第9話 新しい家族

 翌日。いつもなら俺は朝8時頃には起きているのだが、今日起きたのは10時半だった。


 昨晩はなかなか眠りに付けず、寝付いたのが恐らく夜中の3時頃であったためかなり起きるのが遅れてしまった。


 五歳だったらもっと寝た方がいいとは思うが、俺が特別なのかあまり寝なくても大丈夫だし、ちゃんと成長もしているからまぁいいかなと思っている。


 そして今日は……家族が増える日。

 昨晩考えに考えまくったがあまり有力な案は出て来なかった。


 俺は手すりを使いながら1階に降り、「おはようございます」と朝の挨拶を告げた。


 いつもなら「おはよう」「おはようございますグラリス様」と帰ってくるのだが今日はやけに静かだった。


 なんだなんだ? 寂しいじゃないか。ちょっと寝すぎたってそんなに冷たくしないでよ!! もう!!


 ちょっと悲しかったので早足でリビングまで向かった。

 そこには見たことの無い光景――いや、人が立っていた。


 金髪ロングの清楚系美少女。第一印象は誰がどう見ても、恐らく可愛いになるだろう。


「あら、今日は遅かったのねグラリス」


「はい……なかなか眠れなくて……っていうかそこにいる金髪ロングの清楚系美少女はどちら様ですか?」


「……ちょっと何言ってるか分からないがいいわ。昨日言っていた新しい家族はこの子よ」


 ……彼女が……新しい家族……? 彼女は一体誰なんだ……なんてことはどーでも!! いい!! うっれっしい!!


 こんな美少女と家族だと!?!? 大きくなったらもっと可愛くなって自慢の家族……って家族じゃダメじゃないか。なんか……一気に……やめておこう。


 俺が脳みそフル回転で語っていると、エイミーがご親切に紹介をしてくれた。


「こちらのお方はグラディウス様のご知り合いのパーティのアリシャ・ストラス様のお子様のリューネ・ストラス様でございます。年齢は四歳。魔力属性は【風属性】となっております」


 そうかそうかそう言うことか。


「リューネ様は親族全員冒険者となりまして、こうなんて言うか、言いにくいのですが、ダンジョンで両親を無くしてしまってグラディウス様が引き取ることになりました」


 なるほど……この世界ではこういうことは普通なのだろうか。まぁきっと両親が亡くなって辛いだろうから仲良くしてあげよう。それが俺に出来る最善の行動だろう。


「エイミー説明ありがとう。俺の名前はグラリス。今年で五歳だ。魔力属性は……あんまり使いこなせてなくて言いたくはないけど……【全属性】だ。とりあえずこれからよろしくね」


 俺はそう言ってにこっとしながら右手を伸ばし握手を求めた。てか、さっきから全く話す様子がないのだが……


「こんな時間に起きるなんてその【全属性】が勿体ないわね」


 四歳児冷酷すぎませんか!!!!????

 開口一番それですか!!!!????


 リューネは俺が伸ばした右手を見るや否や、かなりの毒を吐き捨てふんっとそっぽを向いてしまった。


 なんだろう……告白してもないのに振られたみたいだ。ちょっとマジで悲しいんだけど……

 俺は静かに手を下ろした。


 そんな俺をフォローするかのようにお母さんが話し出した。


「ま、まぁリューネちゃん。うちは部屋が少なくてグラリスの部屋とエイミーの部屋どっちかに2人で寝てもらおうと思うんだけど……」


「エイミーさんでお願いします」


 いや即答!! 会って1分そんなに俺の事嫌い!?


 お母さんの話を切るようにリューネはそう答えた。

 お先真っ暗だぜこりゃ……


「これはどうでしょうか? 私のお部屋をリューネ様にお貸ししますので、おひとりでお使いください! 私はグラリス様がちょっとばかし可哀想なのでグラリス様のお部屋で寝たいと思います! 大丈夫ですか?」


「うん。大丈夫よ」


 エイミー……優しいのはわかるんだけど……傷をえぐられてる気がするよ……


「……じ、じゃ、エイミー今日は一緒に寝よう……」


 それから日が暮れるまで俺とリューネの間で会話は全く生まれなかった。


──────


 午後9時。俺の部屋にて。


「グラリス様元気だしてください!」


 業務を終え、寝巻き姿のエイミーが励ましてくれていた。

 意外と寝巻き姿のエイミーを見るのは初めてだ。

 ベッドの上に2人で座る。


 励まされている中、俺の思考を制御していたのはリューネでもなくエイミーでもなく……おっぱいだ。


 そう……今エイミーはノーブラなのだ!!!

 初めて会った時に比べて見違えるように成長したこの豊潤な胸!! 寝巻きのダボッとした感じなのにも関わらずぽっこりとお山が2つ!!


 あぁ……死ぬ前に一回くらいは揉みてぇなぁ……って俺はいつからこんな変態主人公になってしまったのだろうか。


 こんなんだからリューネから嫌われてしまったのかもしれない。もしかして俺の心読まれてる? いやぁそんなわけ……ちょっとありそうで怖い。


「……ありがとう……エイミー。もう僕の理解者はエイミーだけだよ〜〜」


 俺はそう言ってエイミーの胸へとダイブした。胸へと、と言うよりかはおっぱいへと。


 俺の顔が豊潤な2つのお山に挟まる。

 エイミーはもう19歳になる。この世界では、男は15歳、女は20歳で大人になる。いわゆる成人するということだ。


 大人一歩手前のエイミーちゃんの心はとてつもな〜く広かった。……そして大きかった。


「んっ//グ、グラリス様。私がついていますよ!!」


 エイミーはお山に埋まった俺の頭をわしゃわしゃと撫でてくれた。


 いきなり飛び付いたせいでちょっとばかしえっちな声が出てしまい、ちょこっとだけ恥ずかしそうにしているエイミーであったが、相手が五歳児だということを思い出しすぐに冷静な顔つきになった。

 大きくなってもこうやって飛びつきたい……


 俺はお山を十分に堪能するとエイミーがまた俺に話しかけてくれた。


「恐らくですけどリューネ様は、魔力属性が【風属性】なのを気にしていらっしゃるのだと思います。一目見ただけでとてつもない量の魔力をお持ちでしたので、あまり目立たない【風属性】というのが気に食わなかったのでしょう。そのうちグラリス様にも心を開いてくれますよ!」


 なるほど……【風属性】は確かに不遇な扱いをされているらしい。習得が楽な分、他の属性には劣る部分が沢山ある。


 だとしても俺が【風属性】の魔法を使っている感じそこまで使いにくさはないし、弱いとも思えないんだよなぁ……


 それってもしかして俺が上級魔法使えちゃうから!? リューネちゃんに教えてあげちゃおっかな!?


……なんてことしたら多分一生話してくれないだろうからそれはやめておこう。


「なるほど……明日から頑張ってリューネの心開かせてみせますよ!」

「はい! きっとグラリス様なら出来ます!」


 エイミーはもう一度わしゃわしゃと頭を撫でてくれた。

 頭を撫でられるのは割と好きだ。いや、めちゃくちゃ好きだ。お山ダイブと張り合うくらいには。


 こうやってエイミーが俺に気をかけてくれるのはいつまでなんだろうな……


 ふとそんなことを思った時、「もうそろそろ寝ましょうか」と言ってエイミーは布団の中から両手を広げて待っててくれた。


 俺は不安なんかそっちのけでエイミーの腕の中にはいっていった。

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