第13話 フレムイ村での依頼

 体調を崩してから数日が経ち、俺は今フレムイ村に来ている。フレムイ村とは、俺が住んでいる家の近くにある村だ。その一角に俺の家がある。


「2人ともはぐれるんじゃねぇぞ」


 お父さんに連れられ、俺とリューネはフレムイ村を歩いていた。

 リューネとの関係も意外と良好を保っており、毎日普通に話すようになった。


 お父さんは両手で俺たちを繋ぎ、ある場所に向かっていた。


「お父さん……どこに向かっているんですか……?」


 そう聞いた時だった。


「おぉ! グラディウスさん。元気かい」


「あぁ。元気だよ。今日は初めて我が子を連れてきてみたよ」


 俺の質問なんて返すふりもせず、村人たちと挨拶をしていた。

 でも、想像以上だった。何が想像以上なのか。それは、この村の人たちのお父さんへの尊敬具合だ。それはもう莫大だった。


 すれ違う度に名前を呼ばれ、お礼を言われたり、お土産を貰ったりしていた。

 本当にお父さんは最強パーティーなのだなぁ、と少し実感した。


「お、良いとこに来た! グランディスさん、モンスターの討伐依頼したいんだが……」


「すまんな。今日はちょっと家族団欒の日でな。また明日来るよ」


「あぁ悪い! ありがとな!」


 そんなこんなで歩くこと10分。俺とリューネはある場所に着いた。そこは……


「グランディス……さん? ここって……」


「開拓前の超巨大畑だ!」


「……え?」


「やぁ、グラディウスさん。個別の依頼だったけど……ひとりじゃないのかい?」


 個別の……!?!?

 俺たちもしかして……


「そうなんだ。今日は初めてわが子2人を連れてきてみた」


 やっぱりだ……今日は……働かされる日だぁぁぁああ!!


 こうして、俺とリューネは村に新しくできた超巨大畑の開拓作業を手伝うことになった。


 その作業は力仕事以外の何物でもなく……


「はぁ……はぁ……グラリス……私の分少しやってちょうだい……」


「無理だよ……僕もこっちだけで……大変なんだよ……」


 桑を持ち、終わりの見えない大地を耕す。それはそれは辛かった。


「グラリス……これ魔法で何とか……ならないの……?」


「畑を耕す魔法なんて……知りませんよ……てか、これタダ働き……かな……」


「一応耕す魔法はあるし、タダではないぞ」


「「ひっ!」」


 俺とリューネの間にお父さんが現れた。

 ……聞かれてたのか。恐るべし最強。


「じゃあ……グラディウスさん。なんで魔法使わないんですか?」


「植物とか食べ物って言うのは時間が大事なんだ」


「「時間?」」


「そうだ。人が手間隙かけて作った方が良く育つし、美味い。ただそれだけ。でも、それだけで価値が2倍にも3倍にもあがる。美味さもな」


 そうなのか。意外と今後ためになりそうだ。

 ……あ、タダじゃないって言ったよな?


「てか、タダじゃないんですか!? この働き!」


「おいおい。もっと子どもっぽく手伝う気になってくれよ。まぁ、今度好きなもんでも買ってやるよ」


「本当ですか!?」「本当!?」


 俺とリューネはその言葉を聞いて、やる気フルスロットルになった。


 グラリスに転生して数年。俺は当たり前に暮らし、当たり前に生きている。

 そして、当たり前にお父さんはいるし、お母さんもいる。家族もいる。


 グラディウス。彼はもう俺の大切なお父さんだ。それを身に染みて感じた俺は、なんだか切ない気持ちになりながら畑仕事を頑張った。


 ──────


「今日はありがとね」


「は……い……」「どう……いたし……まして……」


「あははは! まだまだ大人になるには遠いな2人とも」


 大人……か。大きくなってもこうやってみんなで笑っていたいな。前じゃ考えられなかったこの幸せ。全力で楽しもう。


「まぁ、いい社会経験になったんじゃないか?」


「そう……ですね……」


 それから後日、俺は大きな本を、リューネは数着服買ってもらいました。

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