れ。危険を犯さなければ、得られないリターンです」
「その通りです。もっとも、そんなことが出来るのは戦いを専門とする人間のみですがね。例えばそう、このハイボルス王国軍の精鋭とか」
アマリアとフランジーヌはすぐにリフルを見た。
(確かリフル、《エーテル・ブレード》という魔術で相手の攻撃魔術を斬っていたはず)
リフルにはそれが可能だと、アマリアは知っていた。
守ることはせず、迷うことなくその対抗手段を行使したリフル。サロンの話を聞く限り、リフルも荒事の心得があるということになる。
(どこの誰に手ほどきを受けたかは知りませんが、しっかりと力をつけたのですね)
フランジーヌもあのとき見ていたから分かる。
あの動きは確実に
あれなら多少の危険は難なく跳ね除ける事ができるだろう。
……少しだけ心強く思った自分がいた。
(いけない。
だが、フランジーヌは心を鬼にした。
この立場だからこそ降りかかる危険がある。それに彼女を巻き込むわけにはいかなかった。
「それでは早速、実践に移ります。攻撃魔術は火球の
《シールド》と《プロテクション》は防御魔法の二大巨頭である。
単純な効果だが、極めようとすれば奥が深い。様々な派生型もあるが、まずはこの二種をマスターしてからの話になる。
三人一組で順番に魔法を撃ち合うように指示された生徒たちは、早速行動に移った。
「それじゃ早速誰からやる? フランちゃん? アマリアから?」
「
すると、アマリアは首を横に振る。
「私よりもリフルのほうが良いと思う。リフル、良いかな?」
「もっちろん! ありがとうアマリア!」
アマリアとフランジーヌの目が合う。
すると、アマリアは舌をちょっぴり出して、申し訳無さそうな表情を浮かべた。
「! アマリア……」
(ごめんねフランジーヌ。でも、このままじゃいけないと思うんだ)
アマリア・ラバンカーナは察しの良い少女だ。
だからこそ、フランジーヌとリフルの間に何かがあることを見抜き、多少強引な方法を取ることにした。
(フランジーヌ、自分で気づいていないと思うけど、さっきからすごくそわそわしてるんだよ?)
アマリアの助けもあり、リフルはとうとうフランジーヌと向かい合うことが出来たのだ。
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