第14話 村の武道大会前夜②

私は村人に囲まれているエマの様子を、人だかりの外から眺めて、彼女が元気そうにしているのが視認でき、嬉しかった。元気そうだ。


エマに話しかけるには、人だかりがある程度解散するのを待たないといけない。時間がかかることが容易に想定できるので、ネロは、いったん踵を返して、炊き出しの場に向かおうとした。すると、エマを囲む人だかりから、歓声が上がった。


「エマ、武闘大会に出るのか!?凄いな!体は大丈夫なのか?!」

「そうなのよ!なんか、とても体が軽いし、今なら、どんな魔獣の狩りをしても、必ず狩れる自信があるぐらい、体が絶好調なのよ!!あぁー早く狩りに行きたいわ!だから、明日の武闘大会は絶対出るわよ!」


「「「おぉーーーー!!!」」」


「はははは!凄いな!とにかく、エマが無事で良かったよ!近くの森に行って、月見草を取ってきたらしいな。」


「う、うん、結局一本も取れることなく、帰ってきちゃった。ごめんなさい。みんな。心配かけて。」


「本当だよ、エマがいなくなったって言って、村全体が、それはもう大変だったんだから。どうして月見草を?」


「つ、月見草は、回復効果があるでしょ。だ、だから、武闘大会用に取って来ようと思ってこっそり行っちゃたの・・・森の中で道に迷って、転んだりして、何とか村に帰ってこれてよかったわ。ははは・・・」


「本当に、心配したんだよ!エマ、頼むから、こんなことはもうしないようにしてよね!」


やいのやいのと、人だかりのみんなが話をしている。


まぁ、エマは、うまくごまかしているようで、良かった。エマも苦笑いをしながら、話をしている。本当のことを話したら、大変だろうからな。村の大人が、本当のことを知ってしまうと、今後、エマが狩りに参加したりすることは、もうないようにも思う。けども、私からも、エマには「決して村の外に勝手に出るな」としっかりと釘を刺す必要があると強く思いつつ、その場を離れ、夕食をもらい、食事をすることにした。


           ◇


食事を済ませ食器を返却し、ぼんやりと村の中央で、空の星を見ていると、マークさんとアクトンさんが私の所にやってきた。マークさんとアクトンさんは、村の七剣の二人で、この村の中心的存在だ。特にアクトンさんは、魅力的な妙齢の女性で、次期村長として目もくされている、厳格にして、公平、こうと決めれば、こうと突き進む、頭が固さと恐怖のシンボル的存在だったりする。マークさんは、いつも気にかけてくれる、優しいお兄さんの存在だ。ちょっと押せば倒れる感じな所が、頼りなかったりする。これからの人だな。このような二人が、突然私の所にやってきて、私はとても驚いた。


「ネロ。今ちょっと話をしていいかな?」


マークさんが、私に真剣な顔と声で、私に聞いてきた。私は若干身構えながら、「どうぞ。」と返答した。


マーク「アクトンさん、ここで話しますか?」


アクトン「いえ、ちょっと三人でゆっくりと話がしたいから、私の家に来てもらっていいかしら。食事は済んでいますか?」


私は短く「はい」と応じた。


場所を変えて、個別で話がしたいというのには、少し圧を感じるが、何か重要な話であるなら、致し方ないな、と思い、二人に付いていった。


村の人々は、大人になると自分専用の家を持つことを許される。私はまだ子供で孤児なので、自分の家は持たない。孤児の男の子たちは、雑魚寝で男子宿泊用の家に寝泊まりをする。そこに便宜上、個人スペースもあり、個人所有物も保管できるのだが、個人スペース用の線が引いているだけで、プライバシーなんて皆無だ。大人は、今後、家族を持つこともあるだろうし、年齢が重ねる毎に、周囲への責任も増えて、自然と持ち物も増えてくる、という理由で、この慣習が作り上げられた。アクトンさんも、もちろん個人の家を持ち、様々な村人の相談を受けることが多く、自宅に招いては、悩みを聞いたりしている。お婿さんは募集中だとか。それはいいとして、だから、私がアクトンさん宅に連れられているのは、この村では結構重い意味合いを持っていたりする。重大案件の香りだ。なので、私も若干緊張するし、周囲も、アクトンさんとマークさんに連れだって私が歩いているのは、かなり異様な光景として目に映っているだろう。


アクトンさん宅に着くと、私は近くの椅子に座るように勧められて、座ることにした。


アクトンさんは徐おもむろに口を開いた。


「ネロ。今日は少し、あなたに聞いておきたいことがあるの。」


「はい、何でしょうか?」


「ネロ、あなた、ケンスとマーカスとカートに何かやったのかしら?」


『やった』という表現は私が三人に何かをされていることを、問題視しているのではなく、私からの行動で、ケンス3人組に何かしらの影響を与えたことを意味している。アクトンさんが、私と3人の関係を正しく理解しているなら、普通は逆の『何をされている』との質問をするはずだが、と心の中で思った。まずはアクトンさんの質問をもう少し分かりやすいようにしてもらうよう求めるべきだろう。


「何か、とはどんなことでしょうか?」


「いえ、私も信じがたいのですが、あなたがケンスとマーカスとカートに暴行を加えた、と言って、三人と彼らの親からクレーム。。。というか相談が来たの。まさか、あなたがあの三人に暴行を加えるなんて、私にとっては、想像もできないし、理由も分からないし、状況も分からないし、全てが分からないの。全ての物事には登場人物から見たストーリーがあるから、人間関係の問題なら、しっかりと、全員の話を丁寧に聞いて、判断したいのよ。だから、三人の話は聞いたけど、ネロの話も聞きたいの。とにかく三人が言っているのは、昨晩に突然ネロが三人を不意打ちで攻撃をしてきた、と言っているんだけど、まずはこれは本当なのかしら?」


「はい、本当です。」


「そ、そうなのね。温厚なあなたには、信じられない行為だけど、り、理由を聞いていいかしら?」


さて、どう話したものか。あの3人組が、エマに『ネロにサラマンダー石を取りに行けと言って、取りに行かせている』との虚偽の情報を伝えて、エマは実際にロック砂漠に行ってしまった。その情報を聞き出すのに、私が3人への尋問の時に暴力を振るいました、と私が言うと、全ての真実は詳つまびらかになることにはなるが、その場合、エマは絶対立入禁止のロック砂漠に行ったことが、公のものとなり、エマは今後狩人として活動できなくなる可能性が出てくる。本人もそれが分かって、先ほどの話では、近くの森に行っていた、なんて言ってごまかしていたからな。理由か・・・。はてさて、どう答えたものか・・・。


「・・・。」


「どうしたの?言えないの?」


「いえ、実は、ケンスたちに私はいじめられています。言っても改善がないので、暗がりを利用して闇討ちしてして、懲らしめて、二度と私に関わらないでもらいたい、と言いました。」


「な、なるほど。それは、過激な話ね。三人と彼らの親は、ネロは孤児だから寂しいだろうし、サポートの必要な子だから、一緒に行動しないか、と親切心で誘っていたと主張しているのよ。それを無用な親切心だと逆恨みして、あなたは、暴力をもって反論した。そういうこと?」


「アクトンさん、それは曲解が過ぎます。」


マークさんはその時点で、言葉を挟んできた。


「私が以前に見たのは、ケンスがネロに対して火炎魔法を使用し、非常に危険な状況を生み出したことです。エマがそれを助けなければ、ネロは死んでいたかもしれない、とエマは証言しています。そのあと、私はケンスに、村の中での魔法の使用は禁じられているはずだ、と厳しく、しかっています。つまり、以前より、ネロはケンスに『親切心』というより、悪質ないじめを受けていたと分かります。」


「はい、その話は伺っています。マーク、あなたはその時にケンスの言い分を聞いたのですか?」


「いえ、魔法を使用したことがルールに反している、と言っただけです。」


「あなたも相手の言い分も聞いておかないと、指導が入らないわよ。全ての行動には理由があるの。それをしっかりと聞かないと、問題を逆に拗らせるものなのよ。私には、マーク、あなたのクレームも三人から入っているの。あの時、ケンスは、ネロに火炎魔法の実演をしたいだけだったらしいの。当てるつもりもなかったし、エマが邪魔しなくとも、当たることもなかったらしいの。それをエマが過剰反応をして、エマがその実演を邪魔したらしいの。逆にエマが危なかったらしいわよ。あなたは、ケンスの魔法発動の前から、その場にいて、やり取りを聞いていたり、見ていたりしていたのかしら?」


「い、いえ。いません。魔法と魔法がぶつかった時に、凄まじい轟音がしたので、かけつけたのです。事情はエマから聞きました。」


「だからよ。ケンスの視点では、全く違うストーリーが展開されていたのよ。それを聞かずに叱るだけをすると、問題になるのよ。三人と彼らの親もかなり怒っていたわよ、マーク。」


「す、すいません。けど、しかし!」


「けども、しかしもありません。とにかく、今はあなたの問題より、ネロの問題を解決したいと思います。さて、ネロ。あなたはどうしたいのかしら?」


「どんな理由があろうとも、僕が彼らに暴行を加えたことは非難されるべきことであり、闇討ちのような行為に出てしまった僕の悪行は、彼らに村での生活の安心安全が担保できず、彼らの村への愛着、貢献、信頼を大きく損ねるものになってしまうものだったのでしょう。だから、親も、しっかりとした謝罪の上、このような行為の再発防止を、アクトンさんや村のリーダーに強く要請していると思います。なので、僕からの彼らへの真摯な謝罪が必要かと。」


「そ・・・そうね。わかったわ・・・。ネロ。あなたが、そんなに冷静に、この状況を分析して、理解しているわね。私は正直とても驚きました。それほどの冷静な視点と反省の念があれば、彼らと彼らの親も納得してくれると思いますわ。マーク、あなたも同様にそこで謝罪をすれば、丸く収まると思うけど、いかがかしら。」


マークは納得がいかないとの表情をしながら、反論した。

「けども、ルールを破ったのはケンスですよね?そこは親にも本人にもわかってもらわないと、これからの村の運営に支障をきたすと思うのですが。」


「マーク。あなたの叱責で彼らは大人に対して、不信感を持ってしまっているのです。まずは相手の不信感を取り除いてから、このルールの徹底をすればいいのではありませんか?大人が理屈で話を通すよりも、相手に寄り添って、まずは謝るところは謝り、その後に相手が自分の間違った行いを認められるように、気持ちを整理させていけるようにしていくべきだと私は思いますが、どうですか?」


「ぐ・・・、わ・・わかりました。私も謝罪を・・・いたしましょう。」


「では、善は急げです。早速行きたいと思います。ネロ、マーク、よろしいですか?」


ネロ「はい、よろしくお願いします。」

マーク「分かりました。」


アクトンさんの采配に、私は全く納得していない。マークさんへの指導も間違っていると思う。暴力がいけないから、まずは暴力をしたことを謝罪させるなら、ケンスの魔法を使ったことが悪いなら、まずはその魔法を使ったことを謝罪させるのが筋じゃないか。子供だからとか、そんな理由は筋が通らない。


おそらく、三人と彼らの親の影響力が大きいのだろうか。親たちが、この村の様々な所で要職に就いているのは知っている。だから、私たちの謝罪を持って、この問題の解決を図りたいんだろうと思う。まぁ、この村の縦社会においては、よくある話だとは思う。村のリーダーたちも困っているのなら、彼らの為にも早く丸く収めるように話をしてあげる方が、村の為でもあることを考えると、私心を殺して、村の為に行動することにしよう、と私は腹をくくった。


そうして、全員が一堂に会する場で、私は謝罪をすることにした。しかし、それで収まる話ではなかったのを、思い知らされた。子供が子供なら親も親だった、ということだ。


「今回は、僕がケンス君、カート君、マーカス君に闇討ちのような行為で、暴行を加えたことで、彼らの村での安心安全を大きく揺るがしてしまっていると思います。これから、こんなことのないように、してまいります。本当にすいませんでした。」


カートの両親が吠えた。


「ふざけるな!!!!謝って済む問題なら、私たちはこんなところにまで出てこない。カートは頭を地面に叩きつけられて、蹴られて、あまりの痛みに気絶までしたんだ!死んでもおかしくなかったんじゃないのか!こんなにも村の為に尽くし、村人の為に魔獣の狩りに出て、疲れ切り、休憩している所を闇討ちする。こんな横暴が許される村なのですか、ここは?!」


マーカスの両親も同様にイライラをぶちまけるように話をし出した・


「そうだ!私の子供は、狩りでヘトヘトのところ、腹部を強打され、悶絶して気絶したらしい。不意打ちだから、防御もままならない。本当に悪辣非道な行為だと断じざるを得ない。こんなことを、村のリーダーたちはどう判断されるのか、よくお聞きしたい。」


そして、最後にケンスの両親が怒りの心頭の様子で、猛烈な抗議を行った。


「村の自治が崩壊している!こんな凶行が行われる村に、私は自分の子供を安心して過ごさせることができない。私は村のリーダーの即交代と、そこの子供、ネロの追放を強く要望する。」


あー、そこまで言うんだね。ケンス・カート・マーカスは一体、どんな話を親にしたんだろうか?ここまで激怒する親がいるから、彼らの子供が増長することを、親が分かっていないように思う。さて、これをどう収めたらいいものか。。。と、ちらりとアクトンさんに視線を送る。アクトンさんは、顔面蒼白だ。


アクトン「待ってください。ネロも大切な村の一員です。暴行は行き過ぎた行為ですが、彼には彼なりの理由もあったのです。情状酌量の余地はあったと思います。追放は行き過ぎです。」


ケンスの親は、静かにそれでも打ち震える怒りで体を震わしながら応えた。


「では、私の子供がこれから、安全であるはずの、生活が守られるべき場所であるはずの、この村の中で、常に気を張りながら、自衛の為の行為をし続けなければならない、と言っているのですか?この村の安全を担保するのが、村の執行部の役割のはずだ!!あなたたちは一体、どうするつもりなんですか?」


「い・・・いえ、そこまでは・・・。」


アクトンさんも言葉が継げず、ケンスの親の言葉に圧倒されていた。


これでは、解決しないな。さて、ここからは、私が私なりの解決策を提示するしかないな。


そう思い、私は、ボソッと呟いた。

「うるさいな。」


一瞬の静寂の後に、猛烈な台風が襲ったかのような非難の言葉が続いた。


「何!!??貴様、今何と言った!?」


とケンスの親が、私の言葉に激怒して、噛みついてきた。


「うるさい、と言ったんだ。あんたらのことを、僕は『毒親』と呼んでいる。過保護すぎる。子供の喧嘩に一々突っ込んでくるな。


僕もあんたたちの子供に、月見草を取ってこい、と言われたんだ。それで死にかけた。もちろん、最終的には僕の判断で森に行ったんだから、文句は言わない。3人の事は責めない。けども、子どもの世界には子供の世界の落としどころがあるんだよ。親が一々突っ込んでいい内容じゃない。


今回の問題の奥には、僕にはマーゼに対する差別意識があると思う。つまり、マーゼは守られて当然。魔力を持つ者たちによって守られなければならない。だから、僕が彼らに暴行を加えた唯一の理由は、僕の邪魔をするな、と言いたかっただけだ。元から、僕に変なちょっかいをしなければいい話を、ケンスは僕に『親切心』を押し付けてきたんだ。対等に接していれば、そもそもこんな問題は起こらなかった。


まぁ、その差別意識は悪いんだけど、その根っこの辺りに、確かに『親切心』があることは否定しない。けども、その『親切心』は、やはり、このマーゼに対する魔力のある人間の傲慢だと僕は思う。マーゼ側も、ってこの村では僕ぐらいなんだろうけど、まぁマーゼに関わらず魔力の小さな人間にも十分に戦う力があることを証明すれば、この問題は解決すると思うけど、どうかな?」


ケンスは、全く意味が分からないと主張した。


「ネロが、何を説明しているのか、俺には全く意味が分からない!!!まるで、ネロが俺たちを襲撃したのは、まるで俺たちが原因を作っているかのように話をしているように聞こえるぞ!こんな暴論が、この村で通るわけがないだろ!お前、全然謝罪の意思がないじゃないか!!まずはしっかりと誠心誠意謝ることからしか始まらないだろ!!ふざけるのもいい加減にしろ!謝れーーーー!!!!!」


ケンスは目の前の机を蹴り、立ち上がった。


残念ながら、僕の発言は、火に油を注ぐ結果になってしまったようだ。まぁ、こうなることは予想の範疇だが。そう思い、私は言葉を継いだ。

「分かった。悪かった。そして、もう僕に関わるな。僕も関わらない。それで以上だろう?何をそんなに感情的になる?」


ケンスが肩で息をしながら、息巻いているのを、落ち着けさせ、ケンスの親は、冷静を装いながら、静かに話を切り出した。


「君は、村の子どもたちに暴行を加えた。そして今は反省している。だから、もう暴行はしない、と言う。しかし、私たちにはその再発防止の確信が持てないんだ。君の今の言葉には、その誠意が見られない。だから、君の暴力的な行為が止まるかどうかの確信が、私たちにはつかないんだ。」


その話になったので、私は自分の解決策を披露することにした。

「なるほど。分かりました。では、こうしましょう。明日の武闘大会。僕がケンスと勝負をして、圧倒的に勝つとします。そうすれば、僕はケンスに守られることはもう必要がないことを証明されます。僕には、彼の庇護も助けも、関わり合いも何も必要ありません。そんな、ボコボコにできるぐらいの、力のない大したことない人間をイジメるほど、僕は小さい人間ではないです。だから大丈夫です。ケンスたちのことはもう放っておきます。僕がその『凶行』に及んだのも、僕が彼らからちょっかいをかけられていたからですからね。僕が強いと分かれば、もう彼らが僕にちょっかいをかけることもなくなるし、僕がイラつく理由もなくなるでしょう。


しかし、僕が負けた場合は、ケンスに保護されることが必要であることを示すので、今までの僕の発言や振る舞いは、ただただの無理解な人間のどうしようもない子供のような発言であることが証明されます。僕の『凶行』は、八つ当たりで逆恨みのようなものだと判断されます。だから、村の安全安心を揺るがす、よく分からない、僕のような人間は、この村から追放する。それでどうですか?」


アクトン「ちょ!ちょっと待って!ネロ、何バカなことを言っているの!?死にたいって言っているの!?村から追放された子供に待つ末路なんて、死、それしかないのよ!今の言葉は撤回しなさい!」


ネロ「いえ、もういいです。議論を尽くしても、この部屋の誰も納得しないでしょう。僕の言葉が正しかったのか、ケンスの言葉が正しかったのか、拳で決めましょう。どうだ、ケンス、それでいいのか?」


ケンス「お前、死にたいのか?」


ネロ「いや、僕は自分の言っている発言の正当性を一遍も疑っていないよ。まぁ、明日楽しみにしているよ。ちなみに、僕が勝ったら、君たちはここで安全が保障された状態で住んでいいんだからね。この勝負、君たちに圧倒的に有利な条件だと思うよ。」


ケンス「どこまでも、お前は俺たちをコケにする気なんだな。」


ケンス母「ケンス、もう止めなさい。分かりました。それでいきましょう。それで子供たちの安全が担保されるなら、そうしましょう。」


アクトン「ちょっと待ってください!!こんなことが許されるはずがありません!最終決済は、村長が出します!こんなことは容認できません!」


ケンス父「アクトンさん、あなたの村七剣としての貢献は理解していますが、子ども同士の喧嘩に大人が口出しすべきじゃない。子供たちがそれで納得しているんだから、そうしましょう。みなさん、では、これでこの話はお開きにしましょうか。」


アクトン「ま、待ってください。もとはと言えば、あなたたち大人もこの喧嘩に口出しをしているではないですか?!あなたたちが介入しているからこそ、ネロも、ここまで自分を追い込まなければならない条件を提示しているんじゃないですか?!あなたたちは、村の子供の命を何だと思っているんですか!?」


カート父「では、村の子供たちの安全をどう思っているのですか?アクトンさん。村の多くの子供の安心した生活と、子どもの一人の命。これはどちらも選べません。だから、お互いの意見を、公然の場ではっきりさせようとするネロ君の意見に、私は共感します。ネロ君は、要は勝てば、全て丸く収まるんじゃないですか?アクトンさん。もうみなここまで納得している話なんだから、邪魔をするものじゃないですよ。今まで通り、またこれからも、村の護衛と食料調達に精を出していただければと思います。」


アクトン「村七剣の行動を侮辱するつもりですか?護衛と食料調達だけが、私の仕事ではない!!!村の発展こそが私の使命だ!」


マーカス母「では、その使命を果たして下さい。では、私たちも明日が早いですので、いきますね。夜が遅すぎます。子供の成長に、こんな夜更けに話し合いを始めること自体がよくないわ。アクトンさんの、今回の采配にも少し疑問には感じますわ。」


アクトン「あなたたちが早急な解決を望んだからじゃないですか?!家で待っていると!!」


ケンス父「もう帰りましょう。すいません。私も明日の大会の役員がありますので、では、これで。」


そうして、夜更けの悪意に満ちたこの話し合いは、終了を迎えたのだった。

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