第6話 魔法の威力
「何をしているーーー!!!」
遠くの方から大人たちが異変に気付き、現場に走り寄ってきた。
炎と水が激しくぶつかり、発生した水蒸気が周囲を包み、霧が空中に漂い、誰が何をしているかなど、現場はよく見えない状況であった。
ケンスは大人の叫び声に焦ったのか、走って逃げて行った。カートとマーカスもケンスが逃げて行ったのに気付き、急いで後を追いかけて行った。
霧が晴れていくと、そこには両手を前に突き出したまま、厳しい顔をしたエマが現れた。
「おい!!エマ、ここで何があった?!どうしてこんな爆発が起こったんだ!?」
大人の村人がエマに駆け寄り、状況の説明を求めた。
「マークさん。。。本当に信じられない。ケンスが、ネロに火炎魔法を使ったのよ。かなりの威力だったから、私が水魔法を出現させて、威力を相殺させたわ。こんな威力の魔法が、ネロに当たったら、ネロは死んでいたわ。ケンス。。。あいつ、本当に許せないわ。」
わなわなと体を震わせながら、エマは言葉を継いだ。
「ネロ、大丈夫?怖くなかった?」
「いやー、驚いたよ!!これ程の威力の魔法が子供の時から発生させることができるなんて、僕には信じられないよ!!本当に凄いね!!!」
私は正直に、心の底から、何の偽りもなく、感心した。確かに、これほどの威力を出せる魔法が使えるなら、ケンスのあの横柄な態度も理解できる。そりゃ、増長するわな。魔法が使えるか使えないかで、人生航路は、大きく根底的に変わってくるだろう。これほど世界に影響を与えることができる能力を持っているなんて、あの少年は、本当に凄い。
「感心している場合じゃないでしょ!!!ネロ、あなたは今、殺されかけたのよ。もう頼むから、こんなことしないで。お願い。ネロには死んでほしくないの。。。」
と涙をうっすらと目に浮かべながら、エマはネロに縋るように訴えた。
「心配してくれてありがとうね。僕もこれから気を付けるよ。また大変な状況になりそうなら、エマの助けを叫ぶよ。頼りにしているよ、エマ。」
エマは顔を赤らめながら、焦って答えた。
「私がいつもいれるとは限らないのよ!勘違いしないで。ネロも強くならないと!けども、一緒にいてほしいなら、一緒にいるけど。。。ネロがどうしてもって言うなら。。。ゴニョゴニョゴニョ」
私は、エマの手を取った。
「エマ、ありがとう!君も最高だよ。さっきの魔法を防ぐんだからね。魔法というもの自体は凄いし、君の発現させた魔法も圧倒的だったね。僕も使えたらいいんだけどなー。魔力がゼロならしょうがないよな~。」
いきなり手を取られて、エマは顔を赤くしながら、あっけらかんと話すネロに驚きながら、エマは温かい視線でネロを見続けた。
エマ
レベル 10
力 10
素早さ 30
魔力 48
闘気 1/1
エマをよく鑑定した結果だ。エマもかなりの腕のある狩人に成長していくんだろうな。今でも凄いが。
大人の村人であるマークは、ケンスの横暴が原因で生じたのが、この事件であるとの結論に達して、ケンスにしっかりと釘を刺す必要があると感じた。
「ネロ、大丈夫だったか?不安はないか?ケンスに言いたいことはあるか?」
「僕からは特に今回のことで、彼に何かを言うことはありませんが、ただ。。。」
「ただ。。。?」
「彼らとはよく話したいとなと思いますね。彼は、これからこの村にとって必要な人材に成長していくでしょう。大人の中では、もう既にそのように目もくされているのかもしれませんが。だから、彼とはよく話をして、仲良くなりたいですね。」
「そ。。。そうか。。。まぁ、とにかく、ネロが大丈夫だったら、安心だ。とにかく、俺はケンスと後二人にも話をしておくからな。本当に、マーゼに魔法を使うなんて、信じられん。」
「マークさん!!!」
エマは、怒りの表情で、その大人の村人を激しく睨んだ。
「おぉ。。。すまん。失言だったな。ネロ、すまん。お前の事をマーゼと呼んでしまって。」
「大丈夫ですよ。まぁ、その言葉がこれからは、誉れとなるぐらい、僕もこれから汚名挽回って感じですかね。頑張ります。」
「ネロ、お前、何か変わったな。前はもっと。。。なんて言うか、もっと物事をどこか悲観的に見ていたように思っていたけど、なんか、明るくなったよな。ネロ。」
「ありがとうございます。」
ネロは、にこりと笑顔で感謝の思いを伝え、その村人と別れを告げて、エマを誘って夕食を取りに歩き始めたのだった。
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