第2章 少年期 魔術・剣術成長編

第8話 剣術と魔法

 俺は五歳になった。


 魔力属性が分かり、それから1年間、俺はエイミーに魔法を教えてもらい猛特訓した。

 今では【風属性】【火属性】【水属性】の魔法が使えるようになった。


 無属性魔法の練習はまだお預けだ。理由は無数に種類があるらしく、実戦の場での練習が一番身につくらしいからだそうだ。


 肝心の【雷属性】はまだ静電気すら出せないままですけど。


 魔法の練習と並行して、お父さんが休みの日には自分から「魔剣士になりたいです!」と志願し剣術の練習もしてもらっていた。


「ほらグラリス! もっと腰を下げろ! そんなんじゃ強く踏み込めないぞ!」


 お父さんはかなりスパルタだった。

 剣術の特訓が始まるまでに身体作りと題して筋トレランニングを3ヶ月間やらされた。まだ四歳半だったぞ!?!?


 まぁ恐らくだがこっちの世界の人たちはかなり成長が早い気がする。俺が異世界人で記憶もバッチしだからというのもあるかもしれないが。


 こうして五歳にしてムキムキ美ボディを手に入れた俺は、晴れて剣を持たせて貰えることになった。まぁ木刀だけど。


「グラリス! そんなんだとすぐモンスターにやられちまうぞ! 俺の動きをよく見ろ! 見て予測しろ!」



 そう言われながら俺はお父さんに木刀で弾き飛ばされた。

 いてててて……。容赦ねぇな! おい! それでも子どもを愛する親なのか!

 って言っても修行を持ち出したのは俺だから弱音なんて吐けない。俺はもっともっと強くなるって決めたんだ。


 お父さんによれば、ここ最近、凶暴化したモンスターが多く出現するようになったらしい。今のうちから鍛えとかないとな。


「……くそぉ……! と〜りゃ〜〜!!」


 ポコンっ……


 俺の渾身の一撃はおしりをポリポリと書きながら木刀を振る男に弾かれて幕を閉じた。


「はぁ……お父さん僕どうしたらもっと強くなれるんですか?」


 弾き飛ばされたまま地面に寝っ転がり俺はお父さんにそう尋ねた。


 お父さんはニヤニヤしながら俺の横に一緒に寝っ転がった。


「グラリス……聞きたいか……?」

 お父さんが耳元で囁く。


「……はい……お父さん……」

 と頷く俺。


「それはな……愛だ!!!!!!!!」


「なるほど……愛ですか!!!!!!」


 ……期待はずれだった。いや、薄々気付いていたのかもしれない。俺のお父さんはかなりの実力者だが、それと比例してかなりのおバカさんなのだ。


 まぁ、期待はずれではあったが少し共感するところもあった。


 お父さんは「わっはははは」と大きな口を開けて笑っている。


「俺の成長の糧となった愛の話……聞きたいか?」


「……聞きたいです……」


 大丈夫ですとも言えず俺は軽く一時間、今のお母さんに当たるラミリスの惚気話を聞かされたのであった。


──────


 次は魔法の練習だ。エイミーはお父さんに比べてかなり緩く、沢山褒めてくれる。俺は褒められて伸びるタイプだから魔法の方が得意んだんだよ!! きっと!!


「グラリス様その調子です!! もう【風属性】の上級魔法を使えるようになったなんて感心してしまいます!」


 魔法の中にも階級があるらしく、今エイミーが言った上級魔法はランクで言えば上から二番目にあたる。

 上から、超級、上級、中級、下級、の4種類の階級があるのだ。


 俺の成長具合で言うと、

【風属性】上級

【火属性】中級

【水属性】下級

 と、言ったところだ。それ以外は聞かないでくれ。


「いやいやそんなことないですよエイミー。【風属性】は習得が簡単って言いますし、なんせ僕はエイミーと同じ【雷属性】が使いたいんです……」


「まぁ、そう落ち込まないでください!! あとグラリス様ひとつご提案があります!!」


 提案? なんのことだろう。魔法関係か? それとも別?


「いいですけど……なんですか?」


「……あの……えっと……敬語……じゃなくて……もっと気軽に……話して欲しいなぁ……と思いまして……。どうですかね?」


 エイミーは肩くらいまである髪の毛をくるくる指でまわしながら少し頬を赤らめて言った。


 ……なによ、可愛いじゃんかよ。五歳児に照れるエイミーちゃん……惚れちまいそうだぜ!!


「エイミーがいいなら……いいよ!」


 俺がこっちの世界に来て初めてタメ口をきいた。品の高そうな家柄だったから自粛していたが、かなり久しぶりだ。


 俺が応えるとエイミーは少しピクっと肩を揺らし、「あ、ありがとうございます! グラリス様!」と目を輝かせて嬉しそうにそう答えた。


「じゃエイミーももっと気楽に話しかけてよ」


 と、おそらく普通の返しをしたのだが、「それはまだまだ早いです。グラリス様がう〜ん……まぁ、十五歳くらいになったらいいですよ!」


 十年後か……遠いな。俺の生きてきた三倍? いや、でもよく考えてみれば俺はもう20年も生きていることになるのか……早いな……。


 こんな具合に人生という行為に浸りながら「分かった十五歳……十五歳になったら絶対だからね! エイミー!」とにひひと笑って返事をした。


 その返事を見たエイミーはとても嬉しそうに「はい!」と言って魔法の練習が再開された。


──────


 練習を初めて約一時間。最近は毎日練習の成果が出てる気がして毎日が楽しくなっている。

 俺は魔法を引き出しから引っ張って出してくると言うコツを完全に掴んだ。


 意識を集中させると身体の中にある沢山の光の粒が見えてくる。


 その中には黄色や茶色、紫色と言った色も見えてくるがそれは引っ張り出しても魔法を発動することがまだ出来そうになかった。


 だからもっともっと練習が必要だな。


「ところでエイミー? 他に知ってる魔力属性は何があるの?」


「えーと、私が知ってる中だと【闇属性】とか【光属性】とか【地属性】ですかね? 見たことは無いのでどんなものかは分かりませんが」


 話を聞く感じ、まだまだ沢山の魔力属性がありそうだ。

 目指せコンプ!! と言いたいところだが今の俺にそんな力は恐らくない。日々精進って感じだな……。


 こうして今日はいつもより一時間多く魔法の練習をしました。


──────


 その日の夜……。


「「「いただきます!」」」

「はーい、どうぞ召し上がって」


 楽しい楽しい夜ご飯の時間だ。俺はお母さんの料理が冗談抜きで世界一うまいって思ってる。

 今日のご飯は日本で言う所のカレーと言ったようなところだろうか。


「そう言えばグラリス。このお家に家族が増えるわよ!」


 ……っ!!!


 俺は口に含んでいたものを全て吹き出しそうになった。

 そんな軽々しく教えることなのか!? お母さんの体調はもう大丈夫なのだろうか。どういうことだろう……。


 こういうこと言っていいのか分からないが、子作りしているであろう音は夜更かししている俺でも聞いていない……


「お母さん……それって……どういうことですか?」


 俺は口の中のものを急いで飲み込みお母さんに聞いた。


「まぁ確かに私の身体が身体だものね。そう言うのも無理はないわ」


 そう言ってお父さんと目を合わせ二人で「ははは」と小さく笑った。このことはエイミーも知らなかったようで、手に持ったスプーンが1ミリたりとも動いていない。目が漫画の世界のように点になっていた。


「まぁ、グラリス。明日になったらわかるさ」


 お父さんのそのセリフのせいで俺は初めてなかなか寝付くことが出来なかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る