第13話 村の武道大会前夜①

「おーい。起きろ、ネロ。お前が昼まで寝ているなんて珍しいな。それに、どうした?その格好は。お前、時々服がボロボロになるよな。それに体のあちこちに傷があるが、お前昨晩何かあったのか?」


と心配そうにザックさんが救護室に様子を見に来てくれた。


「いやー、最近、畑作業が激しくて、体が傷だからになっちゃうんですよ。それに、服もその時に破れちゃって。ははは。これから気を付けます。すいません。ご心配おかけしまして。」


「またお前が外に出たんじゃないかとか、エマを探しにでも行ったのか、とか、と朝は少し騒ぎになったんだ。それで誰かがお前がボロボロになって救護室でぐーすか寝ているって叫んでいて、そうするとすぐにまた違う誰かが、エマが村入り口辺りで倒れている、って叫ぶんだ。エマもエマで、服がボロボロになっているんだが、その割には無傷だし。訳が分からんかったんだよ。お前、よく朝早く起きて走ってるだろ?お前何か見たか?」


まさか、ネロがエマの件に関係しているとは一切選択肢の中に入ることも無く、聞いてきた。ネロは、首を傾げながら、昨晩は畑作業でボロボロに怪我をしてしまったので、救護室に来て、寝ており、朝は起きていないからわからないと、答えておいた。ザックは、エマの様子も少し見て、まだ起きなさそうだなと判断。またエマが起きた時にでも事情を聞くか、と呟き、救護室を出ていった。出る前に、ネロも怪我が大丈夫なら、外に出ろよ、と一言付け加えていった。


私も、体の節々だったり、体全体に筋肉痛だったのだが、闘気は十分に回復していた。昨日の戦いのおかげで、5200まで上がっていた。昨日の戦いは、本当に激戦だった。死闘だったな。死ぬか生きるかの瀬戸際だった。死を何度か覚悟した。一歩間違えれば間違いなく死んでいた。あの時、ゴブリンが私を掴み、遠くに投げ飛ばしていれば、エマは死んでいた。あの時、近くに魔蛇マジックスネークがいなければ、やはりエマは死んでいた。私も絶対にエマを残すことはできなかったので、2人とも自滅しただろう。


エマの様子を見て、エマを体に手を置いた。闘気を流して、体内のダメージは無いかを確認したが、問題なくスムーズに流れるので、エマの身体的な不具合はないだろう。今はただ、疲労の為、睡眠を普段より多く摂っていると思われる。


私はゆっくりと村の中を歩き出し、まずは服をもらいに、服が保管されている家屋に入り、ボロボロだが、新しい服を回収。その足で、村の中を歩き、男子寝室用の家に入り、私の個人の置き場所として指定されているスペースに、私のボロボロの服を放りのみ、後で修繕することを、脳内メモに記して、畑に向かった。


昨日とは比べ物にならないほど、騒然とした雰囲気が一変し、いつもののんびりとした光景が広がっていた。


畑の方に移動していると、炊き出しの人々が台を並べていた。農作業の人々は昼食休憩を取り、思い思いに時間を過ごしていた。昼食を食べている者もいれば、子供達は鬼ごっこなどをして遊んでいた。私も食事の列に並び、昼食をもらうことにした。村のこの平和がいつまでも続くことを願い、皆の様子を目を細めて見ていた。


畑作業中に、他の村人たちと話をしていると、明日の村での武闘大会の話で盛り上がっていた。秋の収穫祭を兼ねてのお祭りだ。人々は口々にエマにも出でもらいたい、と言っていたが、彼女の容態を考えれば無理だろうとも言われている。もっぱらの噂では、ケンスが子供部門では一位になるだろうというものだ。私は、ここ最近鍛錬で忙しかったので、全く村の事情に疎かった。そうか、もうそろそろで武闘大会の季節になるのか。


大人部門では、村の七剣たちが、優勝候補に上がっている。七剣たちとは、オババに鍛えられた、狩人として最優秀にして、戦士として最強の七人だ。七人は以下の通りだ。


マーク

ザック

マリアナ

ソーバ

カナリック

トト

アクトン


の七名だ。


マークは、気さくな感じの青年で、身長は170センチぐらいで中肉中背の男の人だ。年齢は25歳ぐらいで、弓を使った狩りが得意だ。


マーク

レベル40

力  300

素早さ300

魔力 300


ザックも、面倒見が良い、人当たりのいい青年で、身長は180センチと高く、結構筋肉質で、特に対人との戦闘が非常に得意だ。


ザック

レベル50

力 500

素早さ400

魔力 250


マリアナは、スラっとした160センチぐらいの女の人で、年齢は35歳前後。村の中でもリーダーとして信頼を集めている。常識豊かで、狩りの教え方も上手で子供達から好かれている。


マリアナ

レベル 40

力   300

素早さ 500

魔力 450


ソーバは、背は低くくて、体が少し小太りな30歳ぐらいの男の人だ。動きは速くないし、剣も弓矢も槍もそんな上手くもない。こだわりが強くて少し変わった人だ。けども、魔法の扱いは1番上手い。ソーバが水、火、風、土を操っているのは、何回も見た。


ソーバ

レベル 30

力   100

素早さ 100

魔力  500


カナリックは、20歳と若い女の人で、彼女と話をして一番最初に気付くのは、とても口が悪いことだ。服装も他の人たちよりも、扇情的だ。身長は160センチと標準的だが、女性的な部分は非常に良く発達している。カナリックを苦手とする人たちは多いし、とっつきにくいが、仲良くなると、とても良くしてくれる。


カナリック

レベル 30

力 200

素早さ 200

魔力  200


トトは物静かな30歳ぐらいの身長190センチと長身痩せ型の男性だ。槍が非常に上手く、槍を持たせたら、この村では誰も勝てないんじゃないかな、と思うぐらい、強い。多くを語らないので、いるかどうかわからなかったりするが、言うことはいつも的を得ている。


トト

レベル 50

力   400

素早さ 400

魔力  250


アクトンは、いつも笑顔で周囲によく気遣いのできるグラマラスな美女として、多くのファンのいる女性だ。年齢は30歳。150センチと背は低いが、戦闘能力はとても高い。武器を使っても、素手でも、魔法対決でも、かなりの高レベルで扱える。彼女が次の村長だとも言われている。彼女を怒らさると、とても怖い。


アクトン

レベル 50

力   500

素早さ 500

魔力  500


皆はこの村の中で、後進を育てながら、狩りを行い、村の防衛の要として、日々、頑張っている。その意識も高いため、あの7人は、と言われることが多くなり、自然と村の七剣と呼ばれるようになった。子供達も憧れの気持ちで、七剣を見上げ、一緒に狩りをする時は、両手を上げて喜んだのだった。


さて、その七剣は、もちろん武闘大会に参加する。この七剣の中で優勝はほぼ間違いないだろうと言われている。基本、このような大会で勝つ者が、後々の村のリーダーになっていく。ネロも誰が勝つのか楽しみにしながら、今度の武闘大会が開かれるのを待っている一人だ。そうか、もう武闘大会は明日になっていたのか。私も子供の部門で出場するが、あんまり目立つのもどうかと思うから、相手を見て、適当にやって、後は観戦に終始しようかと思っている。エマはおそらく、目が覚めれば、参加もできるだろう。彼女が参加する意志があればの話だが。


そんなことを思いながら、午後の農作業に勤しみ、夕食の時間となったので、村の食事が用意される広場に向かった。そこには、色んな村人たちから話かけられている元気なエマの姿があった。

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