第2話神棚

大抵の弓道部の道場には、神棚が置いてある。

弓引き、矢を放つ部活なので、事故が絶えないし、年間数人は矢に当たり、重症か運悪ければ死者が出る。

だから、弓道部員は、野球部がグラウンドに帽子を脱ぎ、一礼するように、神棚に手を叩き、頭を下げる。ニ礼二拍手一礼。

神棚は、交代でさかきを交換する。

部長の長谷川が神棚に頭を下げると、シャッターを開き、安土に的を並べ、道着に着替えて、無印良品のバームクーヘンを食べながら、コーヒー牛乳を飲んでいた。

「おいっすー!部長は早いね」

と、入って来たのは福田和也、2年生。

福田は着替えると、

「部長、これ、おばあちゃんにもらったんだ」

と、言って曲がり煎餅を取り出して長谷川に渡した。

福田はペットボトルのお茶を飲みながら、曲がり煎餅を食べた。

グラウンドからは、野球部員の声が聞こえる。

しかし、ここは弓道部。静と動の違いなのだ。

「ペキン、ダブリン、キャプテン、マラリア」

と、歌いながらやって来たのは中野大樹2年生。

「おっ、お二人さん。やってんな?今日は、俺のおごりだ」

中野は鼻息が荒い。手には、女子更衣室のカギがあった。

3人は中野が女子更衣室のドアを開き、中にはいった。

「これ、副部長の西村の道着だよ」

と、中野が言うと福田はその道着を深呼吸するように、匂いを嗅いだ。

「さっすが、舞ちゃんのミルクタンクの匂いはスゲ~や。部長もどうだい?」

長谷川は呆れて、部室でコーヒー牛乳を飲んでいた。

「オッス、長谷川。まだ、誰も来てないの?」

と、言ったのは弓道部のイケメン森田大地2年生であった。神棚に礼をした。

「福田と中野は、女子更衣室」

「また、やってんのか?」

「うん。舞ちゃんの道着がお気に入りみたいだよ」

「馬鹿だなぁ〜。あっそうそう、今日、女子からマシュマロもらったんだ、食べる?」

長谷川はうん。と、頷いた。

2人は、曲がり煎餅とマシュマロを食べながら、弦の手入れをしていた。

すると、顧問の小園先生が現れた。

「来月、地区大会だから団体戦は2チームだ。長谷川、他はどうした?」

長谷川は焦った。

女子更衣室から、馬鹿どもの歓喜の声が聞こえてきた。

小園先生は、女子更衣室を開いた。

福田は下半身に袴の一部を巻き、中野は胸当てを顔面に巻いていた。

2人は小園先生から鉄拳制裁を受けた。

神棚に手を合わさない2人には、キツいお仕置きであった。

「お前ら、退部にしてやろうか?」

「ちっ違います。福田君が無理やり……」

「おいっ、カギを持ってきたのは中野じゃねぇか!」

2人は罪を擦り付け合い、更に顧問から殴られた。

しばらくすると、かわいい西村舞と、竹内あゆみが現れた。

殴られた2人を見た西村は、

「福田君、中野君、歯が痛いの?」

「……」

「……ま、まぁ〜」

弓道部は、ガタガタであった。

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