第8話 ネロが変だ ※エマ視点
最近変だ。とても変だ。
ネロが村の外で気絶しているところが発見され、無事に村に引き上げられてきてから、ネロの言動に非常に違和感を感じる。
決して別人と言わないけれど、前よりも、何と言うか、えーと、とても格好いい。
髪の毛は茶髪で、青色の瞳はクリっとしていて、鼻筋も結構しっかりとしている。顔も結構整っている。まぁ、私にとっては不細工ではない。身長も私と同じくらいか、ちょっと低いぐらいだ。以前のネロは、もうちょっとヒョロッとしていて、どこか頼りない雰囲気を持っていた。
なんか、ネロを見ていると、危なかっかしかったりするし、頼りなっかたりするし、言っていることも時には支離滅裂な時もあったりする。
けども、その日頃はオドオドしているネロが、あの時、自信満々でケンスなんかに立ち向かっていた。その時のネロのキリっとした目に、私はドキッとしていた。
私はケンスは大嫌いだ。横暴だし、狩りの最中もうるさいし、前に出過ぎるし、危なっかしいし。けども、ケンスは正直強い。私もよくケンスとは模擬戦をするが、10戦すれば9回は負けてしまう。ケンスはとにかく、ケンカに慣れているんだ。相手をどう威圧して、どう相手の力を100%出し切らないように立ち回るかをよく分かっていて、戦いがとてもうまい。私もケンスに怒鳴られると、体が少し硬直する。彼との模擬戦は、対人戦での私のスキルを確実に上げてくれている。けども、こんなことを他の人間が本当にするか疑問だが。汚い手を使う他の人間たちと将来対戦するなら、とても勉強になる。
そのケンスに対して、ネロはあの時、一歩も引かなかった。凄い。
高圧的に、相手の力を委縮させてきたが、ネロは一切たじろがなかった。本当に凄い。
もしかしたら、村の外に出た時に、もっと怖いことを経験したから、ケンスぐらいなら怖くなくなかったのかな?もしくは、自暴自棄になっていたりするのかな。とにかく、最近のネロはとても自信満々なんだ。
あの時、ケンスとネロが言い合いになり、ケンカになった時、私から見えると、ケンスの攻撃が、ネロに全然当たらなかったように思った。ネロはいつもフラフラしているし、あの時もフラフラしていたから、偶々当たらなかったのかなー、と思ったけど、当たるところは当たるんだけど、全部上手くいなしていたように見えた。最終的に、ケンスが切れて、火炎魔法を発射して、私が受けて、ケンカは終わったけど、もし私が守っていなかったとしても、あの時のネロならもしかしたら、何とかしたかもしれないなーという予感は10%ぐらいある。けども、怖くてそれ以上考えられないけど。
それで、変なのは、ネロの態度や言葉だけじゃない。
何故かネロは、朝から走っているんだ。村の中をずっとグルグル走っている。ず―――っと走っている。
何故そんなことするの?と聞いても、「生き残るためだ」とよく分からないことを言っていた。生き残るためなら、戦闘術を学んだり、武器の扱いを学ぶ方が効果的だと思うけど、と言うと、それはまた別に自分でやっている、と言っている。どうやって、『やっている』のかな~?と思う。誰かに教えてもらっている様子は今のところない。
それと、話を聞いていると、前よりもかなり真剣に農作業に励んでいるらしい。いや、前も十分真剣に農作業に励んでいたとは思うけど、今は、猛烈な勢いで田畑を耕し、種を蒔いて、木を抜いて、草を引っこ抜いている。話に聞くと、『ヒリョウ』があった方がいい、とか、農作業に対する改革案を提案しているらしい。なんかよく分からないんだけど、とにかくネロは、何かが凄い。
今までの話だけでも、十分変なんだけど、今一番変なのは、それと私が一番不満があるのは、夕食終了後にいなくなるんだ!!私は狩りが終わって、その日の反省会で話し合いに参加しなくちゃならなくて、夕食が終わったらすぐに、ネロを探すんだけど、直ぐにどこかにフラッといなくなっちゃうんだ。その日一日の事を話してあげたいのに、どこにいっちゃうのよーー!!と思っていると、フラッとまた男子用宿舎に現れるらしい。
今日なんて、夜にネロの服装を見たら、服の前面がボロボロになっていたの。実はそこから見える、ネロの体を見たんだけど、めちゃめちゃ鍛えられていて、めちゃめちゃ格好良かった!!キャーー――!!!
そんなことより、私はネロに詰め寄って言ったんだ。
「なんでそんなに服がボロボロなのよ!!」
なんでか、私はネロに話す時は、声を荒げることが多い。ダメなんだけど、普通に話をすることができないんだよー。ネロを最近は直視できない。。。
「あれ?服がボロボロだ。なんでだろう?遊びの中で破れちゃったかな?」
とトンチンカンな事言っていた。どんな遊びしたらそういう風になるのかな?
けども、そんなことより、私はネロに私に今日あったことをダ―!!!と言いまくった。
今日の狩りでは、チームを組んだ、大人も5人、子ども5人全員で一匹の魔狼を皆で囲み、狩れたこと。やったーー!
索敵の仕方を学び、魔力で聴覚を強化することができるようになったこと。私すごーい!
魔力を使って水を生成して、野外炊飯をしたこと。陶器を使うんだけど、超高温で土を焼くと、陶器になるらしい。おもしろーい!
などなど
ネロは、昔も優しく話を全部聞いてくれたけど、最近は、以前以上に優しく聞いてくれるし、今までは魔力の事に関しては一切興味がない感じだったけど、魔力で何ができるの?とか、増えるの?とか、聞いたりするし、他にも村の外にも興味津々だ。森の生物はどんなものがいるの?とか、どんな狩りをしているの?とか。
私の話し方がうまいのかな?ネロが目を輝くして、どんどん質問してくるから、話している方がたのしくなっちゃって、気付けば私ばかり話をしている感じで、話し終わった後は、とーってもスッキリするんだ。
ネロをこれからも守っていきたい。私が狩りに外に出て、ネロが家にいる。「おかえり」「ただいま」的な。
キャーー――!!
そんな未来が来るのかな~、と思いながら、今日もネロを探して、村の中を歩いている。
ネロ―、どこー?
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